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堕ちた竜騎士
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「うぅ…」
翌日。
ドロマーは陽の光と小鳥のさえずり、そして森の香の乗った微風とによって起こされた。
言葉だけならさぞ爽快な目覚めが訪れそうなものだが、彼女の気分は最悪だった。叩き付けられた厳しい現実が未だに攻め立ててくる。いっそ夢だったと現実逃避したかったが、喉にある逆鱗に残る鈍い痛みがそれも許してくれなかった。
「あ。起きました?」
メロディアは瓦礫や壊れた家財道具を片付ける作業を一旦やめた。つかつかと歩み寄ってくる彼を見て、ドロマーは不安に駆られ自分に掛けられている薄いシーツをギュッと握りしめた。
「具合はどうですか? 朝ご飯ありますけど食べられます?」
「え?」
ドロマーはメロディアの年相応な雰囲気に戸惑った。昨日見せた勇者と魔王から受け継いだであろう威圧感が嘘のように消えている。すると声の代わりに彼女のお腹が返事をした。それを聞いてメロディアは申し訳なさそうに顔を背けた。
「顔色もいいし、問題なさそうですね」
「ど、どうして助けてくれたのですか?」
「あなたがお腹を空かしているからです」
「はい?」
それはメロディアの信念であったが、それを知らないドロマーにとっては意味不明な理由にしかならない。
「僕の個人的な哲学です。お腹が減っている時はそりゃ誰だって盗んだり殺したりしてでも食べ物を探します。それは生き物として当然の思考です。だから僕はまずあなたにお腹いっぱいになってもらいたい。満たされている時に悪い事を考える奴が本当の悪人だと思うんですよ。だから満腹になって冷静に判断しましょう。お互いにね」
「…」
ドロマーは言葉が出てこなかった。何かを言おうとしたのだが、メロディアはすぐに朝食を取りに青空が天井の台所に行ってしまった。
翌日。
ドロマーは陽の光と小鳥のさえずり、そして森の香の乗った微風とによって起こされた。
言葉だけならさぞ爽快な目覚めが訪れそうなものだが、彼女の気分は最悪だった。叩き付けられた厳しい現実が未だに攻め立ててくる。いっそ夢だったと現実逃避したかったが、喉にある逆鱗に残る鈍い痛みがそれも許してくれなかった。
「あ。起きました?」
メロディアは瓦礫や壊れた家財道具を片付ける作業を一旦やめた。つかつかと歩み寄ってくる彼を見て、ドロマーは不安に駆られ自分に掛けられている薄いシーツをギュッと握りしめた。
「具合はどうですか? 朝ご飯ありますけど食べられます?」
「え?」
ドロマーはメロディアの年相応な雰囲気に戸惑った。昨日見せた勇者と魔王から受け継いだであろう威圧感が嘘のように消えている。すると声の代わりに彼女のお腹が返事をした。それを聞いてメロディアは申し訳なさそうに顔を背けた。
「顔色もいいし、問題なさそうですね」
「ど、どうして助けてくれたのですか?」
「あなたがお腹を空かしているからです」
「はい?」
それはメロディアの信念であったが、それを知らないドロマーにとっては意味不明な理由にしかならない。
「僕の個人的な哲学です。お腹が減っている時はそりゃ誰だって盗んだり殺したりしてでも食べ物を探します。それは生き物として当然の思考です。だから僕はまずあなたにお腹いっぱいになってもらいたい。満たされている時に悪い事を考える奴が本当の悪人だと思うんですよ。だから満腹になって冷静に判断しましょう。お互いにね」
「…」
ドロマーは言葉が出てこなかった。何かを言おうとしたのだが、メロディアはすぐに朝食を取りに青空が天井の台所に行ってしまった。
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