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堕ちた守護天使
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しおりを挟む「レイディアントさん、大丈夫ですか?」
メロディアはすぐさま花の香を部屋に充満させる魔法を唱えた。気休めにしかならないかもしれないが、多少なり鎮静鎮痛の効果があるはずだ。
起きたレイディアントは夢か現かも定かではない瞳でメロディアを見ると、怯えながら後ずさった。
「もうやめて…許して…」
「…っ」
その様子を見て彼女がどんな夢にうなされていたのかを理解した。するとメロディアは考えるよりも早く彼女に近づいてそっと抱き寄せていたのだった。
「ひぃっ」
「レイディアントさん、大丈夫ですよ。落ち着いて」
メロディアはとにかくレイディアントを落ち着かせようと必死だ。何度も何度も優しい言葉を投げかけ、抱きしめたり、頭を撫でてやったりしていた。
やがてレイディアントは荒くなっていた呼吸を徐々に鎮め、そして蚊の鳴くような声で一言言った。
「セラ先生…」
そう呼ばれたメロディアはハッとした。彼女が口にしたセラという人物もまた彼女と同じくらいに著名な人物だったからだ。
修道士・セラ。
言わずと知れたキャント国の神父にして守護天使レイディアントの養父に当たる人物だ。いや、養父という言い方は適切ではないのかも知れない。孤児であったレイディアントが同じく身寄りのない子供たちと共に過ごした孤児院があり、セラはその施設の院長であった。
決して教会内で高名であった訳ではないが幼少の頃よりレイディアントへ基礎的な教養や信仰の何たるかを説いたという。
彼女の伝記には必ず登場し、かつての彼女も今の自分があるのはセラ先生あってのことと何度も口にしていたと伝えられている。
そんな人物の名を呼んだのは、それほどまでに彼女の心は摩耗しているという何よりの証だった。
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