11 / 22
11:拙者、取り引きをするでござる
しおりを挟む
一応、女からそこそこモテるのだが、俺個人がそうかと聞かれれば微妙なところだ。
今までもたまにお誘いの声がかかった事があったが、見目麗しい王子のアレン殿下にお近付きになりたいとか、本人を落とせないから手近な俺で妥協しとこうとか、あるいはサムライという職業の珍しさから好奇心でってパターンがほとんどだった。
『あんなもの、ハニートラップに決まっている。分かっていると思うが引っかかるなよ』
かつての主も怖い顔でそう釘を刺してきたし。
だから今回も、そういう事だと認識しているが。
「あ、あのっ、本人の同意もなしにそんな、好きでもない人と……っ」
「ん? この男はマヤ殿の下僕だと自分で宣言したではないか。しかもサウーラ殺しという大罪を認めた上でだ。口止め料として一晩相手してもらう程度で済んだ事を感謝してもらいたいくらいだ」
軽く言っているが、ビーウィにとってのドラゴンもまた神である事に間違いはない。処刑というほどでなくてもバレるわけにはいかず、ここに置いてもらい隠し切るためにはどんな理不尽な要求も飲まなくてはならない理屈は分かる。俺としては最悪、マヤ様さえ無事にジャングルを脱出できればそれでよかった。
「イェモン……アピス様のものにならないよね?」
「主……」
赤く染まった目を潤ませて懇願してくるマヤ様。ああ、そんな顔されたら何でも聞いてあげたい!
しかし従者が優先すべきは、たとえ命令に背く事になっても変わらないのだ。
「拙者が忠誠を誓うのは主のみ。他の誰にも、この魂は譲れないでござる」
「じゃあ……!」
「だからこそ、主のためなら屈強な輩に尻を捧げるぐらいの覚悟はしておりまする」
いや本当、セクシー系美女のアピス酋長には失礼な話なんだが、マヤ様以外の異性には興味ない。実は女性以上にムキムキな同性から義兄弟の契り(※意味深)を迫られる方が多かったのだが、それと同じくらい御免蒙りたいのが正直なところ。
ただし、今みたいにマヤ様を人質に取られるぐらいなら、己の貞操など喜んで捨ててやる。
そのつもりで言ったのだが、マヤ様の瞳に溢れた涙がポロリと零れ落ちた。
「バカあぁっ!!」
「いてっ!」
一瞬火花が飛んだかと思えば、顔がヒリヒリ痛み出す。止める間もなく、マヤ様が飛び出して行ってしまった。
「主っ!!」
「配下の者に追わせているから、心配いたすな。用意した宿に連れて行くよう指示してある。……それにしても、もう少し言い様はなかったのか?」
引っ掻き回しておいて、張本人は扇を広げて踏ん反り返っている。ムッとしながらも俺は不貞腐れたように答えた。
「実際、敵にハニートラップを仕掛けなければいけない状況だって出てくる……相手に限らずな」
「覚悟決まり過ぎだろう。まったく……だが、貴様の事がだんだん見えてきたぞ。魔物の根城に近いライ村に、王族の血を引く勇者御一行が来たという情報があった。そやつらが貴様の以前の主か」
「追放されたけどな」
そうかそうか、と満足げに頷くと、アピス酋長はパチンと扇を閉じた。悪巧みをしているような表情になっている。
「ならば、ビーウィ集落からも依頼を出そうじゃないか。それをもって口止め料とするのはどうだ?」
今までもたまにお誘いの声がかかった事があったが、見目麗しい王子のアレン殿下にお近付きになりたいとか、本人を落とせないから手近な俺で妥協しとこうとか、あるいはサムライという職業の珍しさから好奇心でってパターンがほとんどだった。
『あんなもの、ハニートラップに決まっている。分かっていると思うが引っかかるなよ』
かつての主も怖い顔でそう釘を刺してきたし。
だから今回も、そういう事だと認識しているが。
「あ、あのっ、本人の同意もなしにそんな、好きでもない人と……っ」
「ん? この男はマヤ殿の下僕だと自分で宣言したではないか。しかもサウーラ殺しという大罪を認めた上でだ。口止め料として一晩相手してもらう程度で済んだ事を感謝してもらいたいくらいだ」
軽く言っているが、ビーウィにとってのドラゴンもまた神である事に間違いはない。処刑というほどでなくてもバレるわけにはいかず、ここに置いてもらい隠し切るためにはどんな理不尽な要求も飲まなくてはならない理屈は分かる。俺としては最悪、マヤ様さえ無事にジャングルを脱出できればそれでよかった。
「イェモン……アピス様のものにならないよね?」
「主……」
赤く染まった目を潤ませて懇願してくるマヤ様。ああ、そんな顔されたら何でも聞いてあげたい!
