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魔法の仕組み
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果ての見えない湖の上での月見は不思議な感覚だった。普段何気なく見ている月よりも大きく感じるし、一体ここはどこなのだろうか……恐らくジャックがそう設定したと思われるが。
「満月の光には、魔力を回復させる力があるんだそうだ。魔女の宴が夜に行われるのもそうした理由なんだとさ」
「そうは言っても、これはただの映像なんでしょう? いくら収納魔法でも、本物の月を持ってくるなんて無理なはずだわ」
何とも夢のない返答をしてしまったが、ジャックはきょとんとしていた。知識はあるが剣士だから収納魔法なんて聞いた事がなかったのか。
私はジョーカーから聞いたマジックバッグについての情報を伝える。
「ああ、魔法を知らないやつに説明する時の方便だよ。実際にそれで収納できてるんだから、問題はないしな」
「亜空間に収納するのは通常魔法じゃなかったって事? 実は魔法大系は四つだったとか」
「いや逆だ。すべての通常魔法の基礎は『空間魔法』の応用なんだが、使いこなせば何でもありだから悪用されればとんでもない事になる……だから用途に応じた魔法が職業別に細分化される形になっているんだ」
それを知っているジャック、貴方は何者なの?
私の疑問が読み取れたのか、ジャックは頬を掻いて答えた。
「俺のお袋がここで言う宮廷魔導師の家系でさ。魔術を学問として仕組みを学ばされるから、その受け売りだよ」
「宮廷魔導師の家系……旦那様と同じね。ジャックは何故冒険者に?」
この機にジャックの事が知りたいと思い、流れで尋ねてみる事にした。あまり突っ込んだ質問ははぐらかされるかもしれないが、そろそろ興味を持ってもおかしくない付き合いにはなっているだろう。
「そのお袋ってのが自由人でな? 兄貴と後継者争いをするのが面倒で家を飛び出したんだと。世界中を旅しながら、時々は魔道具職人に弟子入りしたり貴族の家庭教師をしてたんだけど、基本は冒険者やってたんだよ。恋人もコロコロ変わってて誰が父親なのかも分かりゃしない。
で、俺が十三の時にそろそろ独り立ちしろって冒険者ギルドの前に置いていかれて、それっきり」
「そ、そうなんだ……」
生まれからしてヘヴィーだった。気の毒に思ったけれど、ジャックとしては一人で生きていくための知識とコネをくれたのには感謝しているらしい。ただ母親と同じ職業にするのか迷いはあったのだそう。
「便宜上『魔術師』で登録してあったけど、実際は『オンミョージ』って東方の国固有の役職でさ。宮廷魔術師とは言ったけど国家公務員の一部署なんだよな」
「国家公務員? 貴族領にも役人がいるけれど、ああいう人たちなの?」
「それは地方公務員だな。とにかく俺にはお袋ほどの技量もなかったし、とりあえず最初は『占い師』で登録してたんだよ」
う、占い師……似合わな過ぎておかしい。笑っては失礼だと口元が引きつりそうになるのを我慢していたが、見咎めたジャックはムッと眉根を寄せる。
「ご、ごめんなさい……それで、どうして剣士に?」
「まあぶっちゃけて言えば、モテたかったから」
え、と笑いが引っ込んだ。それこそ今のジャックからは想像もつかない。
「満月の光には、魔力を回復させる力があるんだそうだ。魔女の宴が夜に行われるのもそうした理由なんだとさ」
「そうは言っても、これはただの映像なんでしょう? いくら収納魔法でも、本物の月を持ってくるなんて無理なはずだわ」
何とも夢のない返答をしてしまったが、ジャックはきょとんとしていた。知識はあるが剣士だから収納魔法なんて聞いた事がなかったのか。
私はジョーカーから聞いたマジックバッグについての情報を伝える。
「ああ、魔法を知らないやつに説明する時の方便だよ。実際にそれで収納できてるんだから、問題はないしな」
「亜空間に収納するのは通常魔法じゃなかったって事? 実は魔法大系は四つだったとか」
「いや逆だ。すべての通常魔法の基礎は『空間魔法』の応用なんだが、使いこなせば何でもありだから悪用されればとんでもない事になる……だから用途に応じた魔法が職業別に細分化される形になっているんだ」
それを知っているジャック、貴方は何者なの?
私の疑問が読み取れたのか、ジャックは頬を掻いて答えた。
「俺のお袋がここで言う宮廷魔導師の家系でさ。魔術を学問として仕組みを学ばされるから、その受け売りだよ」
「宮廷魔導師の家系……旦那様と同じね。ジャックは何故冒険者に?」
この機にジャックの事が知りたいと思い、流れで尋ねてみる事にした。あまり突っ込んだ質問ははぐらかされるかもしれないが、そろそろ興味を持ってもおかしくない付き合いにはなっているだろう。
「そのお袋ってのが自由人でな? 兄貴と後継者争いをするのが面倒で家を飛び出したんだと。世界中を旅しながら、時々は魔道具職人に弟子入りしたり貴族の家庭教師をしてたんだけど、基本は冒険者やってたんだよ。恋人もコロコロ変わってて誰が父親なのかも分かりゃしない。
で、俺が十三の時にそろそろ独り立ちしろって冒険者ギルドの前に置いていかれて、それっきり」
「そ、そうなんだ……」
生まれからしてヘヴィーだった。気の毒に思ったけれど、ジャックとしては一人で生きていくための知識とコネをくれたのには感謝しているらしい。ただ母親と同じ職業にするのか迷いはあったのだそう。
「便宜上『魔術師』で登録してあったけど、実際は『オンミョージ』って東方の国固有の役職でさ。宮廷魔術師とは言ったけど国家公務員の一部署なんだよな」
「国家公務員? 貴族領にも役人がいるけれど、ああいう人たちなの?」
「それは地方公務員だな。とにかく俺にはお袋ほどの技量もなかったし、とりあえず最初は『占い師』で登録してたんだよ」
う、占い師……似合わな過ぎておかしい。笑っては失礼だと口元が引きつりそうになるのを我慢していたが、見咎めたジャックはムッと眉根を寄せる。
「ご、ごめんなさい……それで、どうして剣士に?」
「まあぶっちゃけて言えば、モテたかったから」
え、と笑いが引っ込んだ。それこそ今のジャックからは想像もつかない。
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