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学園サバイバル編
社会学習
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学園は週に五日間授業が行われ、六日目の『ドワーフの曜日』が社会学習、七日目の『天使の曜日』が休息日だ。社会学習とは王国民として社会に貢献できる事を自主的に学び、月に一度レポートにまとめて提出するものだった。内容は将来目指している役職についてでも、ボランティア活動でもいい。以前のわたくしは週に一度、孤児院を訪ねていた。
「リジーは明日どうする?」
「あたしは……孤児院訪問にします」
リューネ様に聞かれ、特に思い付かなかったあたしは、結局去年と同じにしてしまった。そう言えば、『エリザベス=デミコ ロナル』の悪評はどの程度知れ渡っているのだろう? 確か投獄されていた時、殿下が絵本を作った事や孤児院の話題も持ち出していたので、きっとある事ない事吹き込まれているんだろうな。あの純粋な子供たちに軽蔑された目で見られると思うと怖くて挫けそうなのだが……現状を把握する上でも行った方がいいのかもしれない。
「そっか……ねぇ、私もついて行ってもいい?」
「……えっ?」
「やっぱりすぐにはどこにすればいいのか、思い付かなくてさ。色んな場所を誰かと一緒に回って、興味が出たらそこに決めようかと思って。……ダメ?」
う、可愛い……年下の美少女に上目遣いされたら抗えないわ。決してそういう趣味じゃないんだけど。ふと、ロラン様もチラチラとこちらを気にしているのが見える。
「女二人じゃ不安ですから、ボディーガード付きなら」
「それなら、ロランも一緒に行こうよ。いやぁ、リジーってあんまり喋んないじゃない? そろそろ打ち解けたいなぁって」
「あ、あはは」
喋らないのは、エミィが変装している時にバレないためだ。二年の授業についていけるようになったら、早々にこっちに集中するから許して!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
次の日、あたしたちはエリザベス時代に馴染みのある孤児院へと赴いた。迎えてくれた院長さんに三人で挨拶する。
「はじめまして。1-Cのリジー=ボーデンと申します。こちらはクラスメートのリューネ=リンクス様と、ロラン=オンブル様。本日はよろしくお願いします」
自己紹介をするあたしに院長はにっこり微笑みかける。
「学園長から話はうかがっております。どうぞ、子供たちもあなた方を歓迎しています。
……大変でしたね、エリザベス様」
最後は耳元で囁きかけられて、はっとする。詳しい事情も、通達されていたようだ。
「殿下と王妃の御二方から、違った『真実』がそれぞれ伝えられたのですが……表向きは殿下に従うよう、命令されています。今はお辛いでしょうが……」
「はい、『エリザベス』はそのままでお願いします」
ひそひそと内緒話をしているのが気になったのか、リューネ様から訊ねられるのを上手く誤魔化しながら院内に入ると、中から言い争う声が聞こえてきた。
「だって王子サマが言ってたんだぞ、エリザベスさまは悪いヤツだって!」
「ちがうもん! とっても優しい人だもん!」
「やめなさい、あなたたち! 学園からお兄さんお姉さんが来てくれたのよ」
いきなり自分の事で喧嘩が起こっていて、びっくりする。聞いたところ、男の子の方は新しくこの孤児院に移されたらしく、以前のあたしを知らなかった。女の子はいつも懐いてくれていた子だ。周りも彼女に同意してはいるものの、殿下が嘘を言っているとは言いづらいようで、戸惑いの表情を浮かべている。
「こうも徹底されているとはねー……私もエリザベス様と直接お話しした事はないんだけど、何だか作為的なものを感じる」
「と、言うと?」
「テセウス殿下にとって、エリザベス様は『悪』でなければいけない理由があるのかも」
やはりリューネ様は真実を見抜く目を持っている……それとも鼻が利くのかしら?
「リジーは明日どうする?」
「あたしは……孤児院訪問にします」
リューネ様に聞かれ、特に思い付かなかったあたしは、結局去年と同じにしてしまった。そう言えば、『エリザベス=デミコ ロナル』の悪評はどの程度知れ渡っているのだろう? 確か投獄されていた時、殿下が絵本を作った事や孤児院の話題も持ち出していたので、きっとある事ない事吹き込まれているんだろうな。あの純粋な子供たちに軽蔑された目で見られると思うと怖くて挫けそうなのだが……現状を把握する上でも行った方がいいのかもしれない。
「そっか……ねぇ、私もついて行ってもいい?」
「……えっ?」
「やっぱりすぐにはどこにすればいいのか、思い付かなくてさ。色んな場所を誰かと一緒に回って、興味が出たらそこに決めようかと思って。……ダメ?」
う、可愛い……年下の美少女に上目遣いされたら抗えないわ。決してそういう趣味じゃないんだけど。ふと、ロラン様もチラチラとこちらを気にしているのが見える。
「女二人じゃ不安ですから、ボディーガード付きなら」
「それなら、ロランも一緒に行こうよ。いやぁ、リジーってあんまり喋んないじゃない? そろそろ打ち解けたいなぁって」
「あ、あはは」
喋らないのは、エミィが変装している時にバレないためだ。二年の授業についていけるようになったら、早々にこっちに集中するから許して!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
次の日、あたしたちはエリザベス時代に馴染みのある孤児院へと赴いた。迎えてくれた院長さんに三人で挨拶する。
「はじめまして。1-Cのリジー=ボーデンと申します。こちらはクラスメートのリューネ=リンクス様と、ロラン=オンブル様。本日はよろしくお願いします」
自己紹介をするあたしに院長はにっこり微笑みかける。
「学園長から話はうかがっております。どうぞ、子供たちもあなた方を歓迎しています。
……大変でしたね、エリザベス様」
最後は耳元で囁きかけられて、はっとする。詳しい事情も、通達されていたようだ。
「殿下と王妃の御二方から、違った『真実』がそれぞれ伝えられたのですが……表向きは殿下に従うよう、命令されています。今はお辛いでしょうが……」
「はい、『エリザベス』はそのままでお願いします」
ひそひそと内緒話をしているのが気になったのか、リューネ様から訊ねられるのを上手く誤魔化しながら院内に入ると、中から言い争う声が聞こえてきた。
「だって王子サマが言ってたんだぞ、エリザベスさまは悪いヤツだって!」
「ちがうもん! とっても優しい人だもん!」
「やめなさい、あなたたち! 学園からお兄さんお姉さんが来てくれたのよ」
いきなり自分の事で喧嘩が起こっていて、びっくりする。聞いたところ、男の子の方は新しくこの孤児院に移されたらしく、以前のあたしを知らなかった。女の子はいつも懐いてくれていた子だ。周りも彼女に同意してはいるものの、殿下が嘘を言っているとは言いづらいようで、戸惑いの表情を浮かべている。
「こうも徹底されているとはねー……私もエリザベス様と直接お話しした事はないんだけど、何だか作為的なものを感じる」
「と、言うと?」
「テセウス殿下にとって、エリザベス様は『悪』でなければいけない理由があるのかも」
やはりリューネ様は真実を見抜く目を持っている……それとも鼻が利くのかしら?
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