6 / 17
6:侮辱発言の噂
しおりを挟む
仕切り直すため、一度ゴホンと咳払いすると私はにっこり微笑みながら訂正した。
「白髪ではなく銀髪ですよ? そうは見えないかもしれませんけれど私、貴方と同じ十代です」
貴方と同じ、というところを強調して言うと、オリオンにぶはっと吹き出される。
「うっそだー、葬式の匂いするしうんこみたいな髪型だし、そこらの婆さんと一緒だろ」
――ビキッ
「どうせなら神殿にいたローズって子がよかったなー。称号獲得の行事を手伝ってたんだけどさ、笑顔がカワイイんだ。学園の男どもが水晶運ぶの助けようとするの、争奪戦になってたんだぜ」
「……ローズマリーの事ですか? 彼女はまだ十三歳になったばかりでは」
「ババアよりマシじゃん」
――ビキビキッ
「そもそも【勇者の父】って称号も気に入らないんだよな。師匠は宿命だって言ってるけど、俺は勇者になりたかった。勇者の子孫である、大賢者ピエールに認められたかったのに!」
「称号はあくまで一番適性のある未来という目安です。ただ今回に限っては世界に危機が迫っている状況で、個人的感情を慮れないのはお気の毒ですが……」
「あー、うるせぇ!! 師匠も王様も先公も、みんなお前みたいに型に嵌めようとしやがって! 俺は勇者を産む機械じゃねえんだぞ!!」
宥めようとする私に被せるように、叫びながら頭をぐしゃぐしゃかき回すオリオン。
私は……『勇者を産む機械』という言葉が心に突き刺さっていた。
「宿命なんて知った事か、魔王は俺がぶっ倒すんだよ!!」
その野望は実に少年らしく、勇者の子孫の養子という立場を考えても抱いて当然の夢だろう。普段の私であれば、むしろ微笑ましく感じて受け流していた、けれど――
(もういいや。こいつ種馬決定)
先程から繰り出される容赦のない暴言に、こちらも子供だからと遠慮するのがバカバカしくなっていた。速攻でごめんなさいして関わりを断ち切りたいが、放っておけば世界が滅亡するのにそんな呑気な事も言ってられない。
だったら一刻も早く、『計画』を達成してさようならすればいいじゃないか。ここに来るまでの間、オリオンの将来のために決めていた事からそう変わらない。
「貴方の言い分は分かりました」
私の笑みが引きつったものから、吹っ切れた清々しいものに変わると、オリオンはビクッと口を閉じた。ようやく私を怒らせたのに気付いたのだろう。
「ですが『計画』は国家によるものであり、貴方のお父様――イーダ男爵にもご承諾いただいております。勇者になって直接魔王討伐へ赴くのも大いに結構。ただしあと二年、いえわたくしが貴方の子を無事出産するまでの猶予をいただけませんか?
この結婚は契約です。義務さえ果たせば魔王を倒そうがローズマリーと付き合おうが、貴方の自由をお約束しましょう」
「白髪ではなく銀髪ですよ? そうは見えないかもしれませんけれど私、貴方と同じ十代です」
貴方と同じ、というところを強調して言うと、オリオンにぶはっと吹き出される。
「うっそだー、葬式の匂いするしうんこみたいな髪型だし、そこらの婆さんと一緒だろ」
――ビキッ
「どうせなら神殿にいたローズって子がよかったなー。称号獲得の行事を手伝ってたんだけどさ、笑顔がカワイイんだ。学園の男どもが水晶運ぶの助けようとするの、争奪戦になってたんだぜ」
「……ローズマリーの事ですか? 彼女はまだ十三歳になったばかりでは」
「ババアよりマシじゃん」
――ビキビキッ
「そもそも【勇者の父】って称号も気に入らないんだよな。師匠は宿命だって言ってるけど、俺は勇者になりたかった。勇者の子孫である、大賢者ピエールに認められたかったのに!」
「称号はあくまで一番適性のある未来という目安です。ただ今回に限っては世界に危機が迫っている状況で、個人的感情を慮れないのはお気の毒ですが……」
「あー、うるせぇ!! 師匠も王様も先公も、みんなお前みたいに型に嵌めようとしやがって! 俺は勇者を産む機械じゃねえんだぞ!!」
宥めようとする私に被せるように、叫びながら頭をぐしゃぐしゃかき回すオリオン。
私は……『勇者を産む機械』という言葉が心に突き刺さっていた。
「宿命なんて知った事か、魔王は俺がぶっ倒すんだよ!!」
その野望は実に少年らしく、勇者の子孫の養子という立場を考えても抱いて当然の夢だろう。普段の私であれば、むしろ微笑ましく感じて受け流していた、けれど――
(もういいや。こいつ種馬決定)
先程から繰り出される容赦のない暴言に、こちらも子供だからと遠慮するのがバカバカしくなっていた。速攻でごめんなさいして関わりを断ち切りたいが、放っておけば世界が滅亡するのにそんな呑気な事も言ってられない。
だったら一刻も早く、『計画』を達成してさようならすればいいじゃないか。ここに来るまでの間、オリオンの将来のために決めていた事からそう変わらない。
「貴方の言い分は分かりました」
私の笑みが引きつったものから、吹っ切れた清々しいものに変わると、オリオンはビクッと口を閉じた。ようやく私を怒らせたのに気付いたのだろう。
「ですが『計画』は国家によるものであり、貴方のお父様――イーダ男爵にもご承諾いただいております。勇者になって直接魔王討伐へ赴くのも大いに結構。ただしあと二年、いえわたくしが貴方の子を無事出産するまでの猶予をいただけませんか?
この結婚は契約です。義務さえ果たせば魔王を倒そうがローズマリーと付き合おうが、貴方の自由をお約束しましょう」
1
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
腹黒宰相との白い結婚
黎
恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる