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14:初夜開始の噂
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結局オリオンが寝室に入ってきたのは、夜もかなり更けての事だった。バスローブ姿で入ってきた彼は開口一番、
「うわ、臭っ! 何だこの匂い」
と顔を顰められた。
「お香を焚いていたのですが、お気に召さないのでしたらやめておきましょう」
元々換気で窓は少し開けていたのだけれど、空気の入れ替えのため全開にする。温かい季節だがさすがに夜ともなると空気も冷たく、肌寒さに身震いしていると――
「で、なんでそんな頭悪そうな格好してるんだ?」
「あ……っ、寝室でどういう格好しようと人の勝手じゃないですか!」
内心同意したいが腹立たしい指摘に、つい声を荒げてしまう。ステラに着せられたのは、ベビードールだった。透けている下着は紫色で、レースをふんだんに使った……ほぼ紐だ。欲情を煽る勝負服だそうだが、肝心の相手から不評なら即刻やめるべきだと思う、うん。
「それより遅かったじゃないですか。何かトラブルでもあったのですか?」
「それが、帰ってすぐにめちゃくちゃ叱られてさー。ステラからはそんなドロドロのままで上がらないでくださいって、風呂の前に庭で水ぶっかけられたんだぜ? 腹減って死にそうなのにあんまりだよな」
私が聞きたかったのは、帰宅後の話ではないんだけども……
「とにかく入浴と食事は済ませたんですね? では時間も押していますし、さっさと始めましょう。バスローブを脱いでベッドに上がってください」
「始めるって……何を?」
「何って、子作りですよ。何のために私たちが結婚したのか、ちゃんと理解していますよね?」
よもや忘れてはいないかと睨み付ければ、オリオンは口元を引きつらせる。
「え……え!? そんな、いきなり……」
「逃げても使命がなくなるわけじゃありませんから、嫌なら尚更早く終わらせた方がいいと思いますけどね……とは言え、今日は最後までするつもりはありません。本番の前に、双方の認識を共有しておきたいですから」
「???」
「いいから恥ずかしがってないで脱ぎなさい、早く!」
小さな子に言い聞かせるように叱りつけると、戸惑っていたオリオンもムッとした表情で大人しく帯に手をかけた。ストン、と足元にバスローブが落ち、生まれたままの姿が晒されて思わず息を飲んでしまう。
(大丈夫、動揺なんてしない。弟と入浴した事もあるし、美術の授業で彫刻のデッサンもしていたし……ついさっきまで、図解も散々見ていたもの)
成人男性の肉体と向き合うには微妙な経験ばかりなのはさておき、私は指が震えているのを悟られないようにベッド脇の医学書を引き寄せた。
「ではこれから、子作りをする上でのレクチャーを行います」
「うわ、臭っ! 何だこの匂い」
と顔を顰められた。
「お香を焚いていたのですが、お気に召さないのでしたらやめておきましょう」
元々換気で窓は少し開けていたのだけれど、空気の入れ替えのため全開にする。温かい季節だがさすがに夜ともなると空気も冷たく、肌寒さに身震いしていると――
「で、なんでそんな頭悪そうな格好してるんだ?」
「あ……っ、寝室でどういう格好しようと人の勝手じゃないですか!」
内心同意したいが腹立たしい指摘に、つい声を荒げてしまう。ステラに着せられたのは、ベビードールだった。透けている下着は紫色で、レースをふんだんに使った……ほぼ紐だ。欲情を煽る勝負服だそうだが、肝心の相手から不評なら即刻やめるべきだと思う、うん。
「それより遅かったじゃないですか。何かトラブルでもあったのですか?」
「それが、帰ってすぐにめちゃくちゃ叱られてさー。ステラからはそんなドロドロのままで上がらないでくださいって、風呂の前に庭で水ぶっかけられたんだぜ? 腹減って死にそうなのにあんまりだよな」
私が聞きたかったのは、帰宅後の話ではないんだけども……
「とにかく入浴と食事は済ませたんですね? では時間も押していますし、さっさと始めましょう。バスローブを脱いでベッドに上がってください」
「始めるって……何を?」
「何って、子作りですよ。何のために私たちが結婚したのか、ちゃんと理解していますよね?」
よもや忘れてはいないかと睨み付ければ、オリオンは口元を引きつらせる。
「え……え!? そんな、いきなり……」
「逃げても使命がなくなるわけじゃありませんから、嫌なら尚更早く終わらせた方がいいと思いますけどね……とは言え、今日は最後までするつもりはありません。本番の前に、双方の認識を共有しておきたいですから」
「???」
「いいから恥ずかしがってないで脱ぎなさい、早く!」
小さな子に言い聞かせるように叱りつけると、戸惑っていたオリオンもムッとした表情で大人しく帯に手をかけた。ストン、と足元にバスローブが落ち、生まれたままの姿が晒されて思わず息を飲んでしまう。
(大丈夫、動揺なんてしない。弟と入浴した事もあるし、美術の授業で彫刻のデッサンもしていたし……ついさっきまで、図解も散々見ていたもの)
成人男性の肉体と向き合うには微妙な経験ばかりなのはさておき、私は指が震えているのを悟られないようにベッド脇の医学書を引き寄せた。
「ではこれから、子作りをする上でのレクチャーを行います」
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