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Episode2
警戒する剣
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女にただならぬ気配を感じた私は二人を庇うように前に立った。その警戒心が伝わったのか、女は少し距離を取ったところ歩みを止めた。そしてあくまでこちらに危害を加えるつもりはないという雰囲気を精一杯に取り繕ってから話をし始めた。
「ごめんなさい。怖がらせるつもりはなかったの。ただ、主人なしで歩いているあなた達が気になってしまって」
「それはお互いさまだろう。貴様に至っては登録印も付けていないようだが?」
「いえ、ちゃんと付けているわ」
女はそう言ってスカートの裾を少しだけ上げた。確かに言う通り、足首に登録印らしきものが巻かれている。ただ、我らが今付けているモノと少し見た目が違う。
「ま、それを付けていようがいなかろうがどうでもいい。何の用だ?」
問うと女はふくよかな笑い声と共に答えてきた。
「最近になって、主人の目を盗んで逃げだす魔族が多くなってきてね。そう言った魔族を匿っているの。あなた達はそうではないの?」
「生憎だが、私達はキチンとした主に仕えている」
「ならその主って『囲む大地の者エンカニアン』は?」
「ここにはいない。私達は主が用を済ませる一時の間、自由にしていいと命じられて動いている」
「へえ・・・いいご主人様に仕えているのね」
何が目的なのか一向に知れなかったので、私は精神感応を試みた。しかし、どうしてもうまく力が使えない。恐らくはピオンスコが隣にいるせいで、毒気に当てられてしまい上手く作用していないのだろうと直感的にそう思った。
いずれにしても、この女は得たいが知れない。早々に立ち去るべきだろう。
しかし、私が二人の手を引いてこの場を離れようとした時、ピオンスコが無邪気にも女に喋りかけてしまった。
「なあ、逃げ出した魔族を匿ってどうするんだ?」
まさかそんな風に聞かれると思っていなかった女は、一瞬だけ呆けた顔になったがすぐに自分を取り戻すと、ふふふと笑った。
「ふふ。私達がしばらく面倒を見た後は、いい主人に仕えられるように斡旋するの」
「何の為に?」
「勿論、不幸になる魔族がいなくなるためよ。『囲む大地の者』に奴隷よりもひどい扱いを受ける同胞たちを見てきたでしょう? そういう魔族を一人でも減らすために動いているの」
「ふうん」
女は私達の様子から自分の求めているような魔族ではないと判断したようで、目に見えて興味を失った風になった。
「無駄とは思うけど、一応は聞いておくわ。今の主人に不満は持っていない?」
「一片たりともそのような感情を持ち合わせてはおらん」
「・・・でしょうね。そちらのお嬢さんたちもかしら?」
そう聞かれたラスキャブとピオンスコは、それぞれがか細い声と溌剌した声とで否定した。二人が主を慕っているというのは、まあ信じてやっても良いだろう。
最後に女は言う。
「なら、私はあなた達に必要はないようだから去ることにするわ。ただ、一つお願いがあるんだけれど」
「・・・なんだ?」
「もしも今の主人から逃げ出したいと思っている魔族がいたら、セムヘノの『カルトーシュ』ってお店を尋ねるように伝えてくれるかしら? 苦しむ同胞を助けると思ってね」
「・・・」
「その時、店の者に私の名前を言えば助けになるから」
「名前?」
「ええ。私はノウレッジというの」
「え?」
ノウレッジという女の名を聞いた瞬間、ラスキャブが腑に落ちないという顔になり声を漏らした。幸いにもその様子はノウレッジには気が付かれなかったようで大人しくその場から去って行く。
「もしも将来、あなた達がそう思って逃げてきたとしても歓迎するわ」
冷ややかな視線と共にそう告げると背中の翼を使い、ノウレッジは空に羽ばたいた。やがて路地に面した建物の向こう側に飛んでいくと、すぐに姿が見えなくなってしまった。
「ごめんなさい。怖がらせるつもりはなかったの。ただ、主人なしで歩いているあなた達が気になってしまって」
「それはお互いさまだろう。貴様に至っては登録印も付けていないようだが?」
「いえ、ちゃんと付けているわ」
女はそう言ってスカートの裾を少しだけ上げた。確かに言う通り、足首に登録印らしきものが巻かれている。ただ、我らが今付けているモノと少し見た目が違う。
「ま、それを付けていようがいなかろうがどうでもいい。何の用だ?」
問うと女はふくよかな笑い声と共に答えてきた。
「最近になって、主人の目を盗んで逃げだす魔族が多くなってきてね。そう言った魔族を匿っているの。あなた達はそうではないの?」
「生憎だが、私達はキチンとした主に仕えている」
「ならその主って『囲む大地の者エンカニアン』は?」
「ここにはいない。私達は主が用を済ませる一時の間、自由にしていいと命じられて動いている」
「へえ・・・いいご主人様に仕えているのね」
何が目的なのか一向に知れなかったので、私は精神感応を試みた。しかし、どうしてもうまく力が使えない。恐らくはピオンスコが隣にいるせいで、毒気に当てられてしまい上手く作用していないのだろうと直感的にそう思った。
いずれにしても、この女は得たいが知れない。早々に立ち去るべきだろう。
しかし、私が二人の手を引いてこの場を離れようとした時、ピオンスコが無邪気にも女に喋りかけてしまった。
「なあ、逃げ出した魔族を匿ってどうするんだ?」
まさかそんな風に聞かれると思っていなかった女は、一瞬だけ呆けた顔になったがすぐに自分を取り戻すと、ふふふと笑った。
「ふふ。私達がしばらく面倒を見た後は、いい主人に仕えられるように斡旋するの」
「何の為に?」
「勿論、不幸になる魔族がいなくなるためよ。『囲む大地の者』に奴隷よりもひどい扱いを受ける同胞たちを見てきたでしょう? そういう魔族を一人でも減らすために動いているの」
「ふうん」
女は私達の様子から自分の求めているような魔族ではないと判断したようで、目に見えて興味を失った風になった。
「無駄とは思うけど、一応は聞いておくわ。今の主人に不満は持っていない?」
「一片たりともそのような感情を持ち合わせてはおらん」
「・・・でしょうね。そちらのお嬢さんたちもかしら?」
そう聞かれたラスキャブとピオンスコは、それぞれがか細い声と溌剌した声とで否定した。二人が主を慕っているというのは、まあ信じてやっても良いだろう。
最後に女は言う。
「なら、私はあなた達に必要はないようだから去ることにするわ。ただ、一つお願いがあるんだけれど」
「・・・なんだ?」
「もしも今の主人から逃げ出したいと思っている魔族がいたら、セムヘノの『カルトーシュ』ってお店を尋ねるように伝えてくれるかしら? 苦しむ同胞を助けると思ってね」
「・・・」
「その時、店の者に私の名前を言えば助けになるから」
「名前?」
「ええ。私はノウレッジというの」
「え?」
ノウレッジという女の名を聞いた瞬間、ラスキャブが腑に落ちないという顔になり声を漏らした。幸いにもその様子はノウレッジには気が付かれなかったようで大人しくその場から去って行く。
「もしも将来、あなた達がそう思って逃げてきたとしても歓迎するわ」
冷ややかな視線と共にそう告げると背中の翼を使い、ノウレッジは空に羽ばたいた。やがて路地に面した建物の向こう側に飛んでいくと、すぐに姿が見えなくなってしまった。
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