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堕ちた守護天使
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しおりを挟むそして何とかこの妙な空気を払拭したかったメロディアは無理に話題を広げてしまった。
「け、けど。父さんは分からなくもないですが、年下の僕にまで父性を感じるものですか?」
「…いや今まであったどの男よりも父性を感じている」
「え?」
「どうも我のこの悪癖によって感じる父性や母性は相手の力に反応しているらしい。勿論敵意がある者には醜態を晒すことはないが…」
「要約すると強い味方に甘えてしまうと?」
「簡単に言うとそうだな。敵意がないのであれば味方に限らぬが…」
するとレイディアントはギロリと鋭い目つきでメロディアを睨みつけた。そしてギュッと体を強張らせた上に歯を食いしばって何かを堪えている。一瞬、トイレを我慢しているのかと思った。
「あ。ひょっとして甘えそうなの堪えてます?」
「そうだ!」
かつてこんな恥ずかしい肯定があっただろうか?
レイディアントは怒りにも似た声で叫ぶ。
「我は貴様を殺そうとしたんだぞ!? 何故敵意を持たない!!?」
「いや、アレはもう済んだことですし。ギタ村であった事には同情していますし」
「優しくするな! 甘えてしまうだろう!」
「す、すみません」
事情は分かるけど、なんだか理不尽だとメロディアは首を傾げる。
「頼む。もう放っておいてくれ! 甘えている間も自我は残っているんだ。この歳で幼子のように甘えてしまうのがどれだけ恥辱に塗れているか想像できるだろう!?」
「分かりますけど放って置いたら、また悪人を見るや否や殺しにかかるでしょう?」
「当たり前だ! 悪は許さぬ」
「…」
そうなるとメロディアは彼女を放っておくことなどできはしない。レイディアントの振りかざす正義は完全に暴走している。たとえ極悪人と言えど一方的に殺される事などは看過できない。
ともすれば少々面倒くさいことになるのは覚悟の上、レイディアントには自分の傍にいてもらう他ない。
メロディアは立ち上がり、レイディアントに向かって両手を広げた。
「おいで」
「!」
すると正面にいたレイディアントは聖化し、背中から翼を出した。そして机を飛び越えて一直線にメロディアの胸の中に飛び込む。そして甘々の声を出した。
「ダディ♡」
文字通り子供と大人の体格差があるので、レイディアントは跪いてようやくメロディアの胸に顔を埋められる。
そしてメロディアは彼女の頭を優しくなでながら、これからの事を思う。すると何故か重々しいため息が出てしまった。
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