136 / 163
メロディアの仕事4
11ー4
しおりを挟む「制服は任せてください。エロと可愛いが見事に調和したのを用意しておきますから」
「働くのは吝かではないが…役職はどうする? 我は修道院時代の経験を活かすなら配膳を任されたいのが本音だ」
「まずミリーさんとメロディア君が厨房は確定ですね。個人的な事を言えばボクは人前にはあまり立ちたくないので広報やら経理、表に出るとしてもお会計とかを手伝えれば」
「…オレもこの図体だし、どちらかと言えば裏方がいいな。けど料理の経験はねえから、デシャップとか?」
「ソルカナ様は要領も良いですしピッタリだと思います! かつてのパーティでも指令塔でしたし」
「私はドリンクやデザートを任されつつ、皿洗いがしたいです」
「お姉様と同じであればどこでも構いません」
「うふふ。何だかんだで役割分担ができてしまいましたね。私とドロモカ、ラーダ、レイディアントがウェイトレスとしてホールを担当しつつ、他のみんなは今言ったポジションに収まれば丸く収まるのでは?」
話を極めて簡潔にまとめたドロマーは爛々とした顔でメロディアを見る。普段のサキュバスっぽさは微塵もなく、ずっとそうしてりゃいいのにと思いつつも、メロディアは返事をした。
「そうですね…言う通り問題はないかと。それにしても皆さんウキウキですね」
「当たり前です。かつては戦い、今ではエロに明け暮れている私達ですが普通の町娘として働いてみたいという願望はあったんですよ」
「あはっ! めっちゃ分かるー」
「ははぁ。そういうものなんですね」
「ところでこの店の名前は」
「『ミューズ』といいます。とは言っても看板は外してますし、しばらく営業をしてないので変えたって問題ないと思いますけど」
メロディアがそんな事を言い出すと全員が昂揚した。あれこれと考えを巡らせ店名を思案し始める。
思い思いの店名を口にしだすが、どれもこれも下ネタにはかすりもしないオシャレであったりセンスを感じさせるものばかりだ。
…誰だこいつら。
メロディアは自分が預かり知らぬ内にそっくりさんに入れ替わっているのではないかと本気で考えるくらいには訝しんだ。
会話の内容は徐々に盛り上がっていき、次第に内装であるとか出したいメニューの話などに膨らんでいく。扇情的な格好は致し方ないにしても、ここまでの雰囲気は普通の女の子のようだ。
やがて積もりに積もったメロディアの怪訝な念は八英女達にも伝わったようで、反対に尋ねてくる。
「どうかしましたか?」
「こっちの台詞ですよ。どうしたんですか、皆さん…」
「どういう事?」
と、ラーダとシオーナがわざとらしく小首を傾げた。
「いつもの見るも無惨な残念八英女はどこに行ったんですか? このままだと皆さんの事を見直してしまいそうです」
「ボク達の事を何だと思ってるんですか…?」
「世界一恥ずかしい生きる伝説」
メロディアは食い気味に普段から思っていることを限りなく簡潔に述べ伝えた。
対してミリーを除いた七人は苦言を呈するような面持ちに変わる。
「中々な言われようですね」
「本当に。元はと言えばメロディアの母親のせい」
「それを言われると辛いですけど…」
「ドロマーが先に言ったでしょ。普通の町娘として生きてみたいって。悪堕ちしてたってそれは変わらないよ」
「堕ちたとは言え、我らも八英女の名を捨てた訳では無い」
「メロディア様。この時ばかりはどうかご信任を賜りますれば」
メロディアは非常に申し訳ない思いになった。そしてせめてもの謝罪のつもりで深々と頭を下げた。
「すみません。皆さんの事を見くびってました。許してください」
「カカカ。分かればいいって」
そう言い終わってから顔を上げたメロディアは微笑む。その場の全員がメロディアの笑顔を見た瞬間に、背筋が凍りつくほどに寒気を覚えた。ついで七人はその悪寒の原因を知る。
机の下から現れたメロディアの手に見慣れたメモ紙があったからだ。
「じゃあ全員が服に隠し持っていたこのメモの中を改めても問題ないですね?」
「「!?」」
「『メロディア君に気付かれないように考えた裏メニュー』って中々刺激的なタイトルじゃないですか」
メロディアの取り出したメモを見定めた七人は、慌てふためき紙を隠していたはずの場所をまさぐった。
若干名がどさくさに紛れて触る必要のないところを触っていたが。
「誰もそんなところに隠してはなかっただろ!」
「け、穢れだらけの乙女の体をまさぐったんですか!?」
「嘘でもいいから、そこは穢れなき乙女と言ってくれ」
「メロディア様! 返してください。そのメモはR18指定をされています」
「なら、もうヤバいメモで確定じゃねえか!」
「ヤバいメモだと確定して、ボクたちはケツアナ確定って事ですか!?」
「長年封印されてた癖に、何でそっち系のネットスラングは抑えてんだよ」
「おしおきなら待ってくれ。Mのソルカナに変わるから」
「そのままで待っとけ!」
「アタイの分のおしおきもソルカナ様に回して!」
「アンタ本当にソルカナさんの事を尊敬してんのか?」
「まあいいさ、見るがいい。我は何も恥ずべき事は書いておらん」
「どっから湧いてくるんだ、その自信は」
「…」
「シオーナさん、せめて何か言え!」
怒濤の台詞ラリーが終わると、メモを巡って今度は息もつかせぬ争奪の応酬が始まる…かと思いきや別にそんなことはなかった。
全員が中身を見られる前に奪い返そうと手を伸ばしたところ、何の抵抗もなく自分の掌にメモを取り戻した感触を得たのだ。あまりにもあっさりと事が運びすぎて、偽物を掴ませれたのかと中身を確認する。しかし中身を見てもこれが本物だという裏付けになるだけだった。
まさか…お目こぼし?
そんな甘い考えが過りつつ七人はメロディアの顔を見た。同時に冷たく笑う顔に戦慄する。
彼が笑った理由は簡単だ。
メロディアは本人たちにメモを読ませる手段がある。そう。言霊ならね。
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる