魔王を倒した勇者の息子に復讐をする悪堕ちヒロイン達

音喜多子平

文字の大きさ
上 下
69 / 163
閑話 メロディアの仕事

3-9

しおりを挟む

 促されるままに座った子供たちはメロディアに言われるがままにシャーベットを口にした。すると、その途端に不満や憤りに曇っていた顔が晴れ晴れとしたものになっていく。

「う、旨い」
「ええ。本当にいいお味のシャーベット」
「果物の甘酸っぱさがそのまま活かされていて、それがシャーベットの冷たさと相まって実に爽やかな味わいですな」
「かなりの仕事のできる料理人ですよ、これを作ったのは」
「ありがとうございます」

 先ほどの激高ぶりが嘘のように五人の子供たちは落ち着きを取り戻した。その様子にヤタムは驚きを隠せない様子だ。

 こうして落ち着きを取り戻した彼らを見ると、子供たちはなるほど貴族の名に相応しい品格があるように思える。しかし並んだからこそヒカサイマの若さがやけに際立っている。彼を除いた息子らは子供と言っても三、四十代の風格だ。当主のシャニスが70歳であることを考えれば彼らの年齢はむしろ常識的な範疇だ。やはりヒカサイマだけが兄弟姉妹の中で極端に若い。

(まあ、考察は後でいいか。まずはこの場を収めてしまわないと…)

 そしてメロディアは乞うように言った。

「実は明日の料理の感動を味わって頂きたくシャニス様にお子様方を離れにお通しになりませぬようお願いいたしました。食に通じているローナ家の皆さまは例え料理を見ずとも食材や香りでどんなものが出てくるのか簡単にお分かりになるでしょう?」
「ま、まあ。ローナ家の名に恥じぬくらいのものは一通りな」

 などと全員が目線を逸らしながらも見栄を張るように言う。メロディアはほくそ笑みそうなのを堪えて言葉を続ける。

「ですので食通の皆様には、なるだけどんな料理を出すかを悟られたくないのです。一介の料理人風情の我がままですが、どうかお許しください」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三十歳、アレだと魔法使いになれるはずが、異世界転生したら"イケメンエルフ"になりました。

にのまえ
ファンタジー
フツメンの俺は誕生日を迎え三十となったとき、事故にあい、異世界に転生してエルフに生まれ変わった。 やった! 両親は美男美女! 魔法、イケメン、長寿、森の精霊と呼ばれるエルフ。 幼少期、森の中で幸せに暮らしていたのだが……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...