しかし従者が優先すべきは、たとえ命令に背く事になっても変わらないのだ。
「拙者が忠誠を誓うのは主のみ。他の誰にも、この魂は譲れないでござる」
「じゃあ……!」
「だからこそ、主のためなら屈強な輩に尻を捧げるぐらいの覚悟はしておりまする」
いや本当、セクシー系美女のアピス酋長には失礼な話なんだが、マヤ様以外の異性には興味ない。実は女性以上にムキムキな同性から義兄弟の契り(※意味深)を迫られる方が多かったのだが、それと同じくらい御免蒙りたいのが正直なところ。
ただし、今みたいにマヤ様を人質に取られるぐらいなら、己の貞操など喜んで捨ててやる。
そのつもりで言ったのだが、マヤ様の瞳に溢れた涙がポロリと零れ落ちた。
「バカあぁっ!!」
「いてっ!」
一瞬火花が飛んだかと思えば、顔がヒリヒリ痛み出す。止める間もなく、マヤ様が飛び出して行ってしまった。
「主っ!!」
「配下の者に追わせているから、心配いたすな。用意した宿に連れて行くよう指示してある。……それにしても、もう少し言い様はなかったのか?」
引っ掻き回しておいて、張本人は扇を広げて踏ん反り返っている。ムッとしながらも俺は不貞腐れたように答えた。
「実際、敵にハニートラップを仕掛けなければいけない状況だって出てくる……相手に限らずな」
「覚悟決まり過ぎだろう。まったく……だが、貴様の事がだんだん見えてきたぞ。魔物の根城に近いライ村に、王族の血を引く勇者御一行が来たという情報があった。そやつらが貴様の以前の主か」
「追放されたけどな」
そうかそうか、と満足げに頷くと、アピス酋長はパチンと扇を閉じた。悪巧みをしているような表情になっている。
「ならば、ビーウィ集落からも依頼を出そうじゃないか。それをもって口止め料とするのはどうだ?」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
俺のギフト【草】は草を食うほど強くなるようです ~クズギフトの息子はいらないと追放された先が樹海で助かった~
草乃葉オウル
ファンタジー
★お気に入り登録お願いします!★
男性向けHOTランキングトップ10入り感謝!
王国騎士団長の父に自慢の息子として育てられた少年ウォルト。
だが、彼は14歳の時に行われる儀式で【草】という謎のギフトを授かってしまう。
周囲の人間はウォルトを嘲笑し、強力なギフトを求めていた父は大激怒。
そんな父を「顔真っ赤で草」と煽った結果、ウォルトは最果ての樹海へ追放されてしまう。
しかし、【草】には草が持つ効能を増幅する力があった。
そこらへんの薬草でも、ウォルトが食べれば伝説級の薬草と同じ効果を発揮する。
しかも樹海には高額で取引される薬草や、絶滅したはずの幻の草もそこら中に生えていた。
あらゆる草を食べまくり最強の力を手に入れたウォルトが樹海を旅立つ時、王国は思い知ることになる。
自分たちがとんでもない人間を解き放ってしまったことを。
隣のクラスの異世界召喚に巻き込まれたジョブ「傍観者」
こでまり
ファンタジー
教科書を忘れてきてしまった希乃葉(ののは)は隣のクラスの親友である美月葉(みつは)に教科書を借りに教室を訪れる。しかし彼女の席にその姿は無く首を傾げていると美月葉の隣の席の男子が彼女は朝から来ていないことを教えてくれた。美月葉の机は空。教科書を借りられず肩を落としていると見かねた美月葉の隣の席の男子、湊(みなと)が貸してくれるという。教科書を受け取り何かお礼をと声をかけたそのとき、教室の床が眩く光った。景色が一変し、絢爛な広間に希乃葉たちは立っていた。どうやら異世界にクラス丸ごと召喚されたらしい。ステータスと唱えれば自身のステータスが分かると言われその通りにしてみれば希乃葉のジョブには「傍観者」の文字があった――…
当作品は小説家になろうでも掲載しております。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~
ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」
ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。
理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。
追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。
そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。
一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。
宮廷魔術師団長は知らなかった。
クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。
そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。
「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。
これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。
ーーーーーー
ーーー
※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。
見つけた際はご報告いただけますと幸いです……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる