上 下
60 / 163
堕ちた守護天使

2-37

しおりを挟む

 そして何とかこの妙な空気を払拭したかったメロディアは無理に話題を広げてしまった。

「け、けど。父さんは分からなくもないですが、年下の僕にまで父性を感じるものですか?」
「…いや今まであったどの男よりも父性を感じている」
「え?」
「どうも我のこの悪癖によって感じる父性や母性は相手の力に反応しているらしい。勿論敵意がある者には醜態を晒すことはないが…」
「要約すると強い味方に甘えてしまうと?」
「簡単に言うとそうだな。敵意がないのであれば味方に限らぬが…」

 するとレイディアントはギロリと鋭い目つきでメロディアを睨みつけた。そしてギュッと体を強張らせた上に歯を食いしばって何かを堪えている。一瞬、トイレを我慢しているのかと思った。

「あ。ひょっとして甘えそうなの堪えてます?」
「そうだ!」

 かつてこんな恥ずかしい肯定があっただろうか?

 レイディアントは怒りにも似た声で叫ぶ。

「我は貴様を殺そうとしたんだぞ!? 何故敵意を持たない!!?」
「いや、アレはもう済んだことですし。ギタ村であった事には同情していますし」
「優しくするな! 甘えてしまうだろう!」
「す、すみません」

 事情は分かるけど、なんだか理不尽だとメロディアは首を傾げる。

「頼む。もう放っておいてくれ! 甘えている間も自我は残っているんだ。この歳で幼子のように甘えてしまうのがどれだけ恥辱に塗れているか想像できるだろう!?」
「分かりますけど放って置いたら、また悪人を見るや否や殺しにかかるでしょう?」
「当たり前だ! 悪は許さぬ」
「…」

 そうなるとメロディアは彼女を放っておくことなどできはしない。レイディアントの振りかざす正義は完全に暴走している。たとえ極悪人と言えど一方的に殺される事などは看過できない。

 ともすれば少々面倒くさいことになるのは覚悟の上、レイディアントには自分の傍にいてもらう他ない。

 メロディアは立ち上がり、レイディアントに向かって両手を広げた。

「おいで」
「!」

 すると正面にいたレイディアントは聖化し、背中から翼を出した。そして机を飛び越えて一直線にメロディアの胸の中に飛び込む。そして甘々の声を出した。

「ダディ♡」

 文字通り子供と大人の体格差があるので、レイディアントは跪いてようやくメロディアの胸に顔を埋められる。

 そしてメロディアは彼女の頭を優しくなでながら、これからの事を思う。すると何故か重々しいため息が出てしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...