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堕ちたドルイド と 堕ちた射手
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「…ま、お約束だな」
四人を曲芸のように担いでホテルに戻ってきたメロディアはそう呟いた。流れが綺麗すぎて作為的なものを感じてしまう。結局情報集めてないし。
けれど、同時に父から聞かされていた【八英女】の忌憚のない姿を見られたことは少なからず幸運だった。ドロマーが落ち込み、ミリーがそれを慰める。ファリカがお酌をして、レイディアントがこんこんと愚痴を聞く。
堕ちたとしてもその関係性が崩れていないことは、ファンの一人として嬉しかった。
なので酔いつぶれたことに関しては、今日だけは目をつぶることにした。
そんなことを思いつつ、全員をひとまず寝かせるとメロディアは部屋を出て件の二人組を探すことにした。
…が、その前に。
「おい、そこの二人」
メロディアは廊下の影に隠れているつもりのお粗末な二人組に声をかけた。角からはニヤニヤとした笑みを浮かべた二人の男が現れた。
「あれ? 気付いてたのか?」
「へへ、丁度いいや。その部屋にさっきの姉ちゃんたちがいるんだろ? ちょいと鍵を貸してくれねえか?」
「僕ちゃんもすごいね~。四人かついでホテルに戻ってこれるんだから。お姉ちゃんか? まさかママもいたりするのかなぁ? 起きたら伝えておきな。この町であの騒ぎ方は目をつけられても仕方ないってな」
「…姉でも母親でもないです。四人ともウチの従業員です」
「従業員? 風俗か?」
「いえ、食堂の」
「どんな食堂のどんな従業員だ! あんな全開のエロトークで酒場の客全員を発情させやがって!」
「『私たちでシコシコして~ん』なんてリアルで言う女を初めてみたぞ。ウェイトレスより娼婦の方がお似合いだぜ!」
っく。それについては強く否定できない。
確かに輩に絡まれたって仕方のない猥談に花を咲かせていた。他人のフリを決め込むのがどれだけ大変だったか。
それと同時にこいつらの目的もはっきりした。物取りかもしくは四人の体目当ての悪漢のどちらかだと当たりをつけいたが後者のようだ。男たちは言い終わるとまたニヤニヤしたイヤらしい笑みを浮かべてナイフをちらつかせた。
「てな訳で、俺たちをムラムラさせた責任を取ってもらおうか」
「部屋を出たってことは出掛けるんだろ? 鍵を置いてしばらく帰ってこないなら怪我しなくてすむぜ」
「わかりました。どうぞ」
「え?」
メロディアは大人しく鍵を渡した。とっちめてもいいと思ったが面倒くささが勝ってしまった。善良な市民ならいざ知らず、こういう奴らが痛い目を見るならそれはそれで構わない。
「僕は夜明けまでは帰ってきませんから」
「き、聞き分けがいいじゃねえか」
「その代わりに教えてもらいたいんですが」
「え? 何を?」
「この町で妙な二人組を見ませんでしたか? なんか曲解したワルトトゥリ教を流布しているそうなんですが」
「…ああ、そんな噂を聞いたな。一昨日だかにマレット橋辺りに出たって、二人組かは知らんが」
「! マレット橋ですね。ありがとうございます」
「…ど、どういたしまして」
なんだ根はいい人かも。けど、お灸が必要な事実は変わらないな…よし。
「もしピンチになったらメロディアという名前を出してください」
そう言ってそそくさとその場を後にした。自分と面識があるということが知れればとりあえず殺されることはないだろう。
二人は狐につままれたような顔をして互いを見合わせたが、すぐに目的を思い出したのか涎を拭いながら部屋に入っていった。数分後に地獄を見るとも知らないで。
四人を曲芸のように担いでホテルに戻ってきたメロディアはそう呟いた。流れが綺麗すぎて作為的なものを感じてしまう。結局情報集めてないし。
けれど、同時に父から聞かされていた【八英女】の忌憚のない姿を見られたことは少なからず幸運だった。ドロマーが落ち込み、ミリーがそれを慰める。ファリカがお酌をして、レイディアントがこんこんと愚痴を聞く。
堕ちたとしてもその関係性が崩れていないことは、ファンの一人として嬉しかった。
なので酔いつぶれたことに関しては、今日だけは目をつぶることにした。
そんなことを思いつつ、全員をひとまず寝かせるとメロディアは部屋を出て件の二人組を探すことにした。
…が、その前に。
「おい、そこの二人」
メロディアは廊下の影に隠れているつもりのお粗末な二人組に声をかけた。角からはニヤニヤとした笑みを浮かべた二人の男が現れた。
「あれ? 気付いてたのか?」
「へへ、丁度いいや。その部屋にさっきの姉ちゃんたちがいるんだろ? ちょいと鍵を貸してくれねえか?」
「僕ちゃんもすごいね~。四人かついでホテルに戻ってこれるんだから。お姉ちゃんか? まさかママもいたりするのかなぁ? 起きたら伝えておきな。この町であの騒ぎ方は目をつけられても仕方ないってな」
「…姉でも母親でもないです。四人ともウチの従業員です」
「従業員? 風俗か?」
「いえ、食堂の」
「どんな食堂のどんな従業員だ! あんな全開のエロトークで酒場の客全員を発情させやがって!」
「『私たちでシコシコして~ん』なんてリアルで言う女を初めてみたぞ。ウェイトレスより娼婦の方がお似合いだぜ!」
っく。それについては強く否定できない。
確かに輩に絡まれたって仕方のない猥談に花を咲かせていた。他人のフリを決め込むのがどれだけ大変だったか。
それと同時にこいつらの目的もはっきりした。物取りかもしくは四人の体目当ての悪漢のどちらかだと当たりをつけいたが後者のようだ。男たちは言い終わるとまたニヤニヤしたイヤらしい笑みを浮かべてナイフをちらつかせた。
「てな訳で、俺たちをムラムラさせた責任を取ってもらおうか」
「部屋を出たってことは出掛けるんだろ? 鍵を置いてしばらく帰ってこないなら怪我しなくてすむぜ」
「わかりました。どうぞ」
「え?」
メロディアは大人しく鍵を渡した。とっちめてもいいと思ったが面倒くささが勝ってしまった。善良な市民ならいざ知らず、こういう奴らが痛い目を見るならそれはそれで構わない。
「僕は夜明けまでは帰ってきませんから」
「き、聞き分けがいいじゃねえか」
「その代わりに教えてもらいたいんですが」
「え? 何を?」
「この町で妙な二人組を見ませんでしたか? なんか曲解したワルトトゥリ教を流布しているそうなんですが」
「…ああ、そんな噂を聞いたな。一昨日だかにマレット橋辺りに出たって、二人組かは知らんが」
「! マレット橋ですね。ありがとうございます」
「…ど、どういたしまして」
なんだ根はいい人かも。けど、お灸が必要な事実は変わらないな…よし。
「もしピンチになったらメロディアという名前を出してください」
そう言ってそそくさとその場を後にした。自分と面識があるということが知れればとりあえず殺されることはないだろう。
二人は狐につままれたような顔をして互いを見合わせたが、すぐに目的を思い出したのか涎を拭いながら部屋に入っていった。数分後に地獄を見るとも知らないで。
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