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堕ちた神盾
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「…まあ八英女の立場を思うと確かに妙な関係にはなりますが、僕はそれでも皆さんとは仲良くしていきたいとは思ってます」
「ありがとう…ございます」
「その為にも残りの七人を悪堕ちの状態から救い出すのには全面的に協力します。父さんも事情を話せば分かってくれるはずですし、母さんなら僕らよりも魔道に詳しいはず…言っていて思い付きましたけど、敵対関係を失った今ならあの七人を元に戻してくれるかも知れません。それまではここで窮屈な思いをさせてしまいますが…」
「構いません。生まれてから此の方ドロマー姉様と共にあり、いつからかパーティで過ごすようになっておりました。こうして一人で生活をするというのは、少しだけ心を躍らせております」
「ならいいんですけど…」
食事と共に打ち解けた二人は食休みの後に作業に戻ろうとした。次は備蓄倉庫の掃除や寝床など生活スペースを作らなければならない。
シオーナがどれくらい時間を稼いでくれるか確証がない以上、急いでおいて損はないはず。六人が追い付いてきたときにメロディアが店にいないのも不自然だ。そういえばシオーナはどういう事を言って時間を稼ぐつもりなんだろうか。話を合わせるのも大変だな。
メロディアがそう思ったとき、ぞくっと嫌な予感が生まれた。うまく名状できないが妙な不安に苛まれたのである。重大な何かを見落としているような。
一旦心を落ち着けてその原因を探ろうとした。しかしその前に疑問の答えが空からやってきたのだった。
ゴオッオオォ!
と、空気を切り裂くような轟音が鳴り響く。巨大な影は雲を千切り、二人を目掛けて急降下してくる。地面と激突する寸前にそれは大きな翼を広げて速度を制御すると襲来としか思えぬような咆哮をあげた。
メロディアもドロモカもその巨大な影の正体が一匹のドラゴンであり、更にそれがドロマーであるということも瞬時に理解をした。そして理解をしたからこそ混乱したのだ。
何故、ここにドロマーが!?
他のみんなは!?
いや、それよりもドロモカを逃がすべきか!?
というか、シオーナはいったい何を!?
と、思考が分かりやすく渋滞する。
恐らくはシオーナがしくじった、もしくは裏切ったことでドロモカの情報を得たドロマーが我先に会いたい一心で暴走をしたと見て間違いない。が、それが分かったところでもう打つ手がない。白を切ろうにも、ドロモカ本人がここにいるのではどんな言い訳も通用しない。
ごてごてになっている間にドロマーは人の姿をとる。
目は血走り、鼻息も荒い。竜族の本能を剥き出しにしているかのようだった。
「メ~ロ~ディ~ア~く~ん……!」
「…」
「シオーナから全て聞きましたよ」
「ぐっ!」
ドロマーは鼻から深く息を吸い込み、思いの丈をこれでもかと叫んだ。
「エヴァはロボットじゃありません!!!」
「いや、そっちかい!!?」
メロディアも負けず劣らずの勢いで叫び返す。森の静寂が嘘のように消し飛んでしまった。
するとどうしたことだろう。ドロマーが飛来した上空から更に幾つかの叫び声が聞こえる。どうもそれは落下してきているようだった。
「おわあああああああああ!!」
見ればミリー、ファリカ、ソルカナ、ラーダの四人が絶叫しながらこちらに向かって、もとい落ちてきている。状況から察するにここまでドラゴンとなったドロマーの背中に乗って移動してきたが、メロディア達を見定めた彼女が急降下したことで空中に取り残されたのだろう。ともすれば落ちるのは自然の摂理である。そしてレイディアントとシオーナの姿がないのは彼女らが飛べるからに他ならない。
案の定、その二人は急いで落ちている四人をキャッチしていた。
やがて無事に地上に降りることができた面々は口々にドロマーへ文句を飛ばす。
「くおっの、バカドラゴン! あんな降り方する奴があるか!!」
「し、死ぬかと思いましたぁ…!」
「急にお空に取り残すなんて! 私、お漏らししてしまいましたわ!」
「ホントに信じらんない!! アタイ、あのふわっとした感覚でお股が濡れちゃって癖になったんだけど!? もう一回やって!」
「そうだそうだ!」
「後半おかしいだろ!」
先程までのドロモカとの時間が嘘のように騒々しくなった。そしてついさっきまでの時間を懐かしんだことで、ドロモカの存在を忘れていたことに気がついた。
本人の話によればドロマーとまみえてしまうと、彼女に同調して再び悪堕ちしてしまうと言っていた。
メロディアは慌ててドロモカの様子を見る。すると彼女はじっとドロマーを見つつ、石像のように固まっていた。しかし小刻みに震えて口からはカチカチと歯のぶつかる音と何かの衝動を必死で抑え込めるような息づかいが漏れ始めた。
堕ちるのをどうにか堪えようとしているのは明白だ。
しかし、
「ドロモカ…」
と、ドロマーが愛おしそうな声で名前を呼んだ瞬間にドロモカは堕ちた。一瞬のうちに扇情的なサキュバスの姿に変わると実に甘い声を出したのだ。
「ドロマー姉様ぁ♥️♥️♥️」
「! ドロモカぁ♥️♥️♥️」
そうして二人は熱い抱擁を交わすと、更にテンションが上がったのか理性を外して大人のキスをし始めた。
じゅるじゅるっと卑猥な水音が森に響く。
残りの八英女は暖かい目で二人の感動の再会を見ていたが、メロディアはへたり込んでは一縷の希望がガラガラと崩れ落ちていく絶望感を味わっていた。
「ありがとう…ございます」
「その為にも残りの七人を悪堕ちの状態から救い出すのには全面的に協力します。父さんも事情を話せば分かってくれるはずですし、母さんなら僕らよりも魔道に詳しいはず…言っていて思い付きましたけど、敵対関係を失った今ならあの七人を元に戻してくれるかも知れません。それまではここで窮屈な思いをさせてしまいますが…」
「構いません。生まれてから此の方ドロマー姉様と共にあり、いつからかパーティで過ごすようになっておりました。こうして一人で生活をするというのは、少しだけ心を躍らせております」
「ならいいんですけど…」
食事と共に打ち解けた二人は食休みの後に作業に戻ろうとした。次は備蓄倉庫の掃除や寝床など生活スペースを作らなければならない。
シオーナがどれくらい時間を稼いでくれるか確証がない以上、急いでおいて損はないはず。六人が追い付いてきたときにメロディアが店にいないのも不自然だ。そういえばシオーナはどういう事を言って時間を稼ぐつもりなんだろうか。話を合わせるのも大変だな。
メロディアがそう思ったとき、ぞくっと嫌な予感が生まれた。うまく名状できないが妙な不安に苛まれたのである。重大な何かを見落としているような。
一旦心を落ち着けてその原因を探ろうとした。しかしその前に疑問の答えが空からやってきたのだった。
ゴオッオオォ!
と、空気を切り裂くような轟音が鳴り響く。巨大な影は雲を千切り、二人を目掛けて急降下してくる。地面と激突する寸前にそれは大きな翼を広げて速度を制御すると襲来としか思えぬような咆哮をあげた。
メロディアもドロモカもその巨大な影の正体が一匹のドラゴンであり、更にそれがドロマーであるということも瞬時に理解をした。そして理解をしたからこそ混乱したのだ。
何故、ここにドロマーが!?
他のみんなは!?
いや、それよりもドロモカを逃がすべきか!?
というか、シオーナはいったい何を!?
と、思考が分かりやすく渋滞する。
恐らくはシオーナがしくじった、もしくは裏切ったことでドロモカの情報を得たドロマーが我先に会いたい一心で暴走をしたと見て間違いない。が、それが分かったところでもう打つ手がない。白を切ろうにも、ドロモカ本人がここにいるのではどんな言い訳も通用しない。
ごてごてになっている間にドロマーは人の姿をとる。
目は血走り、鼻息も荒い。竜族の本能を剥き出しにしているかのようだった。
「メ~ロ~ディ~ア~く~ん……!」
「…」
「シオーナから全て聞きましたよ」
「ぐっ!」
ドロマーは鼻から深く息を吸い込み、思いの丈をこれでもかと叫んだ。
「エヴァはロボットじゃありません!!!」
「いや、そっちかい!!?」
メロディアも負けず劣らずの勢いで叫び返す。森の静寂が嘘のように消し飛んでしまった。
するとどうしたことだろう。ドロマーが飛来した上空から更に幾つかの叫び声が聞こえる。どうもそれは落下してきているようだった。
「おわあああああああああ!!」
見ればミリー、ファリカ、ソルカナ、ラーダの四人が絶叫しながらこちらに向かって、もとい落ちてきている。状況から察するにここまでドラゴンとなったドロマーの背中に乗って移動してきたが、メロディア達を見定めた彼女が急降下したことで空中に取り残されたのだろう。ともすれば落ちるのは自然の摂理である。そしてレイディアントとシオーナの姿がないのは彼女らが飛べるからに他ならない。
案の定、その二人は急いで落ちている四人をキャッチしていた。
やがて無事に地上に降りることができた面々は口々にドロマーへ文句を飛ばす。
「くおっの、バカドラゴン! あんな降り方する奴があるか!!」
「し、死ぬかと思いましたぁ…!」
「急にお空に取り残すなんて! 私、お漏らししてしまいましたわ!」
「ホントに信じらんない!! アタイ、あのふわっとした感覚でお股が濡れちゃって癖になったんだけど!? もう一回やって!」
「そうだそうだ!」
「後半おかしいだろ!」
先程までのドロモカとの時間が嘘のように騒々しくなった。そしてついさっきまでの時間を懐かしんだことで、ドロモカの存在を忘れていたことに気がついた。
本人の話によればドロマーとまみえてしまうと、彼女に同調して再び悪堕ちしてしまうと言っていた。
メロディアは慌ててドロモカの様子を見る。すると彼女はじっとドロマーを見つつ、石像のように固まっていた。しかし小刻みに震えて口からはカチカチと歯のぶつかる音と何かの衝動を必死で抑え込めるような息づかいが漏れ始めた。
堕ちるのをどうにか堪えようとしているのは明白だ。
しかし、
「ドロモカ…」
と、ドロマーが愛おしそうな声で名前を呼んだ瞬間にドロモカは堕ちた。一瞬のうちに扇情的なサキュバスの姿に変わると実に甘い声を出したのだ。
「ドロマー姉様ぁ♥️♥️♥️」
「! ドロモカぁ♥️♥️♥️」
そうして二人は熱い抱擁を交わすと、更にテンションが上がったのか理性を外して大人のキスをし始めた。
じゅるじゅるっと卑猥な水音が森に響く。
残りの八英女は暖かい目で二人の感動の再会を見ていたが、メロディアはへたり込んでは一縷の希望がガラガラと崩れ落ちていく絶望感を味わっていた。
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