35 / 163
堕ちた守護天使
2‐14
しおりを挟む
メロディアはあえて意味深に言ってみたのだが、ドロマーは察しが付いたようで別段テンションを変えることもなく淡々と持論を語った。
「戦争が勃発したのでしょうね。領土、食糧、宗教、政治と理由を考え始めたらキリがありません」
「流石ですね」
「その事は私達の時代にも危惧されていました。メロディア君と会う前にもこの世界の情勢は多少見聞きしましたから」
「魔王を倒した勇者という事でどの国も喉から手が出るほど父を欲していました。その立場を利用して自らが交渉役と交渉材料を兼ねてあちこちを周り、大規模な戦争の勃発を食い止めている…それが父が家にいない理由です。あと母さんにこの世界を見せてあげたいという理由もあるみたいですけどね」
そこまで言い切ったところでメロディアは嫌な気配を感じ取った。
実をいうとギタ村を訪れてる前から危惧してた事があった。そしてその嫌な予感がどうやら本当に怒ってしまったらしかった。そう思うと自然とメロディアの口から大きなため息が漏れた。
そして先ほどの話を掘り返す。
「ドロマーさんの指摘がムジカ大陸の全体的な問題です。それに加えて局地的な問題もあるんです」
「というと?」
「魔王軍と戦っていた頃は貴族や町村の自警団たちは魔物と戦うために多くの武器や腕利きを揃えていました。しかしご存じの通り魔物は勢力を大きく失っています。そのせいで武力と腕力を良からぬやり方で使って治安を乱す輩が増えたんです」
「ああ…後ろからついてきているような方々の事ですね」
流石は歴戦の竜騎士だとメロディアは思った。ふざけたことばかり言っているから忘れてしまいそうになるが彼女の実力は本物だ。それがちょっぴりだけ嬉しくもあった。
「けど世界を救った勇者の息子にちょっかいをかけますか?」
「僕は所詮勇者の息子でしかありません。クラッシコ王国を出れば親の七光りなんて消えかけの蝋燭よりも頼りないですよ」
そう言い終えた瞬間、二人は乱暴に呼び止められた。
振り向くと絵に描いたような腕に覚えのありそうなやさぐれた剣士と、映画に出てきそうなくらい分かりやすい悪人面の巨漢が立っていた。
「戦争が勃発したのでしょうね。領土、食糧、宗教、政治と理由を考え始めたらキリがありません」
「流石ですね」
「その事は私達の時代にも危惧されていました。メロディア君と会う前にもこの世界の情勢は多少見聞きしましたから」
「魔王を倒した勇者という事でどの国も喉から手が出るほど父を欲していました。その立場を利用して自らが交渉役と交渉材料を兼ねてあちこちを周り、大規模な戦争の勃発を食い止めている…それが父が家にいない理由です。あと母さんにこの世界を見せてあげたいという理由もあるみたいですけどね」
そこまで言い切ったところでメロディアは嫌な気配を感じ取った。
実をいうとギタ村を訪れてる前から危惧してた事があった。そしてその嫌な予感がどうやら本当に怒ってしまったらしかった。そう思うと自然とメロディアの口から大きなため息が漏れた。
そして先ほどの話を掘り返す。
「ドロマーさんの指摘がムジカ大陸の全体的な問題です。それに加えて局地的な問題もあるんです」
「というと?」
「魔王軍と戦っていた頃は貴族や町村の自警団たちは魔物と戦うために多くの武器や腕利きを揃えていました。しかしご存じの通り魔物は勢力を大きく失っています。そのせいで武力と腕力を良からぬやり方で使って治安を乱す輩が増えたんです」
「ああ…後ろからついてきているような方々の事ですね」
流石は歴戦の竜騎士だとメロディアは思った。ふざけたことばかり言っているから忘れてしまいそうになるが彼女の実力は本物だ。それがちょっぴりだけ嬉しくもあった。
「けど世界を救った勇者の息子にちょっかいをかけますか?」
「僕は所詮勇者の息子でしかありません。クラッシコ王国を出れば親の七光りなんて消えかけの蝋燭よりも頼りないですよ」
そう言い終えた瞬間、二人は乱暴に呼び止められた。
振り向くと絵に描いたような腕に覚えのありそうなやさぐれた剣士と、映画に出てきそうなくらい分かりやすい悪人面の巨漢が立っていた。
19
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説


元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

元天才貴族、今やリモートで最強冒険者!
しらかめこう
ファンタジー
魔法技術が発展した異世界。
そんな世界にあるシャルトルーズ王国という国に冒険者ギルドがあった。
強者ぞろいの冒険者が数多く所属するそのギルドで現在唯一、最高ランクであるSSランクに到達している冒険者がいた。
───彼の名は「オルタナ」
漆黒のコートに仮面をつけた謎多き冒険者である。彼の素顔を見た者は誰もおらず、どういった人物なのかも知る者は少ない。
だがしかし彼は誰もが認める圧倒的な力を有しており、冒険者になって僅か4年で勇者や英雄レベルのSSランクに到達していた。
そんな彼だが、実は・・・
『前世の知識を持っている元貴族だった?!」
とある事情で貴族の地位を失い、母親とともに命を狙われることとなった彼。そんな彼は生活費と魔法の研究開発資金を稼ぐため冒険者をしようとするが、自分の正体が周囲に知られてはいけないので自身で開発した特殊な遠隔操作が出来るゴーレムを使って自宅からリモートで冒険者をすることに!
そんな最強リモート冒険者が行く、異世界でのリモート冒険物語!!
毎日20時30分更新予定です!!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!


凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる