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「ごめん、杭殿さん。危ない目に遭ったとしても……ううん、ミトちゃんの事は僕、どんなに痛い思いをしてでも助けに行きたいんだ。これだけは、誰が何と言おうと、譲れない」
「夜羽君……」
いつになく頼もしい事を言ってくれる夜羽に、思いがけず心臓を鷲掴みにされてしまった。夜羽のくせに……ちょっとかっこいいとか思っちゃったじゃない。
「それで、これからミトちゃんのお父さんに相談したい事があるから、悪いんだけど二人とも外に出ててくれる?」
「おう、何でも聞いていいぞ」
「え、お父さんだけ? 私も出て行くの?」
ぐいぐいと押されて出て行かされたので不満の声を上げる。せっかくお見舞いに来たのに……
杭殿さんの方は、このまま帰ると言って頭を下げ、自分から病室を出た。でもまだ手にナイフ持ってるんだけど……
帰ると言いつつも扉が閉まった途端、じっとこちらを見てくる杭殿さん。怖い……ナイフ仕舞ってくんないかなぁ。
「私、夜羽君が好きです」
唐突に、口を開いたかと思えばそう言われ、どう答えたもんかと目をしぱしぱさせるしかない。
「あ、そうなの。へえ……」
「確かに親に決められた婚約ではありますけど、私は上手くやっていけると思っています。夜羽君は優しくて可愛くて……女の子が男の子を守ってあげる、そんな愛の形があったっていいんじゃないかって」
「……観司郎さんと真理愛さんたちの事は」
「聞いています。皆、辛い思いをされていた事も。だけど、それでもこの関係を続けていたのは、受け入れていたからこそじゃないでしょうか。私も同じです。夜羽君の全てを受け入れる覚悟です」
はあ……すごいわね。そこまで夜羽のために人生かけられるなんて。出会ってまだ数日で、そこまで覚悟決まっちゃうものなのかしら? 家のために自分を犠牲にできるのは時代遅れだと思うけど、自分で考えて決めた事なら他人がどうこう言う事じゃない。
(……だけどね、私だって)
「あなたの気持ちは分かったわ。でも私も夜羽が好きなの。私はあなたみたいにいい子ちゃんじゃないし、何の力もないけど、これだけは言える。もし夜羽が本心から私と別れたいと望むのなら、私は手を放してあげられるわ」
「……そ「絶対にさせないけどね。夜羽がずっと私だけを好きでいてくれるように努力するし、夜羽が何を望んでいるのか、理解してあげたい。そして一緒に壁を乗り越えたい。
あいつの気持ちを蔑ろにして、自分の気持ちに嘘を吐いて、おままごとで満足するような女にはなりたくないの」
杭殿さんの瞳がカッと見開かれた。蛇に睨まれた蛙のような、緊迫した心境。可愛らしい顔が台無しだが、こういう場には慣れているのか、決まっているというか不思議な色気があった。
「私、負けません!」
「私だって」
しばらく睨み合った後、杭殿さんは一歩下がると、ピシッとお辞儀をして今度こそ帰っていった。
さて、負けないと言ったもののまずは夜羽がどう出るかよね。一体お父さんに何を話しているのやら。
「夜羽君……」
いつになく頼もしい事を言ってくれる夜羽に、思いがけず心臓を鷲掴みにされてしまった。夜羽のくせに……ちょっとかっこいいとか思っちゃったじゃない。
「それで、これからミトちゃんのお父さんに相談したい事があるから、悪いんだけど二人とも外に出ててくれる?」
「おう、何でも聞いていいぞ」
「え、お父さんだけ? 私も出て行くの?」
ぐいぐいと押されて出て行かされたので不満の声を上げる。せっかくお見舞いに来たのに……
杭殿さんの方は、このまま帰ると言って頭を下げ、自分から病室を出た。でもまだ手にナイフ持ってるんだけど……
帰ると言いつつも扉が閉まった途端、じっとこちらを見てくる杭殿さん。怖い……ナイフ仕舞ってくんないかなぁ。
「私、夜羽君が好きです」
唐突に、口を開いたかと思えばそう言われ、どう答えたもんかと目をしぱしぱさせるしかない。
「あ、そうなの。へえ……」
「確かに親に決められた婚約ではありますけど、私は上手くやっていけると思っています。夜羽君は優しくて可愛くて……女の子が男の子を守ってあげる、そんな愛の形があったっていいんじゃないかって」
「……観司郎さんと真理愛さんたちの事は」
「聞いています。皆、辛い思いをされていた事も。だけど、それでもこの関係を続けていたのは、受け入れていたからこそじゃないでしょうか。私も同じです。夜羽君の全てを受け入れる覚悟です」
はあ……すごいわね。そこまで夜羽のために人生かけられるなんて。出会ってまだ数日で、そこまで覚悟決まっちゃうものなのかしら? 家のために自分を犠牲にできるのは時代遅れだと思うけど、自分で考えて決めた事なら他人がどうこう言う事じゃない。
(……だけどね、私だって)
「あなたの気持ちは分かったわ。でも私も夜羽が好きなの。私はあなたみたいにいい子ちゃんじゃないし、何の力もないけど、これだけは言える。もし夜羽が本心から私と別れたいと望むのなら、私は手を放してあげられるわ」
「……そ「絶対にさせないけどね。夜羽がずっと私だけを好きでいてくれるように努力するし、夜羽が何を望んでいるのか、理解してあげたい。そして一緒に壁を乗り越えたい。
あいつの気持ちを蔑ろにして、自分の気持ちに嘘を吐いて、おままごとで満足するような女にはなりたくないの」
杭殿さんの瞳がカッと見開かれた。蛇に睨まれた蛙のような、緊迫した心境。可愛らしい顔が台無しだが、こういう場には慣れているのか、決まっているというか不思議な色気があった。
「私、負けません!」
「私だって」
しばらく睨み合った後、杭殿さんは一歩下がると、ピシッとお辞儀をして今度こそ帰っていった。
さて、負けないと言ったもののまずは夜羽がどう出るかよね。一体お父さんに何を話しているのやら。
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