31 / 49
30
しおりを挟む
プップクプー! パラパラパッパッパー♪
「うーん……」
けたたましいラッパの音に起こされ、私はもそもそと探り当てたスマホを切りながら起き上がる。半分寝惚けたまま着替えて顔を洗い、朝食を終えたタイミングでチャイムが鳴る。
「ふあぁ~、行ってきまーす」
大欠伸をしながらドアを開ければ、いつものように夜羽が門の前で待っていた。私と目が合うと、ぱっと頬を紅潮させて微笑む。
「おはよう、ミトちゃん」
「おはよ、よっぴ」
「……前から思ってたけどさ、その『よっぴ』ってもうやめない? 高校生なんだから」
生意気にも口を尖らせて文句言ってくる。まあ、いつもそう呼んでる訳じゃないけど、このあだ名にも年季入ってきてるからなあ。
「ダメ? 特別な感じがして私は好きなんだけど。嫌なら『ハニー』とかにしようか?」
「か、からかわないでよ。ミトちゃんが呼びたいんなら別にいいけどさぁ……」
ぼそぼそと小声で愚痴る夜羽。関係が変わっても相変わらずだ。昨日から付き合う事になった私たちだけど、だからっていきなりイチャイチャし出す事はない。何せ長い、長過ぎる付き合いなのだから、距離も私たちのペースでゆっくり進めていきたい。
(でも、ちょっとだけなら……)
「ぴゃっ」
夜羽が仰天して飛び上がった。こちらを向いたその顔は赤らんでいて、目は戸惑いに潤んでいる。
私が急に手を握ってきたものだから、思いっきり意識してしまったようだ。
「ミ、ミトちゃ……」
「いいでしょ、彼女なんだから……ダメ?」
ブルブルッと痙攣みたいに首を振ると、夜羽はぎゅっと手を握り返してきた。
「ダメじゃない。嬉しい!」
「そう? じゃ、急ぎましょうか」
「うん!!」
傍目からは物凄く舞い上がっているのは夜羽の方だったけど、本当は私だって浮かれていた。まさか弟みたいに思ってた夜羽とこんな関係になるとは、少し前まで思いもしなかった。
くすぐったくて……でも何か、悪くない。
私たちが付き合いだした事は、萌には速攻でバレていた。
「そっか、あんたたちようやくまとまったか」
「え……知ってたの?」
「まあね、角笛君が気がある事知らないのって、あんたくらいよ。でも弟にしか思われてないのに、困るだろうから言わないでって口止めされてたのよね」
そうだったんだ……私ったらこの歳になるまで気付かなかったなんて、相当鈍感だったのね。でも確かに、気弱な夜羽に告白されたところで、甘えてるだけだって突き放してたかも。それもお見通しだったからこそ、怒ってたのかも……
「正直まだ自分の気持ちは固まってないんだけど、よっぴとはちゃんと向き合うつもりでいるわよ」
「うん、それがいいね」
授業が終わり、帰り支度をしながらお喋りしていると、窓の外を見ていた他の生徒がざわついた。
「お、おい見ろよ。正門のとこ、すっげえ美人が立ってるぞ」
「どれどれ!」
ちらりとそちらを見たが、既に正門側の窓にはびっしり見物人が張り付いていて、隙間から見れそうにない。まさか注目されている訪問客が私たちに関係あるなど、この時は思いもしなかった。
「うーん……」
けたたましいラッパの音に起こされ、私はもそもそと探り当てたスマホを切りながら起き上がる。半分寝惚けたまま着替えて顔を洗い、朝食を終えたタイミングでチャイムが鳴る。
「ふあぁ~、行ってきまーす」
大欠伸をしながらドアを開ければ、いつものように夜羽が門の前で待っていた。私と目が合うと、ぱっと頬を紅潮させて微笑む。
「おはよう、ミトちゃん」
「おはよ、よっぴ」
「……前から思ってたけどさ、その『よっぴ』ってもうやめない? 高校生なんだから」
生意気にも口を尖らせて文句言ってくる。まあ、いつもそう呼んでる訳じゃないけど、このあだ名にも年季入ってきてるからなあ。
「ダメ? 特別な感じがして私は好きなんだけど。嫌なら『ハニー』とかにしようか?」
「か、からかわないでよ。ミトちゃんが呼びたいんなら別にいいけどさぁ……」
ぼそぼそと小声で愚痴る夜羽。関係が変わっても相変わらずだ。昨日から付き合う事になった私たちだけど、だからっていきなりイチャイチャし出す事はない。何せ長い、長過ぎる付き合いなのだから、距離も私たちのペースでゆっくり進めていきたい。
(でも、ちょっとだけなら……)
「ぴゃっ」
夜羽が仰天して飛び上がった。こちらを向いたその顔は赤らんでいて、目は戸惑いに潤んでいる。
私が急に手を握ってきたものだから、思いっきり意識してしまったようだ。
「ミ、ミトちゃ……」
「いいでしょ、彼女なんだから……ダメ?」
ブルブルッと痙攣みたいに首を振ると、夜羽はぎゅっと手を握り返してきた。
「ダメじゃない。嬉しい!」
「そう? じゃ、急ぎましょうか」
「うん!!」
傍目からは物凄く舞い上がっているのは夜羽の方だったけど、本当は私だって浮かれていた。まさか弟みたいに思ってた夜羽とこんな関係になるとは、少し前まで思いもしなかった。
くすぐったくて……でも何か、悪くない。
私たちが付き合いだした事は、萌には速攻でバレていた。
「そっか、あんたたちようやくまとまったか」
「え……知ってたの?」
「まあね、角笛君が気がある事知らないのって、あんたくらいよ。でも弟にしか思われてないのに、困るだろうから言わないでって口止めされてたのよね」
そうだったんだ……私ったらこの歳になるまで気付かなかったなんて、相当鈍感だったのね。でも確かに、気弱な夜羽に告白されたところで、甘えてるだけだって突き放してたかも。それもお見通しだったからこそ、怒ってたのかも……
「正直まだ自分の気持ちは固まってないんだけど、よっぴとはちゃんと向き合うつもりでいるわよ」
「うん、それがいいね」
授業が終わり、帰り支度をしながらお喋りしていると、窓の外を見ていた他の生徒がざわついた。
「お、おい見ろよ。正門のとこ、すっげえ美人が立ってるぞ」
「どれどれ!」
ちらりとそちらを見たが、既に正門側の窓にはびっしり見物人が張り付いていて、隙間から見れそうにない。まさか注目されている訪問客が私たちに関係あるなど、この時は思いもしなかった。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる