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ご令嬢のストーカーが魔術アカデミーに入学します
7-2
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「そうですね。仰る通りです…でも私にも二つほどメリットがあるんですよ」
「例えば?」
「この学校を受験する理由はどんなのがあると思います?」
「え? 魔法の勉強をしたいんじゃないの?」
「そういう方もおりますね、実力を伸ばすにはもってこいの場所ですし。他にはブランドでしょうか、この学校を卒業したとなれば一つの箔がつきます…けどそれは主に魔術師と呼ばれる人間の都合です。私達悪魔には別の理由もあるんです」
「…なんだろ?」
デキマは「分かりますか?」と、波路に委ねてくる。そうやって相手から自分に興味を持たせる話術だったのだが、波路は容易く術中に嵌りデキマから目を離せなくなっていた。
そして、答えあぐねいている波路に向かってデキマは官能的な声で言った。
「出会いですよ」
「出会いって…出会いか?」
波路はアホ丸出しの問いかけを返す。
「ええ。悪魔は依然として階級社会です。欲望に任せてより地位や立場の向上を目指すのも悪魔の美徳ですが、自分を遺憾なく使役してくれる主に出会い、従僕するというのも美徳と考える悪魔も多いんです。いえ、むしろ大半の悪魔は何かに仕えることを良しとします。特に人間には」
「そうして仕えた主人を堕落させるって寸法か」
波路の指摘にデキマは初めて笑顔を見せ、くすくすと笑った。
「その通りですけど、それが全てではありません」
「どういうこっちゃ」
「何か大事を為すような人間の傍にいるのも悪魔の好むところです。誰かが笑う陰には誰かが泣く姿がある。それを見るのも楽しいものですから」
「趣味悪いなぁ」
「そんなに褒めないでください」
それが皮肉だという事は波路にも分かった。
悪魔には悪魔の考えや価値観がある。そして彼女がそんな野心を叶えるために自分を選んでくれたことに悪い気はしない。けれど二つ返事ができるわけもない。
波路はデキマが二つあると言っていたメリットのもう一つを聞くことにした。
「まあ仮に俺がアンタの主人になったとして、目的の一つが達成できるのは分かった。で、もう一つの理由は?」
「それは単純に保身です」
「保身?」
デキマはコクリと頷いて、先ほどよりも強い視線を送った。
「寄らば大樹の影といいますでしょう? ナミチ様の実力は今年の新入生どころか私が会ったことのある誰よりも強大。従僕して庇護を賜ろうとするのは自然な発想です。正直、あなたが最下位の成績とは信じられません。何か事情があっての事でしょう。違いますか?」
「…」
見抜かれている。そう思った刹那、波路はうな垂れていた背筋をピンっと伸ばした。コォムバッチ校長に口止めをされているから、何もいう事は出来ないが、波路の態度と表情が何よりも確かな事を語っていた。
「尤も、私もあの時に助けられていなかったら、あなたには目もくれなかったかもしれません。そういう意味では幸運でした」
「随分と俺を買ってくれてるみたいだね」
「当然です」
「けど、悪いな。アンタを従者にする訳にはいかない」
デキマの考えは分かった。嘘や裏があるとも思えない。この件に関してだけは彼女は純粋だろうと思った。
しかし波路はその申し出を断る。
デキマはそこで初めて抵抗の色を見せたのだった。
「…私ではご不満ですか?」
「最初に会った時に話しただろう? 探している人がいるって。それが今回首席で合格したアヤコ・サンモトさんの事だ。俺はアヤコさんを追って日本から来た」
「無事に会えたようで何よりです」
「それは…ありがとう。で、俺はあの人を守るために、それこそあの人の従事したいと思っている。今のアンタと同じようにな」
「…申し訳ありませんが、それは私の申し出を断る理由になりますか? あなたが従いたいという方がいるのであれば、私もその方に従います」
「それはアヤコさんに決めてもらいたいんだ。あの人に認めてもらう前に、俺が女を侍らせていたんじゃ印象が悪い」
波路の本意はそこにあった。彼にとって最優先されるべきは亜夜子のことなのだ。恋愛感情でこそないが、それでも男女の関係だと波路は解釈している。亜夜子の許しなくして、彼女よりも自分が女性に近づいてはならないと自分なりのけじめとして考えていたのだ。
てっきり笑うなり、罵倒するなり、呆れるなりしてデキマは少なくとも一回は引くと思っていた。しかし彼女はキョトンとしたポーカーフェイスのままに、波路に聞き返しす。
「では、傍に置くのが男の悪魔であれば良いのですか?」
「男の悪魔だったら…まあいいだろうけど。要するに舎弟みたいなものだし」
そういうとデキマは立ち上がり、深々とお辞儀をしながら言った。
「では契約成立ですね。従者として誠心誠意お仕え致します」
「え? いや、だからデキマさんとは…」
強硬手段にでも出たかと勘ぐった彼女に対して、波路はもう一度断りを入れようとして遮られた。
デキマは食い気味で言う。
「私は男なので問題ありません」
「…うそぉ」
信じられない、という表情を惜しげもなく晒しつつ波路はデキマの事を見た。
セミロングボブに切り揃えられた赤髪に可愛らしいカチューシャ。豊満とは言えずとも胸は多少膨らんでいるし、腰つきや脚線はどう見ても女だ。ついでに後ろから伸びる如何にも悪魔らしい尻尾がその可愛らしさを演出している。
これは流石に口からでまかせだろうと思った。が、それを感じ取ったデキマは波路の手を取ると、自分の股間にそれを当てがい、一番分かりやすく確実な方法で証明した。
