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学園祭準備編
痣の正体
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「どうしたの二人とも、その格好!」
仕事を一通り終えたリューネとラク様に合流したあたしは、彼女たちの姿に声を上げる。二人とも煤で真っ黒だった。焼却炉の掃除をした事は聞いているが……
「あそこ、普段そんなに丁寧に掃除しないらしくて……でも収穫はあったわ」
「とにかく着替えましょう。あ、ここシャワー室があるのよ」
二人を案内しようとするあたしの腕を、ラク様が掴む。……袖に煤がつくんだけど。
「リジーさまも、入ろう」
「え? あたしは……」
まずい、ラク様にあれを見られると、エリザベスである事がバレる。でも断るのも感じ悪いわね……
脱衣所に着き、なし崩し的に引っ張り込まれて、仕方なく気を付けながら服を脱いでいると――
「リジーさま、胸、大きい」
「きゃっ!?」
「私、胸小さい……羨ましい」
覗き込まれて咄嗟に痣を隠すと、それに気付いたリューネが助け船を出してくれた。ぐいっとラク様の肩を掴み、二人の間に割り込む。
「リジーは今、おできが潰れてみっともないって肌を見せたがらないの。あまりジロジロ見ないであげてね」
そうしてさりげなくガードしてラク様に話しかけ続けるリューネ。
「あら、それが例の痣? でもこれって……」
「い、言わないで……お願いします」
二人の会話が気になったあたしがそっと覗き見ると、自己申告通りラク様はスレンダーだ……じゃなくて。近くで見ないと分からないけれど、痣が何だか『描いた』ような印象だった。ひょっとして……
「刺青? あなたが自分で入れたの?」
「……まあいいけど。でも、こういうのって大丈夫なのかしら?」
おどおどするラク様から顔を離して、リューネがこちらを見遣る。さっき聞いた話だと、神官長様は未来の光景を映像として夢で見せられているみたいだった。そんな刺青と分かるほど胸がアップで映ったとは思えないし、殿下も絶対に認めないだろう。
それにしても、テセウス殿下と結婚するとしたら、ラク様も胸の開いたウェディングドレスを着るのよね? ……ちょっと危ないような気がしなくもない。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「お前ら、寄り道かよ。護衛する俺の身にもなれ」
喫茶店に行こうと誘うあたしを、神殿の入り口で待ち構えていたドロン様がジロッと睨み付けてきた。ラク様は奢ると言われてパフェを食べる気満々だし、リューネは邪魔されて思いっきり不機嫌さを顔に出している。
「嫌なら帰れば? 女子には女子の付き合いってもんがあるのよ。ねぇ、ラク様?」
「パフェ……食べたい」
「リューネ、てめぇ! 婚約者のくせに生意気だぞ!」
「あんたこそ、殿下のお気に入りのラク様になんて態度なのよ。ラク様、是非ともこの事を殿下にご報告してやって」
「パフェ……」
出入口で言い争っていては、非常に邪魔だ。ドロン様はグチグチ文句を言いながらも、喫茶店前で待機する事になった。おしゃれで女子受けする店内の雰囲気は、さぞ入りにくかったのだろう。
仕事を一通り終えたリューネとラク様に合流したあたしは、彼女たちの姿に声を上げる。二人とも煤で真っ黒だった。焼却炉の掃除をした事は聞いているが……
「あそこ、普段そんなに丁寧に掃除しないらしくて……でも収穫はあったわ」
「とにかく着替えましょう。あ、ここシャワー室があるのよ」
二人を案内しようとするあたしの腕を、ラク様が掴む。……袖に煤がつくんだけど。
「リジーさまも、入ろう」
「え? あたしは……」
まずい、ラク様にあれを見られると、エリザベスである事がバレる。でも断るのも感じ悪いわね……
脱衣所に着き、なし崩し的に引っ張り込まれて、仕方なく気を付けながら服を脱いでいると――
「リジーさま、胸、大きい」
「きゃっ!?」
「私、胸小さい……羨ましい」
覗き込まれて咄嗟に痣を隠すと、それに気付いたリューネが助け船を出してくれた。ぐいっとラク様の肩を掴み、二人の間に割り込む。
「リジーは今、おできが潰れてみっともないって肌を見せたがらないの。あまりジロジロ見ないであげてね」
そうしてさりげなくガードしてラク様に話しかけ続けるリューネ。
「あら、それが例の痣? でもこれって……」
「い、言わないで……お願いします」
二人の会話が気になったあたしがそっと覗き見ると、自己申告通りラク様はスレンダーだ……じゃなくて。近くで見ないと分からないけれど、痣が何だか『描いた』ような印象だった。ひょっとして……
「刺青? あなたが自分で入れたの?」
「……まあいいけど。でも、こういうのって大丈夫なのかしら?」
おどおどするラク様から顔を離して、リューネがこちらを見遣る。さっき聞いた話だと、神官長様は未来の光景を映像として夢で見せられているみたいだった。そんな刺青と分かるほど胸がアップで映ったとは思えないし、殿下も絶対に認めないだろう。
それにしても、テセウス殿下と結婚するとしたら、ラク様も胸の開いたウェディングドレスを着るのよね? ……ちょっと危ないような気がしなくもない。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「お前ら、寄り道かよ。護衛する俺の身にもなれ」
喫茶店に行こうと誘うあたしを、神殿の入り口で待ち構えていたドロン様がジロッと睨み付けてきた。ラク様は奢ると言われてパフェを食べる気満々だし、リューネは邪魔されて思いっきり不機嫌さを顔に出している。
「嫌なら帰れば? 女子には女子の付き合いってもんがあるのよ。ねぇ、ラク様?」
「パフェ……食べたい」
「リューネ、てめぇ! 婚約者のくせに生意気だぞ!」
「あんたこそ、殿下のお気に入りのラク様になんて態度なのよ。ラク様、是非ともこの事を殿下にご報告してやって」
「パフェ……」
出入口で言い争っていては、非常に邪魔だ。ドロン様はグチグチ文句を言いながらも、喫茶店前で待機する事になった。おしゃれで女子受けする店内の雰囲気は、さぞ入りにくかったのだろう。
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