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Episode1
忍び寄る勇者
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現状の三人パーティでの連携戦を想定する。単純な考えで行けばオレとルージュが前衛に立って戦うのが妥当なのだが、色々と問題点もある。
まず、それではラスキャブのやることがない。ルージュの戦闘力を思えばこの辺りではまず敵なしになるだろうがそれでは実践訓練の意味がない。それにラスキャブの屍術師という職業が、前中後衛のどこに配置すればいいのか分らないのも早々に解決したい意図もあった。
諸々の事情を鑑みて、オレとラスキャブが前衛、ルージュを後衛に添えるという形で仮決定させる。基本は前の二人が応戦して、後ろのルージュには万が一の時のための保険となって貰うのが最も効率的だろう。
◆
入って来た時と同じ門をくぐるために順番待ちをする。
町から外へ出る時は滞留先の宿の名前を伝え、通過証を貰うのが基本だ。そうすれば一度町の外へ出ても面倒な手続きや税金の二度払いなどしなくても済む。小さな町であればこんなことも必要ないのだが、安全を守るため多少の面倒は仕方がない。
草原に出て鼻から空気を吸い込んだ。
今日は北から風が吹いてきている。微妙に湿った風なので、雨が降るかも知れない。が、曇り空は暑さがひどくならないので有難かった。
街道を通り三人で固まりながら、近くの森を目指す。それはラスキャブと出会ったのとは別の森だ。流石に街が見えるようなところに魔獣の気配はなかった。途中何組かのパーティとすれ違った。特にトラブルになることはなかったが、やはり魔族連れに一瞬身構えてしまう癖は取れなかった。
やがて森まで辿り着くと、ラスキャブを先頭に魔獣を探し始めた。オレには鼻、ルージュには索敵用の魔法と独自の捜索術がある。敵をいち早く見つける能力は、勝率にも生存率にも直結する重要なものであるのでラスキャブにも早々と身に着けてもらいたい。
とは言っても、記憶を失いながらもしばらくの間森の中で一人きりで生き延びてきたのだ。森を歩く時の気配の殺し方や足運びはまずまずのレベルだ。死にもの狂いで身体に覚えさせたのだろうと推測する。
そんなところに関心を示していると、ラスキャブが微かに言った。
「見つけました」
視線の先をラスキャブと合わせる。するとルージュが答えるように小さな声返事をした。
「…猪か?」
「ああ。『グラフル』って呼ばれている猪型の魔獣だな。とは言っても普通の猪とは魔力の影響を受けているかどうかくらいの違いしかない。力は強いが小回りは利かない。初戦としてはかなり理想的な相手だ」
「ど、どうやって戦いますか?」
「まず頭部は狙うな。頭蓋骨が固いから大したダメージは入らない。その上怒らせる可能性もある。だからわき腹や足を狙う。売り物にするならなるたけ毛皮や内臓は傷つけないように気を配るところだが、今回はそれは気にしなくていい」
オレ達はこっそりと更に距離を詰めた。グラフルたちは木の実やキノコを漁っているようで、まだこちらには気が付いていない。
「オレとラスキャブがかかる。ルージュはもしもの時の補助を頼む」
「心得た」
「行くぞ、ラスキャブ」
「は、はい」
グラフルは茂みを飛び出したオレ達にすぐに気が付いた。三匹いたうちの二匹は唸り声を上げて応戦する態度を見せる。逃げる相手を追う心配はしなくてよさそうだ。
まず、それではラスキャブのやることがない。ルージュの戦闘力を思えばこの辺りではまず敵なしになるだろうがそれでは実践訓練の意味がない。それにラスキャブの屍術師という職業が、前中後衛のどこに配置すればいいのか分らないのも早々に解決したい意図もあった。
諸々の事情を鑑みて、オレとラスキャブが前衛、ルージュを後衛に添えるという形で仮決定させる。基本は前の二人が応戦して、後ろのルージュには万が一の時のための保険となって貰うのが最も効率的だろう。
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入って来た時と同じ門をくぐるために順番待ちをする。
町から外へ出る時は滞留先の宿の名前を伝え、通過証を貰うのが基本だ。そうすれば一度町の外へ出ても面倒な手続きや税金の二度払いなどしなくても済む。小さな町であればこんなことも必要ないのだが、安全を守るため多少の面倒は仕方がない。
草原に出て鼻から空気を吸い込んだ。
今日は北から風が吹いてきている。微妙に湿った風なので、雨が降るかも知れない。が、曇り空は暑さがひどくならないので有難かった。
街道を通り三人で固まりながら、近くの森を目指す。それはラスキャブと出会ったのとは別の森だ。流石に街が見えるようなところに魔獣の気配はなかった。途中何組かのパーティとすれ違った。特にトラブルになることはなかったが、やはり魔族連れに一瞬身構えてしまう癖は取れなかった。
やがて森まで辿り着くと、ラスキャブを先頭に魔獣を探し始めた。オレには鼻、ルージュには索敵用の魔法と独自の捜索術がある。敵をいち早く見つける能力は、勝率にも生存率にも直結する重要なものであるのでラスキャブにも早々と身に着けてもらいたい。
とは言っても、記憶を失いながらもしばらくの間森の中で一人きりで生き延びてきたのだ。森を歩く時の気配の殺し方や足運びはまずまずのレベルだ。死にもの狂いで身体に覚えさせたのだろうと推測する。
そんなところに関心を示していると、ラスキャブが微かに言った。
「見つけました」
視線の先をラスキャブと合わせる。するとルージュが答えるように小さな声返事をした。
「…猪か?」
「ああ。『グラフル』って呼ばれている猪型の魔獣だな。とは言っても普通の猪とは魔力の影響を受けているかどうかくらいの違いしかない。力は強いが小回りは利かない。初戦としてはかなり理想的な相手だ」
「ど、どうやって戦いますか?」
「まず頭部は狙うな。頭蓋骨が固いから大したダメージは入らない。その上怒らせる可能性もある。だからわき腹や足を狙う。売り物にするならなるたけ毛皮や内臓は傷つけないように気を配るところだが、今回はそれは気にしなくていい」
オレ達はこっそりと更に距離を詰めた。グラフルたちは木の実やキノコを漁っているようで、まだこちらには気が付いていない。
「オレとラスキャブがかかる。ルージュはもしもの時の補助を頼む」
「心得た」
「行くぞ、ラスキャブ」
「は、はい」
グラフルは茂みを飛び出したオレ達にすぐに気が付いた。三匹いたうちの二匹は唸り声を上げて応戦する態度を見せる。逃げる相手を追う心配はしなくてよさそうだ。
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