上 下
17 / 17

報酬

しおりを挟む
「はい、これが今回の報酬になります」

 シーラさんからダンジョン調査の報酬を受け取り、それを5等分に分ける。
 ダンジョンの宝箱に入っていた腕輪に関しては、現在鑑定士がギルド内にいないので後日鑑定に来てほしいと言われた。
 この世界の装備は見た目と効果が一致していないらしく、同じ見た目でも効果は物によって違うらしい。

「鑑定は後日にするとして、この腕輪はどうする?」

 ダンジョンの宝箱から取り出した腕輪をテーブルに置く。

「俺たちはいらねぇからカシュがもらってくれ。カシュのおかげで調査も捗ったし、初依頼達成の祝いとでも思ってくれ」
「やったあああああああ!!!!!」

 肩に乗っているアトが急に叫んだ。
 耳元で急に叫ばれて体がビクっと反応してしまう。

「どうした?」

 アトの声にびっくりした俺を見たバートンが不思議そうな顔をしている。

「な、なんでもない……ありがたく受け取っておくよ」
「え! ずるい! 私も欲しい!」

 一人厄介なやつがいた。
 どうやらエリーも腕輪が欲しいらしい。

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 俺はみんなから少し離れる。

「おいアト、この腕輪って何か効果あるのか?」
「あるわよ! その腕輪は魔力吸収の効果がついてるわ。腕輪をつけた手で対象に触れると、その対象の魔力を吸い取ることができるのよ。売れば金貨100枚ぐらいになるわ!」

 それで叫んでいたのか。
 というか金貨100枚って……。
 武具屋で装備見てた時だって、一番高いやつで金貨3枚ぐらいだったぞ。

「絶対エリーには渡せないわ。死守しなさい! 死守! てか、私に頂戴!」
「わかった。お前にあげるかどうかは置いておくとして、とりあえずエリーに渡さないように力を貸してくれ」

 俺とアトは目を合わせて頷き合った。

「わるいわるい、お待たせ」  
「なにしてるのよ! 早く腕輪頂戴!」

 エリーが両手を差し出してくる。
 もう自分がもらえるものだと思ってるな。

「ここは一つ勝負と行こうぜ」
「勝負?」
「今からこの銅貨を上に弾いて、わからないようにどっちかの手で掴むから、どっちの手で掴んだかを当ててくれ」

 そう言いながら、ポケットから銅貨を取り出す。

「銅貨を掴んだ手を当てられたらエリーの勝ち。はずれだったら俺の勝ち。わかりやすいだろ?」
「わかった、それでいいよ!」

 親指で銅貨を弾き、落ちてきたところをエリーにわからないように手で掴む。

「さぁ、どっちだ?」

 エリーは俺の左右の手をじーっと見つめ悩んでいる。
 10秒ほど悩んでいると「よしっ!」と小さく呟いた。

「こっちにするわ!」

 俺はエリーが指を差した左手を開いて見せる。
 手の中には銅貨はなく空っぽだった。

「どうやら俺の勝ちだな。腕輪はもらっとくぞ」
「えー! 絶対こっちだと思ったのにー!」
「勝ちは勝ちだからな」

 エリーは悔しそうだったが、勝負とあっては引き下がるしかない様子だった。
 悪いなエリー。魔力吸収アイテムって言ったら、魔法を使う人間にとっては必需品だ。
 特に俺みたいな魔力量がほとんどないやつには、夢のようなアイテムだからな。
 俺は下に落とさないように左手の中にある銅貨を握り込む。
 アトに透明化してもらった銅貨を。
 
「後であたしにも分け前よこしなさいよね!」

 腕輪に関しては売る気がないので、アトの分け前に関しては何か考えないといけないかもしれない。

「よし、報酬の分配も全て終わったことだし、ここいらで解散だな」
「お前らとパーティー組めて楽しかったぜ! また何かあればよろしくな」
「2人とも仲良くしなきゃだめよ。またね」

 3人とはここで別れることになった。

「みんなありがと、また何かあればよろしく!」
「またねー、今度までには絶対魔法使えるようにしとくから!」

 俺とエリーはギルドを後にした。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...