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Episode2
感動する勇者
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翌朝になって悠々とした朝食を済ませると、オレとルージュとアーコの三人は再登録に向けて一路ギルドの支部を目指して宿を出た。
活動し始めた街の人込みに紛れて人目につかない路地に入ると、手筈通りそこで全員が変身をして姿を変えた。オレは狼、ルージュはフォルポス族の女、そしてアーコは顔こそ変えなかったが、いつかの森でやったように頭身を一般的な魔族の大きさに変えていた。
そしてオレの首に茶地な鎖付きの首輪つけ、同じようにアーコに繋ぐと背中に乗せた。傍目には狼を使うフォルポス族の女が魔族を無理矢理に連れている、という風を装った形だ。
狼と魔族を連れて歩くフォルポス族なんて珍しいものは容易に人目についてくれる。万が一に相手が情報収集に打って出てきたなら、目撃情報があり過ぎてかえって捜査に混乱と支障をきたすだろう。
色々と迷ったが、オレ達は結局『十二の瞳ワンダース・アイズ』というギルドに登録に行くことになった。迷った割りにここを選んだ理由は簡単で、オレがセムヘノについて見てきたギルドの中で一番名前が気に入ったから、というただそれだけのことだ。それを告げるとルージュは呆れたようにため息をつき、アーコは大いに笑ったのだった。
後付けの理由をいうならば、適当に選んだというのも功を制するかと思ったからだ。通常、そんな理由でギルドを選ぶ冒険者などはいない。ここを選んだのは、それなりの理由があるはずだなどと情報を集めようとする奴らが想像を膨らませて泥沼にでも嵌ってくれないかという楽観的な服地効果も期待できる。
そんなことを考えていると、頭に衝撃が走った。アーコが遠慮なしに踵を置いてきたからだった。
「おい、もっと丁寧に歩けよ。背骨が股に食い込んで痛ぇだろうが」
「……今すぐにその足をどけろ。さもなくば切り落すぞ」
ギルドに着く前から、早速二人が険悪なムードを作るために芝居を始めた。まあ、アーコは芝居のつもりでも、ルージュは本気だろうな。むしろそれが分かっているからこそ、アーコはこんなことをしているのだろう。
◇
そして、一先ずは無事に『十二の瞳』のギルドに辿り着く。八十年前にはこんなギルドは存在していなかった。なので少なくとも歴史は八十年よりもずっと若いはずだ。
中に入ると色々な種族と、装備を整えた連中や魔族連れがいた事にオレは一安心した。中には特定の職業や種族しか入会を許可しないギルドもある。その点、ここは妙な条件はなさそうだった。すると、すぐにギルドの案内人らしきニアリィ族の女が近づいてきた。
「いらっしゃいませ。ご用件は?」
「ここへギルド登録をしたいのだが、頼めるか?」
ルージュがそう告げると、案内人は少々驚いた。が、無理もないだろう。オレも再登録をする時には年齢で驚かれたのだ。オレに似せてフォルポス族の形を取っている、年齢で差別的な判断をされても、それは仕方がないことだ。
ところが、案内人は「失礼しました」と一言詫びて、すぐに登録の手続きをしてくれた。
次いでアーコ、もとい『トリック』の登録まで順調に進む。その時のアーコの演技は良好だった。如何にも『囲む大地の者』を嫌っており、登録されるのを毛嫌いしている感じがよく出ており、ルージュが騒ぎを収めると少し感動すら覚えた。そのくらい、オレはやることがなかったのだ。
とにもかくにも当初の目論見通りに、とても印象的なギルド登録をすることが叶った。
そうして用事を済ませたオレ達がギルドを出て行こうとすると、突如後ろから呼び止める声が聞こえてきた。
活動し始めた街の人込みに紛れて人目につかない路地に入ると、手筈通りそこで全員が変身をして姿を変えた。オレは狼、ルージュはフォルポス族の女、そしてアーコは顔こそ変えなかったが、いつかの森でやったように頭身を一般的な魔族の大きさに変えていた。
そしてオレの首に茶地な鎖付きの首輪つけ、同じようにアーコに繋ぐと背中に乗せた。傍目には狼を使うフォルポス族の女が魔族を無理矢理に連れている、という風を装った形だ。
狼と魔族を連れて歩くフォルポス族なんて珍しいものは容易に人目についてくれる。万が一に相手が情報収集に打って出てきたなら、目撃情報があり過ぎてかえって捜査に混乱と支障をきたすだろう。
色々と迷ったが、オレ達は結局『十二の瞳ワンダース・アイズ』というギルドに登録に行くことになった。迷った割りにここを選んだ理由は簡単で、オレがセムヘノについて見てきたギルドの中で一番名前が気に入ったから、というただそれだけのことだ。それを告げるとルージュは呆れたようにため息をつき、アーコは大いに笑ったのだった。
後付けの理由をいうならば、適当に選んだというのも功を制するかと思ったからだ。通常、そんな理由でギルドを選ぶ冒険者などはいない。ここを選んだのは、それなりの理由があるはずだなどと情報を集めようとする奴らが想像を膨らませて泥沼にでも嵌ってくれないかという楽観的な服地効果も期待できる。
そんなことを考えていると、頭に衝撃が走った。アーコが遠慮なしに踵を置いてきたからだった。
「おい、もっと丁寧に歩けよ。背骨が股に食い込んで痛ぇだろうが」
「……今すぐにその足をどけろ。さもなくば切り落すぞ」
ギルドに着く前から、早速二人が険悪なムードを作るために芝居を始めた。まあ、アーコは芝居のつもりでも、ルージュは本気だろうな。むしろそれが分かっているからこそ、アーコはこんなことをしているのだろう。
◇
そして、一先ずは無事に『十二の瞳』のギルドに辿り着く。八十年前にはこんなギルドは存在していなかった。なので少なくとも歴史は八十年よりもずっと若いはずだ。
中に入ると色々な種族と、装備を整えた連中や魔族連れがいた事にオレは一安心した。中には特定の職業や種族しか入会を許可しないギルドもある。その点、ここは妙な条件はなさそうだった。すると、すぐにギルドの案内人らしきニアリィ族の女が近づいてきた。
「いらっしゃいませ。ご用件は?」
「ここへギルド登録をしたいのだが、頼めるか?」
ルージュがそう告げると、案内人は少々驚いた。が、無理もないだろう。オレも再登録をする時には年齢で驚かれたのだ。オレに似せてフォルポス族の形を取っている、年齢で差別的な判断をされても、それは仕方がないことだ。
ところが、案内人は「失礼しました」と一言詫びて、すぐに登録の手続きをしてくれた。
次いでアーコ、もとい『トリック』の登録まで順調に進む。その時のアーコの演技は良好だった。如何にも『囲む大地の者』を嫌っており、登録されるのを毛嫌いしている感じがよく出ており、ルージュが騒ぎを収めると少し感動すら覚えた。そのくらい、オレはやることがなかったのだ。
とにもかくにも当初の目論見通りに、とても印象的なギルド登録をすることが叶った。
そうして用事を済ませたオレ達がギルドを出て行こうとすると、突如後ろから呼び止める声が聞こえてきた。
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