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堕ちた魔法拳闘士
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ローナ家の一悶着を見事解決させたメロディア達は、多大な感謝の言葉と共に見送られて屋敷を後にした。もちろん、報酬をアガタフホテルの修繕に当てる事で一切の遺恨をも残さない事で決着をつけられた。
色々なトラブルからひとまずは解放されたメロディアは屈託のない笑顔を後ろの二人に向けた。
「さて。ギタ村での仕事は終わりましたし、クラッシコ王国に戻りますか。」
「そうですね。騎士団に報告して報酬ももらいましょう」
「レイディアントさんを引き渡すつもりはないので、たぶん無理ですよ」
「あら、それは残念」
そんな二人の会話にレイディアントは割って入る。
「ちょっと待て。我はこれからも行動を共にしなければならぬのか?」
「え? 僕はそのつもりですけど」
「そうはいかん。我にはこの世の悪を裁き、理想の千年王国を築くという崇高なる使命が・・・」
「・・・なら僕から離れる前にお金を返してください」
「え?」
レイディアントは鳩が豆鉄砲を食ったような、正しくそんな顔で何とも気の抜けた声を出した。メロディアはそんな彼女に追い打ちをかけるよう、冷徹に言った。
「え? じゃないですよ。そもそも今回の料理人として仕事を引き受けた経緯はレイディアントさんがホテルの一室をメチャクチャにしたからですよ。そしてその修繕費は僕がローナ家に料理を作ったその報酬で賄っています。とどのつまり、あなたは僕に借金をしているということです」
「あ、う」
「それとも借金を踏み倒すのは悪ではないんですか?」
「そ、そんな訳なかろう!」
レイディアントはムキになって答えた。それを見て、メロディアはほくそ笑みを浮かべながら言った。
「だったらお金を返すまでは僕の側にいてもらいます」
「し、承知した。しかし問題がある」
「なんですか?」
「今の我には金銭を稼ぐ手だてがない・・・」
シュンとした態度でレイディアントは申し訳なさそうに呟く。曲がったことや不正に機敏な彼女は借金というものに心底負い目を感じているようだった。
◇
そんな顔をさせるのはメロディアとしても不本意だったので、すぐに自分の本意を打ち明ける。
「大丈夫ですよ。レイディアントさんの働き口はちゃんと考えていますから」
「本当か? いったい何を?」
そう尋ねるレイディアントに向かって、ドロマーはいやらしい笑みを浮かべてサキュバス特有の淫気と共に言葉を吐き出す。
「愚問ですね、レイディアント。メロディア君は男、あなたは女。借金なんて汚名を雪ぐには彼に傅き、媚びへつらってその体を捧げるのです」
「っく。いっそ殺せ」
「何二人で盛り上ってんだ。ていうか、ドロマーさんも弁償の途中なのをお忘れなく」
「私は借金がなくてもメロディア君から離れるつもりはありませんが・・・具体的に何をすれば?」
「ふふふ」
メロディアは意味深な笑みを二人に向けた。彼には考えがあったのだ。というよりも騎士団から調査の仕事の依頼がなければ、今ごろは壊れた屋台の代替案としてやっていたであろう仕事を二人に手伝わせるつもりだった。
「ま、クラッシコ王国に帰ったら話しますよ。準備が必要なのでさっさと帰りましょう」
そうして三人はギタ村の郊外を目指し歩きだした。流石にこんな町中でドロマーが本来のドラゴンの姿に変身してしまってはパニックになりかねないからだ。
行きしなの道中で三人は屋台に立ち寄ってホットドックを買った。ギタ村は近隣の要所のため人の通りが多い。そして訪れる人が口々に誉めそやすのがソーセージと地ビールである。未成年のメロディアはもちろんアルコールを飲むことはできなかったので、二人にご馳走をしつつ、味の感想を聞いた。
過程はどうあれローナ家の問題を解決するに当たって二人の助力に感謝したいとも彼は思っていたのだ。
しかし公衆の面前でソーセージを卑猥に頬張ったドロマーには鉄拳も食らわしていたが。
やがて食事もほどほどにギタ村の門を抜け草原に出ると、ここにやって来た時と同じようにドロマーは竜に変じ、レイディアントは背中から信仰の翼を生やして大空へと舞い上がった。
ドロマーの背中から次第に小さくなっていくギタ村を見つつ、メロディアは帰宅してからの仕事に関して思いを巡らせていた。
色々なトラブルからひとまずは解放されたメロディアは屈託のない笑顔を後ろの二人に向けた。
「さて。ギタ村での仕事は終わりましたし、クラッシコ王国に戻りますか。」
「そうですね。騎士団に報告して報酬ももらいましょう」
「レイディアントさんを引き渡すつもりはないので、たぶん無理ですよ」
「あら、それは残念」
そんな二人の会話にレイディアントは割って入る。
「ちょっと待て。我はこれからも行動を共にしなければならぬのか?」
「え? 僕はそのつもりですけど」
「そうはいかん。我にはこの世の悪を裁き、理想の千年王国を築くという崇高なる使命が・・・」
「・・・なら僕から離れる前にお金を返してください」
「え?」
レイディアントは鳩が豆鉄砲を食ったような、正しくそんな顔で何とも気の抜けた声を出した。メロディアはそんな彼女に追い打ちをかけるよう、冷徹に言った。
「え? じゃないですよ。そもそも今回の料理人として仕事を引き受けた経緯はレイディアントさんがホテルの一室をメチャクチャにしたからですよ。そしてその修繕費は僕がローナ家に料理を作ったその報酬で賄っています。とどのつまり、あなたは僕に借金をしているということです」
「あ、う」
「それとも借金を踏み倒すのは悪ではないんですか?」
「そ、そんな訳なかろう!」
レイディアントはムキになって答えた。それを見て、メロディアはほくそ笑みを浮かべながら言った。
「だったらお金を返すまでは僕の側にいてもらいます」
「し、承知した。しかし問題がある」
「なんですか?」
「今の我には金銭を稼ぐ手だてがない・・・」
シュンとした態度でレイディアントは申し訳なさそうに呟く。曲がったことや不正に機敏な彼女は借金というものに心底負い目を感じているようだった。
◇
そんな顔をさせるのはメロディアとしても不本意だったので、すぐに自分の本意を打ち明ける。
「大丈夫ですよ。レイディアントさんの働き口はちゃんと考えていますから」
「本当か? いったい何を?」
そう尋ねるレイディアントに向かって、ドロマーはいやらしい笑みを浮かべてサキュバス特有の淫気と共に言葉を吐き出す。
「愚問ですね、レイディアント。メロディア君は男、あなたは女。借金なんて汚名を雪ぐには彼に傅き、媚びへつらってその体を捧げるのです」
「っく。いっそ殺せ」
「何二人で盛り上ってんだ。ていうか、ドロマーさんも弁償の途中なのをお忘れなく」
「私は借金がなくてもメロディア君から離れるつもりはありませんが・・・具体的に何をすれば?」
「ふふふ」
メロディアは意味深な笑みを二人に向けた。彼には考えがあったのだ。というよりも騎士団から調査の仕事の依頼がなければ、今ごろは壊れた屋台の代替案としてやっていたであろう仕事を二人に手伝わせるつもりだった。
「ま、クラッシコ王国に帰ったら話しますよ。準備が必要なのでさっさと帰りましょう」
そうして三人はギタ村の郊外を目指し歩きだした。流石にこんな町中でドロマーが本来のドラゴンの姿に変身してしまってはパニックになりかねないからだ。
行きしなの道中で三人は屋台に立ち寄ってホットドックを買った。ギタ村は近隣の要所のため人の通りが多い。そして訪れる人が口々に誉めそやすのがソーセージと地ビールである。未成年のメロディアはもちろんアルコールを飲むことはできなかったので、二人にご馳走をしつつ、味の感想を聞いた。
過程はどうあれローナ家の問題を解決するに当たって二人の助力に感謝したいとも彼は思っていたのだ。
しかし公衆の面前でソーセージを卑猥に頬張ったドロマーには鉄拳も食らわしていたが。
やがて食事もほどほどにギタ村の門を抜け草原に出ると、ここにやって来た時と同じようにドロマーは竜に変じ、レイディアントは背中から信仰の翼を生やして大空へと舞い上がった。
ドロマーの背中から次第に小さくなっていくギタ村を見つつ、メロディアは帰宅してからの仕事に関して思いを巡らせていた。
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