「お確かめくださいまし」
「あ、付いてる」
「例えば?」
「この学校を受験する理由はどんなのがあると思います?」
「え? 魔法の勉強をしたいんじゃないの?」
「そういう方もおりますね、実力を伸ばすにはもってこいの場所ですし。他にはブランドでしょうか、この学校を卒業したとなれば一つの箔がつきます…けどそれは主に魔術師と呼ばれる人間の都合です。私達悪魔には別の理由もあるんです」
「…なんだろ?」
デキマは「分かりますか?」と、波路に委ねてくる。そうやって相手から自分に興味を持たせる話術だったのだが、波路は容易く術中に嵌りデキマから目を離せなくなっていた。
そして、答えあぐねいている波路に向かってデキマは官能的な声で言った。
「出会いですよ」
「出会いって…出会いか?」
波路はアホ丸出しの問いかけを返す。
「ええ。悪魔は依然として階級社会です。欲望に任せてより地位や立場の向上を目指すのも悪魔の美徳ですが、自分を遺憾なく使役してくれる主に出会い、従僕するというのも美徳と考える悪魔も多いんです。いえ、むしろ大半の悪魔は何かに仕えることを良しとします。特に人間には」
「そうして仕えた主人を堕落させるって寸法か」
波路の指摘にデキマは初めて笑顔を見せ、くすくすと笑った。
「その通りですけど、それが全てではありません」
「どういうこっちゃ」
「何か大事を為すような人間の傍にいるのも悪魔の好むところです。誰かが笑う陰には誰かが泣く姿がある。それを見るのも楽しいものですから」
「趣味悪いなぁ」
「そんなに褒めないでください」
それが皮肉だという事は波路にも分かった。
悪魔には悪魔の考えや価値観がある。そして彼女がそんな野心を叶えるために自分を選んでくれたことに悪い気はしない。けれど二つ返事ができるわけもない。
波路はデキマが二つあると言っていたメリットのもう一つを聞くことにした。
「まあ仮に俺がアンタの主人になったとして、目的の一つが達成できるのは分かった。で、もう一つの理由は?」
「それは単純に保身です」
「保身?」
デキマはコクリと頷いて、先ほどよりも強い視線を送った。
「寄らば大樹の影といいますでしょう? ナミチ様の実力は今年の新入生どころか私が会ったことのある誰よりも強大。従僕して庇護を賜ろうとするのは自然な発想です。正直、あなたが最下位の成績とは信じられません。何か事情があっての事でしょう。違いますか?」
「…」
見抜かれている。そう思った刹那、波路はうな垂れていた背筋をピンっと伸ばした。コォムバッチ校長に口止めをされているから、何もいう事は出来ないが、波路の態度と表情が何よりも確かな事を語っていた。
「尤も、私もあの時に助けられていなかったら、あなたには目もくれなかったかもしれません。そういう意味では幸運でした」
「随分と俺を買ってくれてるみたいだね」
「当然です」
「けど、悪いな。アンタを従者にする訳にはいかない」
デキマの考えは分かった。嘘や裏があるとも思えない。この件に関してだけは彼女は純粋だろうと思った。
しかし波路はその申し出を断る。
デキマはそこで初めて抵抗の色を見せたのだった。
「…私ではご不満ですか?」
「最初に会った時に話しただろう? 探している人がいるって。それが今回首席で合格したアヤコ・サンモトさんの事だ。俺はアヤコさんを追って日本から来た」
「無事に会えたようで何よりです」
「それは…ありがとう。で、俺はあの人を守るために、それこそあの人の従事したいと思っている。今のアンタと同じようにな」
「…申し訳ありませんが、それは私の申し出を断る理由になりますか? あなたが従いたいという方がいるのであれば、私もその方に従います」
「それはアヤコさんに決めてもらいたいんだ。あの人に認めてもらう前に、俺が女を侍らせていたんじゃ印象が悪い」
波路の本意はそこにあった。彼にとって最優先されるべきは亜夜子のことなのだ。恋愛感情でこそないが、それでも男女の関係だと波路は解釈している。亜夜子の許しなくして、彼女よりも自分が女性に近づいてはならないと自分なりのけじめとして考えていたのだ。
てっきり笑うなり、罵倒するなり、呆れるなりしてデキマは少なくとも一回は引くと思っていた。しかし彼女はキョトンとしたポーカーフェイスのままに、波路に聞き返しす。
「では、傍に置くのが男の悪魔であれば良いのですか?」
「男の悪魔だったら…まあいいだろうけど。要するに舎弟みたいなものだし」
そういうとデキマは立ち上がり、深々とお辞儀をしながら言った。
「では契約成立ですね。従者として誠心誠意お仕え致します」
「え? いや、だからデキマさんとは…」
強硬手段にでも出たかと勘ぐった彼女に対して、波路はもう一度断りを入れようとして遮られた。
デキマは食い気味で言う。
「私は男なので問題ありません」
「…うそぉ」
信じられない、という表情を惜しげもなく晒しつつ波路はデキマの事を見た。
セミロングボブに切り揃えられた赤髪に可愛らしいカチューシャ。豊満とは言えずとも胸は多少膨らんでいるし、腰つきや脚線はどう見ても女だ。ついでに後ろから伸びる如何にも悪魔らしい尻尾がその可愛らしさを演出している。
これは流石に口からでまかせだろうと思った。が、それを感じ取ったデキマは波路の手を取ると、自分の股間にそれを当てがい、一番分かりやすく確実な方法で証明した。
「お確かめくださいまし」
「あ、付いてる」
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