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堕ちたドルイド と 堕ちた射手
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「魔界にいるときはもう一人のわたくしが主人格として活動できていたのですが、人間界に戻ってからは立場が逆転してしまいました。恐らくは空気と太陽の影響でしょう。今では夜にならないと顕現することすら難しいのです」
「ん? それならもう一人のソルカナとやらを追い出す絶好の機会ではないのか?」
「そんな! レイディアント様、何てことを仰るのです!?」
「え?」
鬼気迫る表情でソルカナはレイディアントの事を窘めた。そう言いながら自分のお腹を庇うように抱き締める。
その様子がメロディアの目には正しく母聖樹の二つ名を名乗るに相応しいほど神聖で慈愛に満ちた姿として映っていた。
「道は違えど同じ種から始まった同胞です。何か一つが違っていたならば、この悲惨な道はわたくしが歩むはずだったかも知れません。敵とは言え、そのような運命にいた彼女を追い出すようなことはできません」
「す、すまん。軽率な発言を詫びる」
「それに彼女を追い出してしまったら、【自主規制】ができなくなってしまいますし」
「謝れ! レイディアントさんに心の底から謝れ!」
メロディアは叫んだ。
もうダメだ、こいつ。もうどうしようもない。
得も言われぬやるせなさと憤りを何とか押し込めてメロディアは反対側のベットに腰かけていた蜘蛛籠手のラーダを見た。
その視線に気がついたラーダは自分で自分を指差してあざとく言う。
「あ。次はアタイ?」
「ええ。教えてもらえますか? ラーダさんが堕ちた理由を。正直なことを言うと、あなたのソレに一番興味があります」
「へえ?」
メロディアの言葉は嘘ではない。
ドロマーと一番最初に出会ったとき、蜘蛛籠手のラーダの裏切りが原因となってかつての勇者パーティが壊滅したと言っていた。ならば彼女が堕ちたことこそが一連の惨状のきっかけと言える。
そんな思惑が伝わったのかどうかは分からないが、ラーダはニヨニヨとした笑顔で応えてきた。
「魔王様と旦那の子供かぁ」
独り言のように呟くと口許から溢れる涎を一拭いした。何を考えているのか分からず、メロディアは若干引いた。
「あ、ごめんね。アタイ、ショタコンでさ」
「…は?」
「そう言えば、いつかそんな話をしてましたね」
「ねー。ドロマーとはショタ仲間だったから話も弾んだよね。懐かしい」
「ボクには理解不能です。男はやっぱりがっちりと大きくて筋肉質の方が…」
「あーしもだな。ガキじゃ濡れねー」
「わたくしの場合、大抵の方が子供サイズですからね。一度くらい自分より大きい殿方に抱き締められてみたいですわ」
まずい。このままじゃエロトークに花が咲いて酒場の二の舞になる。
メロディアは強引に話を戻した。
「皆さんの性的嗜好はどうでもいいですから」
「良くないよ! 同士がいれば語らい、そうでないなら布教しないと!」
「きちんと話してくれたら、飛びきりの笑顔で「お姉ちゃん」って呼んであげます」
「さあメロディア君、なんでも聞いてよ!」
お手本のように手のひらを返したラーダは先んじて飛びきりの笑顔になった。それを見ていたドロマーは呆れたようにいう。
「いくらなんでも単純すぎはしませんか?」
すると、当然のツッコミが飛んできたのだ。
「「「お前が言うな」」」
◇
とにもかくにも話の場を作れたメロディアは隙も見せずに問いただすことに専念する。
「ではラーダさん」
「はいな!」
「あなたは何がどうなって母さんの…魔王軍に堕ちたんですか?」
「メロディア君はリコダって町は知っているかな?」
「リコダ? ええ。かつての魔界の入り口に尤も近い町ですよね? ティパンニとはまた別の意味で危険な町です」
「そう。けど今言ったように魔界には一番近い町だからね、アタイ達も例によってリコダの町に滞在して作戦や装備を整えていた。当然、その金策としてクエストもこなしていたよ」
「…スコアとのパーティとしてアレが最後のクエストになってしまいましたね…」
ドロマーは意味深に呟いた。他のみんなもしみじみと当時の事を思い出しているかのような、神妙な面持ちになっている。
「そのクエストで何かが?」
「うん。厳密に言うとそのクエストの後にね、とあるスライムの一団と交戦したんだ」
「スライム…」
唐突に出てきたキーワードにメロディアの目が光る。そのスライムこそが勇者パーティが転落した元凶だろう。
ラーダはいつの間にかチャラついた雰囲気を脱ぎ、真剣な顔つきになっていた。
「リコダ周辺は魔力が濃いから魔物の力も中々に強力なんだよね。けど所詮はスライム、アタイ達の敵じゃなかった。楽勝とは言えないかもしれないけど、特に苦戦はしなかった。少なくともアタイはそう思ってた。…今にして思えばその油断に取り込まれたんだ」
「…何があったんです?」
「宿屋に戻ってシャワーを浴びている時にね、アタイは自分の左腕にちっちゃな傷があることに気がついたんだ」
「「傷?」」
自然とメロディアとレイディアントの声が重なる。
恐らくはその傷があったであろう場所を押さえてラーダは体を強ばらせた。
「ん? それならもう一人のソルカナとやらを追い出す絶好の機会ではないのか?」
「そんな! レイディアント様、何てことを仰るのです!?」
「え?」
鬼気迫る表情でソルカナはレイディアントの事を窘めた。そう言いながら自分のお腹を庇うように抱き締める。
その様子がメロディアの目には正しく母聖樹の二つ名を名乗るに相応しいほど神聖で慈愛に満ちた姿として映っていた。
「道は違えど同じ種から始まった同胞です。何か一つが違っていたならば、この悲惨な道はわたくしが歩むはずだったかも知れません。敵とは言え、そのような運命にいた彼女を追い出すようなことはできません」
「す、すまん。軽率な発言を詫びる」
「それに彼女を追い出してしまったら、【自主規制】ができなくなってしまいますし」
「謝れ! レイディアントさんに心の底から謝れ!」
メロディアは叫んだ。
もうダメだ、こいつ。もうどうしようもない。
得も言われぬやるせなさと憤りを何とか押し込めてメロディアは反対側のベットに腰かけていた蜘蛛籠手のラーダを見た。
その視線に気がついたラーダは自分で自分を指差してあざとく言う。
「あ。次はアタイ?」
「ええ。教えてもらえますか? ラーダさんが堕ちた理由を。正直なことを言うと、あなたのソレに一番興味があります」
「へえ?」
メロディアの言葉は嘘ではない。
ドロマーと一番最初に出会ったとき、蜘蛛籠手のラーダの裏切りが原因となってかつての勇者パーティが壊滅したと言っていた。ならば彼女が堕ちたことこそが一連の惨状のきっかけと言える。
そんな思惑が伝わったのかどうかは分からないが、ラーダはニヨニヨとした笑顔で応えてきた。
「魔王様と旦那の子供かぁ」
独り言のように呟くと口許から溢れる涎を一拭いした。何を考えているのか分からず、メロディアは若干引いた。
「あ、ごめんね。アタイ、ショタコンでさ」
「…は?」
「そう言えば、いつかそんな話をしてましたね」
「ねー。ドロマーとはショタ仲間だったから話も弾んだよね。懐かしい」
「ボクには理解不能です。男はやっぱりがっちりと大きくて筋肉質の方が…」
「あーしもだな。ガキじゃ濡れねー」
「わたくしの場合、大抵の方が子供サイズですからね。一度くらい自分より大きい殿方に抱き締められてみたいですわ」
まずい。このままじゃエロトークに花が咲いて酒場の二の舞になる。
メロディアは強引に話を戻した。
「皆さんの性的嗜好はどうでもいいですから」
「良くないよ! 同士がいれば語らい、そうでないなら布教しないと!」
「きちんと話してくれたら、飛びきりの笑顔で「お姉ちゃん」って呼んであげます」
「さあメロディア君、なんでも聞いてよ!」
お手本のように手のひらを返したラーダは先んじて飛びきりの笑顔になった。それを見ていたドロマーは呆れたようにいう。
「いくらなんでも単純すぎはしませんか?」
すると、当然のツッコミが飛んできたのだ。
「「「お前が言うな」」」
◇
とにもかくにも話の場を作れたメロディアは隙も見せずに問いただすことに専念する。
「ではラーダさん」
「はいな!」
「あなたは何がどうなって母さんの…魔王軍に堕ちたんですか?」
「メロディア君はリコダって町は知っているかな?」
「リコダ? ええ。かつての魔界の入り口に尤も近い町ですよね? ティパンニとはまた別の意味で危険な町です」
「そう。けど今言ったように魔界には一番近い町だからね、アタイ達も例によってリコダの町に滞在して作戦や装備を整えていた。当然、その金策としてクエストもこなしていたよ」
「…スコアとのパーティとしてアレが最後のクエストになってしまいましたね…」
ドロマーは意味深に呟いた。他のみんなもしみじみと当時の事を思い出しているかのような、神妙な面持ちになっている。
「そのクエストで何かが?」
「うん。厳密に言うとそのクエストの後にね、とあるスライムの一団と交戦したんだ」
「スライム…」
唐突に出てきたキーワードにメロディアの目が光る。そのスライムこそが勇者パーティが転落した元凶だろう。
ラーダはいつの間にかチャラついた雰囲気を脱ぎ、真剣な顔つきになっていた。
「リコダ周辺は魔力が濃いから魔物の力も中々に強力なんだよね。けど所詮はスライム、アタイ達の敵じゃなかった。楽勝とは言えないかもしれないけど、特に苦戦はしなかった。少なくともアタイはそう思ってた。…今にして思えばその油断に取り込まれたんだ」
「…何があったんです?」
「宿屋に戻ってシャワーを浴びている時にね、アタイは自分の左腕にちっちゃな傷があることに気がついたんだ」
「「傷?」」
自然とメロディアとレイディアントの声が重なる。
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