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初めての依頼
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「何か良い依頼ないかなー」
俺はギルドの掲示板とにらめっこをしている。
シーラさんから初めて稽古をつけてもらった時から1ヶ月ほど過ぎた。
装備も買って魔法も覚え少しだが剣も扱えるようになったので、初めての依頼を受けようとしているところだ。
シーラさんには薬草の知識をつけるため薬草採集をオススメされたが、その点に関してはアトに聞けばいいのでやんわりと断った。
出来れば魔物と戦ってみたいから討伐系の依頼の方がいいんだけど、1人で行くってのはどうなんだ?
「なになに、びびってるの?」
討伐系の依頼書を眺めていたらアトが横から話しかけてきた。
「びびってないわ!」
スライム退治にゴブリン退治……RPGゲーム的にはこの辺が初期の雑魚モンスターとして定番だけど、最近はスライムやゴブリンに弱いイメージがあんまりないんだよなー。
アトには虚勢を張ったが実のところはびびっている。
アンデッドベアの時は異世界に来たテンションと妙に懐かしく感じた親や幼馴染を守りたい一心で何か考えずに突っ込んだが……俺はアンデッドベアに引き裂かれた時の事を思い出して身震いした。
「良い依頼がないんだったら一緒にどうだ?」
突然、後ろから年配の冒険者に声を掛けられる。
アンデッドベア討伐の時に話した魔術師だった。
「どんな依頼なんですか?」
「この近くに突如ダンジョンが生成されたらしい。俺たちは今からそのダンジョンの調査に向かう」
男が親指で後ろの方を指している。
横から覗くと二人の若い男女がテーブルに座っていて、こちらに向かって手を振っていた。
詳しい内容を聞いたところ、このままダンジョンを放置すると町に被害が出る可能性があるのでダンジョンが危険かどうかを調査するのが目的で、ダンジョン内の魔物の種類、仕掛け、罠などの有無を確認して報告するという依頼内容だった。
可能であればダンジョンを攻略しても構わないとのこと。
その場合は特別報酬が支払われる。
ダンジョンの最奥に魔物がいて、その魔物を倒すとダンジョンは自然消滅するらしい。
「内容はわかりましたけど何で俺を? 冒険者になったばかりで戦闘も満足に出来ませんよ?」
正直誘われる理由が思い当たらない。
「一番の理由は冒険者でもないのに、アンデッドベアに突っ込んでいった度胸に惚れちまったってところかな。あとはアンデッドベアの弱点を知っていたほどの知識だ。他にも色々知ってるんだろ? 戦闘は俺たちに任せてくれればいい」
「戦闘には参加せず出てきた敵の弱点とかを教えるだけでいいってことですか?」
「基本はそれでいい。後は仕掛けを解く時に協力してくれ。戦闘は参加したければ参加すればいいさ」
自由に戦闘に参加していいなら危険も少ないし、仲間がいれば安心して戦えるな。
「目的は調査だから無理だと思ったらすぐに引き返す。どうだ?」
「その条件なら……お願いします!」
「そうと決まったら同じ冒険者同士、かたっくるしい口調はなしだ! よろしくな!」
「わかったよ。よろしく!」
簡単にお互いの自己紹介を済ませた。
俺に話しかけてきたのがバートン、後ろのテーブルに座っていた男性がサッカで、女性の方がリオという。
「ところでカシュ。その後ろにいる子も一緒に行くのか?」
バートンが何を言ってるのかわからず振り向いてみると、そこには自信満々な顔で仁王立ちしているエリーがいた。
「もちろん! 私も行くわ!」
「なんでここにエリーが……?」
「カシュが冒険者になったっておばさんから聞いたから、私もなったのよ! ほら!」
エリーが冒険者登録証を見せてくる。
そこには俺の冒険者登録証と同じく『E』の文字が大きく書かれていた。
そんな友達がやってたから、始めましたみたいなノリで始めるものなのか?
「冒険者になったからって、魔物と戦ったことがないようなやつを連れていけるわけないだろ!」
エリーとの記憶を思い出してみたが魔物と戦った記憶はない。
俺もほとんどないが今は自分の事は棚に上げておこう。
「私だって戦えるわよ! 魔法だって使えるし!」
魔法が使えるなんて初耳だな……。
「いや、それでも危ないことには変わりないだろ」
「いいじゃん! 私も連れてってよ」
「二人とも落ち着け」
全く引く気がない俺たちを見兼ねて、バートンが割って入ってくる。
「カシュ、お前だって似たようなもんだろ。連れて行ってあげてもいいじゃねぇか」
ぐっ……それを言われると強く出れない……。
「別にいいんじゃなーい? 他の冒険者と一緒に行くんだし。いざとなったら全力で逃げれば何とかなるわよ」
今まで黙って様子を見ていたアトが口を出してきた。
どうやら反対しているのは俺だけのようだ。
「わかったよ……。ただし、危ないと思ったすぐ引き返すからな」
俺はギルドの掲示板とにらめっこをしている。
シーラさんから初めて稽古をつけてもらった時から1ヶ月ほど過ぎた。
装備も買って魔法も覚え少しだが剣も扱えるようになったので、初めての依頼を受けようとしているところだ。
シーラさんには薬草の知識をつけるため薬草採集をオススメされたが、その点に関してはアトに聞けばいいのでやんわりと断った。
出来れば魔物と戦ってみたいから討伐系の依頼の方がいいんだけど、1人で行くってのはどうなんだ?
「なになに、びびってるの?」
討伐系の依頼書を眺めていたらアトが横から話しかけてきた。
「びびってないわ!」
スライム退治にゴブリン退治……RPGゲーム的にはこの辺が初期の雑魚モンスターとして定番だけど、最近はスライムやゴブリンに弱いイメージがあんまりないんだよなー。
アトには虚勢を張ったが実のところはびびっている。
アンデッドベアの時は異世界に来たテンションと妙に懐かしく感じた親や幼馴染を守りたい一心で何か考えずに突っ込んだが……俺はアンデッドベアに引き裂かれた時の事を思い出して身震いした。
「良い依頼がないんだったら一緒にどうだ?」
突然、後ろから年配の冒険者に声を掛けられる。
アンデッドベア討伐の時に話した魔術師だった。
「どんな依頼なんですか?」
「この近くに突如ダンジョンが生成されたらしい。俺たちは今からそのダンジョンの調査に向かう」
男が親指で後ろの方を指している。
横から覗くと二人の若い男女がテーブルに座っていて、こちらに向かって手を振っていた。
詳しい内容を聞いたところ、このままダンジョンを放置すると町に被害が出る可能性があるのでダンジョンが危険かどうかを調査するのが目的で、ダンジョン内の魔物の種類、仕掛け、罠などの有無を確認して報告するという依頼内容だった。
可能であればダンジョンを攻略しても構わないとのこと。
その場合は特別報酬が支払われる。
ダンジョンの最奥に魔物がいて、その魔物を倒すとダンジョンは自然消滅するらしい。
「内容はわかりましたけど何で俺を? 冒険者になったばかりで戦闘も満足に出来ませんよ?」
正直誘われる理由が思い当たらない。
「一番の理由は冒険者でもないのに、アンデッドベアに突っ込んでいった度胸に惚れちまったってところかな。あとはアンデッドベアの弱点を知っていたほどの知識だ。他にも色々知ってるんだろ? 戦闘は俺たちに任せてくれればいい」
「戦闘には参加せず出てきた敵の弱点とかを教えるだけでいいってことですか?」
「基本はそれでいい。後は仕掛けを解く時に協力してくれ。戦闘は参加したければ参加すればいいさ」
自由に戦闘に参加していいなら危険も少ないし、仲間がいれば安心して戦えるな。
「目的は調査だから無理だと思ったらすぐに引き返す。どうだ?」
「その条件なら……お願いします!」
「そうと決まったら同じ冒険者同士、かたっくるしい口調はなしだ! よろしくな!」
「わかったよ。よろしく!」
簡単にお互いの自己紹介を済ませた。
俺に話しかけてきたのがバートン、後ろのテーブルに座っていた男性がサッカで、女性の方がリオという。
「ところでカシュ。その後ろにいる子も一緒に行くのか?」
バートンが何を言ってるのかわからず振り向いてみると、そこには自信満々な顔で仁王立ちしているエリーがいた。
「もちろん! 私も行くわ!」
「なんでここにエリーが……?」
「カシュが冒険者になったっておばさんから聞いたから、私もなったのよ! ほら!」
エリーが冒険者登録証を見せてくる。
そこには俺の冒険者登録証と同じく『E』の文字が大きく書かれていた。
そんな友達がやってたから、始めましたみたいなノリで始めるものなのか?
「冒険者になったからって、魔物と戦ったことがないようなやつを連れていけるわけないだろ!」
エリーとの記憶を思い出してみたが魔物と戦った記憶はない。
俺もほとんどないが今は自分の事は棚に上げておこう。
「私だって戦えるわよ! 魔法だって使えるし!」
魔法が使えるなんて初耳だな……。
「いや、それでも危ないことには変わりないだろ」
「いいじゃん! 私も連れてってよ」
「二人とも落ち着け」
全く引く気がない俺たちを見兼ねて、バートンが割って入ってくる。
「カシュ、お前だって似たようなもんだろ。連れて行ってあげてもいいじゃねぇか」
ぐっ……それを言われると強く出れない……。
「別にいいんじゃなーい? 他の冒険者と一緒に行くんだし。いざとなったら全力で逃げれば何とかなるわよ」
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