魔王を倒した勇者の息子に復讐をする悪堕ちヒロイン達

音喜多子平

文字の大きさ
上 下
122 / 163
堕ちた戦巫女

9ー2

しおりを挟む
 地下街? と一瞬不穏な気配を感じたが、潜伏するとしたら候補としてはあり得るような気がする。土地勘がないものには迷路と言って差し支えないからだ。

 どこかの店か通路。もしくは表にはない裏のルートにでも身を隠しているのだろう。メロディアはそんな予測を立てた。

だからこそだろう。メロディアは拍子抜けする思いだった。ソルカナが立ち止まった場所が予想の斜め上過ぎたのだ。

ソルカナはこういった地下街によくあるコインロッカーを指差して言う。

「こちらです」
「え? こちらって?」
「このコインロッカーの中にシオーナさんがいらっしゃいますわ」
「…はい?」

 まるで意味が分からないメロディアに向かってソルカナはロッカーキーを差し出してくる。反射的にそれを受け取ったメロディアはぐるぐると思考を回転させる。

 え? 何? どういうこと? このコインロッカーの中にシオーナさんがいるって…鞄が一個入るくらいの小さなロッカーだぞ?

 この中に入るってどんだけ小さいんだよ…あ、もしかして『小人化』とか『シュリンカー』になってるって事か? 気がつくとそれ以外の発想が思い浮かばない。そうでなければこのサイズのロッカーに入るのは不可能だろう。

 メロディアはキーを差し込むと恐る恐る扉を開けた。中に小さなシオーナがいることを期待して。しかし現実はそんなことはない。

中にあったのはシオーナと思わしき女の生首だったのだ。

メロディアはビックリして、思わずコインロッカーのドアを閉めてしまいました。

きっと今のは何かの見間違いであろうと思い直し、再びコインロッカーを開けると、そこにシオーナの生首が白目を向いていたのです。

メロディアは思わずドアを閉めましたが、きっと疲れていて見えもしないものを見てしまったのだと思い直し、覚悟を決めて、改めてコインロッカーを開けました。

するとそこには、シオーナの生首が白目を向いて、ほのかにほくそ笑んでいるのです。

メロディアはビックリして、コインロッカーのドアを閉めましたが、きっと幻覚を見たに違いない、最近あまり寝てないから、見えもしないものが見えてしまったのだと思い直し、コインロッカーを開けました。するとそこには、白目を向いた生首が入っていたのです。

驚いたメロディアは、気がつけばコインロッカーの扉を閉めていましたが、気のせいだと思い直し、再びドアを開けるとやっぱり白目を向いた生首がほのかに笑っているのです。

思わず扉を閉めてしまいましたが、きっと幻覚に違いありません。最近寝てなかったからと思い直し冷蔵…じゃなくてコインロッカーを開けると、やっぱりシオーナの生首が入っているのです。思わずコインロッカーを閉めたメロディアでしたが、これは何かの間違いに違いない。疲れているから見えもしない物が見えたのだと思い直し、コインロッカーを開けると、そこにはなんと白目を向いた生首が。

うわっと思いコインロッカーを閉めましたが、きっと疲れのせいで幻覚を見たに違いないと自分に言い聞かせ、再びコインロッカーを開けるとなんとシオーナの生首が白目を向きながら笑っているのです。

思わずコインロッカーの扉を閉めましたが、きっと気のせいで、何かと見間違えをしたのだと自分に言い聞かせ、扉を開け直すと、なんとそこにはシオーナの生首が白目を向いて笑っていたのです。

「もういいよ!!」

 そう言ってメロディアは盛大にロッカーの扉を閉めた。そして鬼気迫る顔でソルカナに尋ねる。

「な、なんですか、あれは!?」
「シオーナさんです」
「シオーナさんですって…し、死んでるんですか?」
「いえ。生きていますよ」
「で、でも首だけしか」
「シオーナさんは魔界での戦いの末、勝ち目がないと悟った瞬間に切腹をなされたんです。しかし魔王軍はそんな彼女の尊厳を踏みにじっては、すぐさま治療とは名ばかりの『人体改造』を彼女に施しました。ですから、あのような首だけの状態になっても生命維持はできていますわ」
「か、改造…?」

 つまりはサイボーグみたいなものか。なるほど、それならある程度は納得できる。が、同時に問題も発生する。

「それは分かりましたけど…じゃあシオーナさんの体は?」
「…行方不明なんです。本人曰く、こちらの世界で魔力供給が疎かになり機能停止になったらしくて。わたくし達が見つけたときには既に頭だけの状態でしたわ」
「本人曰く? 喋れるんですか? この状態で?」

 ソルカナはこくんっと頷く。

 そう聞かされたメロディアは再びロッカーを開けると、そうっとシオーナの生首を取り出した。人が疎らな時間で本当に助かったとしみじみ思っている。

「シオーナさん…?」
「…何?」
「うお!? びっくりした!」
「それはこちらの台詞。ソルカナかラーダだと思っていたら、まるで違う。あなたは誰?」
「あ、初めまして。メロディアと言います。」

 なんだろう。文字通り機械的な会話をする人だ。昔からこうなのか、それとも改造手術の影響なのか。どちらにせよ意思疎通ができるから良しとしよう。

「メロディア…記録した。けれど情報が不足している。あなたは何者?」
「勇者スコアと魔王ソルディダはご存知ですよね?」
「無論」
「僕はその二人の息子です」

 …。

 間が生まれた。シオーナは顔色一つ変えないが告げられた事実は余程衝撃的だったらしく、やがてキュィィィィという高い音をどこからか出す。すると耳の辺りから白い煙を上げた。

「ヤバい! 処理落ちして熱暴走を!?」

 メロディアはすぐさま氷結の魔法を使ってシオーナの事を冷やし始めたのだった。そしてシオーナを小脇に抱えたメロディアはどこか落ち着いて話のできる場所を求めて歩き始める。すると地下街の隅の隅にイートインスペースを見つけると、これ幸いとそこで屯することにした。

そしてテーブルの上にシオーナの首を置くと、結界を張った。これには人払いの意味ともう一つ、このイートインスペースを魔力で満たすと言う二つの意味があった。頭部の構造から見ても魔力をエネルギー源にしていることは明白だ。十二分な力を与えてやれば、勝手に目覚めるはず。メロディア達は椅子に腰を掛けて、彼女の機能が再起動するのを待っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元天才貴族、今やリモートで最強冒険者!

しらかめこう
ファンタジー
魔法技術が発展した異世界。 そんな世界にあるシャルトルーズ王国という国に冒険者ギルドがあった。 強者ぞろいの冒険者が数多く所属するそのギルドで現在唯一、最高ランクであるSSランクに到達している冒険者がいた。 ───彼の名は「オルタナ」 漆黒のコートに仮面をつけた謎多き冒険者である。彼の素顔を見た者は誰もおらず、どういった人物なのかも知る者は少ない。 だがしかし彼は誰もが認める圧倒的な力を有しており、冒険者になって僅か4年で勇者や英雄レベルのSSランクに到達していた。 そんな彼だが、実は・・・ 『前世の知識を持っている元貴族だった?!」 とある事情で貴族の地位を失い、母親とともに命を狙われることとなった彼。そんな彼は生活費と魔法の研究開発資金を稼ぐため冒険者をしようとするが、自分の正体が周囲に知られてはいけないので自身で開発した特殊な遠隔操作が出来るゴーレムを使って自宅からリモートで冒険者をすることに! そんな最強リモート冒険者が行く、異世界でのリモート冒険物語!! 毎日20時30分更新予定です!!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...