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堕ちたドルイド と 堕ちた射手
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しかも奇妙な交ざり合いがあったのはソルカナだけではない。
先程メロディアが引きちぎった、矢に付着していたスライム達にも同様の動きがあった。
もぞもぞと地を這うスライム達は一様に気絶しているラーダを目指す。そして一端がラーダの麦穂のような金髪に触れた途端、髪の毛と一体化し、頭皮の毛穴からラーダの中へと入っていった。
SFホラー映画のような中々にショッキングな映像だったが、同時にクラッシコ王国の城下町を出るときにドロマーが言っていた言葉を思い出した。
『はい! ソルカナと一緒にいるのはラーダだと思います。彼女はスライムに【寄生】されて悪堕ちしたので』
確かにそう言っていた。ラーダがスライムの宿主となっているならば、スライムを付着させて矢を放ったこと、そのスライムが彼女に戻っていくなど一連の流れは納得だ。
ともすれば先程のソルカナの方はなんだろうかとメロディアは考えた。
蔦でぐるぐる巻きにされた感触から推察するに、あのセピアソルカナは肉体を持たずに活動をする思念体と呼ばれる存在と見て間違いなさそうだ。仮にその推論が当たっていたとすれば、ソルカナが悪堕ちした原因はあのセピアソルカナにあると判断するのが自然な発想。
そして思念体は往々にして対象者に【憑依】することで、姿形や性格を変異させる。
…のだが、あそこまで瓜二つな思念体が発生している理由はとんと思い付かない。
「…ま、いいや。戻れば何かしらは分かるだろうし」
そうして一先ずの決着を見せたメロディアは母親のマントを取り出した。マントと協力して器用に二人を担ぐと、なるたけ人目をさけてホテルへ帰っていった。
◇
ホテルの近くまではどうにかこうにか人目を忍んでこれたが、ここから問題だ。宿泊客としてフロントに認知されていない二人をどうやって抱え込もうか。しかもメロディアが女性を抱えて戻ってくるのはこれが本日二回目。何をどう考えても怪しまれることは必至だ。
しかし幸運なことがあった。
ホテルの前には自警団や騎士団、そしてそれらを取り囲むように大量の野次馬で埋め尽くされていたのだ。メロディアは彼らが一体何を目当てに集まっているのかを遠巻きに確認した。
「あぁ…」
思わずそんな納得と同情の声を漏らしてしまう。
ホテルの前には先程部屋の前で絡まれた男が二人、捨てられるように放り出されていたのだ。どうやら息はあるようだ。しかし全裸であられもない格好にさせられているし、目は虚ろでパクパクと動く唇には水分がない。恐らくは脱水症状を起こしている。本当に命だけは助けてやったと言う状態だ。
少しお灸が効きすぎたかなとも思ったが、これは致し方ない。
ありがたくこの人混みと混乱とを利用させてもらう。
ホテルの表通りがそんな有り様だったから裏口はもぬけの殻といっても差し支えない。難なくホテルの中に入れたメロディアはそそくさと取ってある部屋へと向かった。一応はと思いノックをすると、レイディアントが顔を覗かせた。彼女はメロディアの顔を見ると一端安堵の表情を浮かべ、抱えられた二人の姿を見ると色々な感情の交ざった複雑そうな驚き顔を見せたのだった。
ドロマー達はすっかりと酔いも覚め、それでいて酒を残さずに清々しい雰囲気で出迎えてくれた。
「メロディアが帰ってきたぞ」
「あ。おかえり~」
「いや~すまねえ。久々だったからすっかり飲み過ぎて」
「しかも気を利かせてあんなデザートまで用意してもらえるなんて…ご馳走さまです」
「そんなつもりはないですけど…ま、あの二人を懲らしめてもらったってことでいいです。それよりも、お仲間を連れてきました」
「え?」
メロディアはいい加減に腕が痺れてきたので床に引きずるようにして捕まえた二人を見せた。
そんなぼろ雑巾のような二人を見て各々が声をあげるも、別段驚いたりした様子はない。もうこちらの四人は全員が単独ではメロディアに敵うわけもないと認めているからだ。
「あら。私たちが出る幕もなかったですね」
「とりあえず寝かせたいんでベットを貸してください」
「どうぞ…やんごとなき事情でびっちょびちょですけど」
「…」
もう言及するのも突っ込むのも億劫だったから見て見ぬふりを決め込んだ。メロディアは二人をベットに降ろす。するとレイディアントが呟く。彼女は堕落前の【八英女】を知っているからショックも一入だ。
「やはり強烈だな…ラーダは惜しげもなく扇情的な服を着ているし、ソルカナに至っては妊娠までしているとは」
「ホントですね。誰の子でしょう?」
「何? これは魔王の影響ではないのか?」
「少なくとも魔界を抜けるまでは妊娠なんてしてなかったぜ」
「ボク達と別れた後に身籠ったってことですね」
「身籠ったとは少し違うと思います。なんかセピア色をしたもう一人のソルカナさんみたいなのがいました」
メロディアがそう言うと事情を知っている三人が
「「「あ~」」」
と、得心のいったような声を出した。
「僕の話を聞こうともしないので無理に気絶させましたけど…皆さんが揃っていれば暴れるってことはないでしょう。起こして事情を聞きます」
メロディアは二人の体に触れると間もなく気付けを行った。「がふっ」という息遣いと共に二人はゆっくりと目を覚ます。よろよろと身を起こしたソルカナとラーダは部屋の眩さに当惑しながらも周囲の様子を伺った。
先程メロディアが引きちぎった、矢に付着していたスライム達にも同様の動きがあった。
もぞもぞと地を這うスライム達は一様に気絶しているラーダを目指す。そして一端がラーダの麦穂のような金髪に触れた途端、髪の毛と一体化し、頭皮の毛穴からラーダの中へと入っていった。
SFホラー映画のような中々にショッキングな映像だったが、同時にクラッシコ王国の城下町を出るときにドロマーが言っていた言葉を思い出した。
『はい! ソルカナと一緒にいるのはラーダだと思います。彼女はスライムに【寄生】されて悪堕ちしたので』
確かにそう言っていた。ラーダがスライムの宿主となっているならば、スライムを付着させて矢を放ったこと、そのスライムが彼女に戻っていくなど一連の流れは納得だ。
ともすれば先程のソルカナの方はなんだろうかとメロディアは考えた。
蔦でぐるぐる巻きにされた感触から推察するに、あのセピアソルカナは肉体を持たずに活動をする思念体と呼ばれる存在と見て間違いなさそうだ。仮にその推論が当たっていたとすれば、ソルカナが悪堕ちした原因はあのセピアソルカナにあると判断するのが自然な発想。
そして思念体は往々にして対象者に【憑依】することで、姿形や性格を変異させる。
…のだが、あそこまで瓜二つな思念体が発生している理由はとんと思い付かない。
「…ま、いいや。戻れば何かしらは分かるだろうし」
そうして一先ずの決着を見せたメロディアは母親のマントを取り出した。マントと協力して器用に二人を担ぐと、なるたけ人目をさけてホテルへ帰っていった。
◇
ホテルの近くまではどうにかこうにか人目を忍んでこれたが、ここから問題だ。宿泊客としてフロントに認知されていない二人をどうやって抱え込もうか。しかもメロディアが女性を抱えて戻ってくるのはこれが本日二回目。何をどう考えても怪しまれることは必至だ。
しかし幸運なことがあった。
ホテルの前には自警団や騎士団、そしてそれらを取り囲むように大量の野次馬で埋め尽くされていたのだ。メロディアは彼らが一体何を目当てに集まっているのかを遠巻きに確認した。
「あぁ…」
思わずそんな納得と同情の声を漏らしてしまう。
ホテルの前には先程部屋の前で絡まれた男が二人、捨てられるように放り出されていたのだ。どうやら息はあるようだ。しかし全裸であられもない格好にさせられているし、目は虚ろでパクパクと動く唇には水分がない。恐らくは脱水症状を起こしている。本当に命だけは助けてやったと言う状態だ。
少しお灸が効きすぎたかなとも思ったが、これは致し方ない。
ありがたくこの人混みと混乱とを利用させてもらう。
ホテルの表通りがそんな有り様だったから裏口はもぬけの殻といっても差し支えない。難なくホテルの中に入れたメロディアはそそくさと取ってある部屋へと向かった。一応はと思いノックをすると、レイディアントが顔を覗かせた。彼女はメロディアの顔を見ると一端安堵の表情を浮かべ、抱えられた二人の姿を見ると色々な感情の交ざった複雑そうな驚き顔を見せたのだった。
ドロマー達はすっかりと酔いも覚め、それでいて酒を残さずに清々しい雰囲気で出迎えてくれた。
「メロディアが帰ってきたぞ」
「あ。おかえり~」
「いや~すまねえ。久々だったからすっかり飲み過ぎて」
「しかも気を利かせてあんなデザートまで用意してもらえるなんて…ご馳走さまです」
「そんなつもりはないですけど…ま、あの二人を懲らしめてもらったってことでいいです。それよりも、お仲間を連れてきました」
「え?」
メロディアはいい加減に腕が痺れてきたので床に引きずるようにして捕まえた二人を見せた。
そんなぼろ雑巾のような二人を見て各々が声をあげるも、別段驚いたりした様子はない。もうこちらの四人は全員が単独ではメロディアに敵うわけもないと認めているからだ。
「あら。私たちが出る幕もなかったですね」
「とりあえず寝かせたいんでベットを貸してください」
「どうぞ…やんごとなき事情でびっちょびちょですけど」
「…」
もう言及するのも突っ込むのも億劫だったから見て見ぬふりを決め込んだ。メロディアは二人をベットに降ろす。するとレイディアントが呟く。彼女は堕落前の【八英女】を知っているからショックも一入だ。
「やはり強烈だな…ラーダは惜しげもなく扇情的な服を着ているし、ソルカナに至っては妊娠までしているとは」
「ホントですね。誰の子でしょう?」
「何? これは魔王の影響ではないのか?」
「少なくとも魔界を抜けるまでは妊娠なんてしてなかったぜ」
「ボク達と別れた後に身籠ったってことですね」
「身籠ったとは少し違うと思います。なんかセピア色をしたもう一人のソルカナさんみたいなのがいました」
メロディアがそう言うと事情を知っている三人が
「「「あ~」」」
と、得心のいったような声を出した。
「僕の話を聞こうともしないので無理に気絶させましたけど…皆さんが揃っていれば暴れるってことはないでしょう。起こして事情を聞きます」
メロディアは二人の体に触れると間もなく気付けを行った。「がふっ」という息遣いと共に二人はゆっくりと目を覚ます。よろよろと身を起こしたソルカナとラーダは部屋の眩さに当惑しながらも周囲の様子を伺った。
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