92 / 163
堕ちた魔法拳闘士
4ー1
しおりを挟む
ローナ家の一悶着を見事解決させたメロディア達は、多大な感謝の言葉と共に見送られて屋敷を後にした。もちろん、報酬をアガタフホテルの修繕に当てる事で一切の遺恨をも残さない事で決着をつけられた。
色々なトラブルからひとまずは解放されたメロディアは屈託のない笑顔を後ろの二人に向けた。
「さて。ギタ村での仕事は終わりましたし、クラッシコ王国に戻りますか。」
「そうですね。騎士団に報告して報酬ももらいましょう」
「レイディアントさんを引き渡すつもりはないので、たぶん無理ですよ」
「あら、それは残念」
そんな二人の会話にレイディアントは割って入る。
「ちょっと待て。我はこれからも行動を共にしなければならぬのか?」
「え? 僕はそのつもりですけど」
「そうはいかん。我にはこの世の悪を裁き、理想の千年王国を築くという崇高なる使命が・・・」
「・・・なら僕から離れる前にお金を返してください」
「え?」
レイディアントは鳩が豆鉄砲を食ったような、正しくそんな顔で何とも気の抜けた声を出した。メロディアはそんな彼女に追い打ちをかけるよう、冷徹に言った。
「え? じゃないですよ。そもそも今回の料理人として仕事を引き受けた経緯はレイディアントさんがホテルの一室をメチャクチャにしたからですよ。そしてその修繕費は僕がローナ家に料理を作ったその報酬で賄っています。とどのつまり、あなたは僕に借金をしているということです」
「あ、う」
「それとも借金を踏み倒すのは悪ではないんですか?」
「そ、そんな訳なかろう!」
レイディアントはムキになって答えた。それを見て、メロディアはほくそ笑みを浮かべながら言った。
「だったらお金を返すまでは僕の側にいてもらいます」
「し、承知した。しかし問題がある」
「なんですか?」
「今の我には金銭を稼ぐ手だてがない・・・」
シュンとした態度でレイディアントは申し訳なさそうに呟く。曲がったことや不正に機敏な彼女は借金というものに心底負い目を感じているようだった。
◇
そんな顔をさせるのはメロディアとしても不本意だったので、すぐに自分の本意を打ち明ける。
「大丈夫ですよ。レイディアントさんの働き口はちゃんと考えていますから」
「本当か? いったい何を?」
そう尋ねるレイディアントに向かって、ドロマーはいやらしい笑みを浮かべてサキュバス特有の淫気と共に言葉を吐き出す。
「愚問ですね、レイディアント。メロディア君は男、あなたは女。借金なんて汚名を雪ぐには彼に傅き、媚びへつらってその体を捧げるのです」
「っく。いっそ殺せ」
「何二人で盛り上ってんだ。ていうか、ドロマーさんも弁償の途中なのをお忘れなく」
「私は借金がなくてもメロディア君から離れるつもりはありませんが・・・具体的に何をすれば?」
「ふふふ」
メロディアは意味深な笑みを二人に向けた。彼には考えがあったのだ。というよりも騎士団から調査の仕事の依頼がなければ、今ごろは壊れた屋台の代替案としてやっていたであろう仕事を二人に手伝わせるつもりだった。
「ま、クラッシコ王国に帰ったら話しますよ。準備が必要なのでさっさと帰りましょう」
そうして三人はギタ村の郊外を目指し歩きだした。流石にこんな町中でドロマーが本来のドラゴンの姿に変身してしまってはパニックになりかねないからだ。
行きしなの道中で三人は屋台に立ち寄ってホットドックを買った。ギタ村は近隣の要所のため人の通りが多い。そして訪れる人が口々に誉めそやすのがソーセージと地ビールである。未成年のメロディアはもちろんアルコールを飲むことはできなかったので、二人にご馳走をしつつ、味の感想を聞いた。
過程はどうあれローナ家の問題を解決するに当たって二人の助力に感謝したいとも彼は思っていたのだ。
しかし公衆の面前でソーセージを卑猥に頬張ったドロマーには鉄拳も食らわしていたが。
やがて食事もほどほどにギタ村の門を抜け草原に出ると、ここにやって来た時と同じようにドロマーは竜に変じ、レイディアントは背中から信仰の翼を生やして大空へと舞い上がった。
ドロマーの背中から次第に小さくなっていくギタ村を見つつ、メロディアは帰宅してからの仕事に関して思いを巡らせていた。
色々なトラブルからひとまずは解放されたメロディアは屈託のない笑顔を後ろの二人に向けた。
「さて。ギタ村での仕事は終わりましたし、クラッシコ王国に戻りますか。」
「そうですね。騎士団に報告して報酬ももらいましょう」
「レイディアントさんを引き渡すつもりはないので、たぶん無理ですよ」
「あら、それは残念」
そんな二人の会話にレイディアントは割って入る。
「ちょっと待て。我はこれからも行動を共にしなければならぬのか?」
「え? 僕はそのつもりですけど」
「そうはいかん。我にはこの世の悪を裁き、理想の千年王国を築くという崇高なる使命が・・・」
「・・・なら僕から離れる前にお金を返してください」
「え?」
レイディアントは鳩が豆鉄砲を食ったような、正しくそんな顔で何とも気の抜けた声を出した。メロディアはそんな彼女に追い打ちをかけるよう、冷徹に言った。
「え? じゃないですよ。そもそも今回の料理人として仕事を引き受けた経緯はレイディアントさんがホテルの一室をメチャクチャにしたからですよ。そしてその修繕費は僕がローナ家に料理を作ったその報酬で賄っています。とどのつまり、あなたは僕に借金をしているということです」
「あ、う」
「それとも借金を踏み倒すのは悪ではないんですか?」
「そ、そんな訳なかろう!」
レイディアントはムキになって答えた。それを見て、メロディアはほくそ笑みを浮かべながら言った。
「だったらお金を返すまでは僕の側にいてもらいます」
「し、承知した。しかし問題がある」
「なんですか?」
「今の我には金銭を稼ぐ手だてがない・・・」
シュンとした態度でレイディアントは申し訳なさそうに呟く。曲がったことや不正に機敏な彼女は借金というものに心底負い目を感じているようだった。
◇
そんな顔をさせるのはメロディアとしても不本意だったので、すぐに自分の本意を打ち明ける。
「大丈夫ですよ。レイディアントさんの働き口はちゃんと考えていますから」
「本当か? いったい何を?」
そう尋ねるレイディアントに向かって、ドロマーはいやらしい笑みを浮かべてサキュバス特有の淫気と共に言葉を吐き出す。
「愚問ですね、レイディアント。メロディア君は男、あなたは女。借金なんて汚名を雪ぐには彼に傅き、媚びへつらってその体を捧げるのです」
「っく。いっそ殺せ」
「何二人で盛り上ってんだ。ていうか、ドロマーさんも弁償の途中なのをお忘れなく」
「私は借金がなくてもメロディア君から離れるつもりはありませんが・・・具体的に何をすれば?」
「ふふふ」
メロディアは意味深な笑みを二人に向けた。彼には考えがあったのだ。というよりも騎士団から調査の仕事の依頼がなければ、今ごろは壊れた屋台の代替案としてやっていたであろう仕事を二人に手伝わせるつもりだった。
「ま、クラッシコ王国に帰ったら話しますよ。準備が必要なのでさっさと帰りましょう」
そうして三人はギタ村の郊外を目指し歩きだした。流石にこんな町中でドロマーが本来のドラゴンの姿に変身してしまってはパニックになりかねないからだ。
行きしなの道中で三人は屋台に立ち寄ってホットドックを買った。ギタ村は近隣の要所のため人の通りが多い。そして訪れる人が口々に誉めそやすのがソーセージと地ビールである。未成年のメロディアはもちろんアルコールを飲むことはできなかったので、二人にご馳走をしつつ、味の感想を聞いた。
過程はどうあれローナ家の問題を解決するに当たって二人の助力に感謝したいとも彼は思っていたのだ。
しかし公衆の面前でソーセージを卑猥に頬張ったドロマーには鉄拳も食らわしていたが。
やがて食事もほどほどにギタ村の門を抜け草原に出ると、ここにやって来た時と同じようにドロマーは竜に変じ、レイディアントは背中から信仰の翼を生やして大空へと舞い上がった。
ドロマーの背中から次第に小さくなっていくギタ村を見つつ、メロディアは帰宅してからの仕事に関して思いを巡らせていた。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる