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「はぁ!?」
正気か、と言いかけた私を、二人が遮った。
「ほんとっすか、夜羽さん!」
「ヒャッハー、そうこなくちゃ!」
「ちょっと夜羽! あんた無関係なのに首突っ込んで、いらん闘争起こす気じゃないでしょうね!?」
睨み付ける私に、いつもなら竦み上がっていた夜羽が、臆する事なく見つめ返す。何故か、怯んでしまった。
「赤井君たちがわざわざここまで来なきゃいけなかったのって、稲妻さんの卒業が大きいと思うんだ。あの人が地元で睨みを利かせてたおかげで、平穏に過ごせてたんだから。
とりあえず、稲妻さんと話をしたいかなって……」
「夜羽……」
サングラスがない状態の夜羽は超平和主義のヘタレなんだけど、記憶は残ってるせいか、平気で裏番 (現OB)と仲良くできてるのよね。
「それに……中学でいじめられてた時に何度か二人には助けてもらってたし」
「ちょっとそれ、初耳なんだけど!? あんた一人でどうにかできるじゃない!」
「夜羽さんが本気出すと、下手したら相手死にますからね」
「この人、奥ゆかしいから地元じゃ目立ちたくないんすよ。だから俺らが因縁つけて追っ払ってたんす」
奥ゆかしいんじゃなくて臆病の間違いだと思うけど、二人は正しく夜羽の舎弟を務め上げていた。まあ学ランに赤いサングラスで大立ち回りなんかしてちゃ、噂が私の耳に入らない訳ないもんね。
「心配しなくていいよ、鶴戯にも相談するし、穏便に話し合いで解決するから」
「ヤンキーにそんな理屈が通用する訳ないでしょ!?」
心配するなと言われても、不安しかない。恐らく夜羽は頼る気だ……『赤眼のミシェル』に。
隣市だからと甘く見てるんだろうけど、不良って舐められたら終わりみたいなとこあるから、絶対目を付けられる……今となってはボコボコにされるとは思ってないけど、逆に今回みたいにめんどくさい案件が持ち込まれる可能性の方が高い。
(その穴倉って1年を倒して、茂久市六の裏番になれって言われたら、どうすんの? 嫌だよ、そんな事になったら……)
普段の気弱な夜羽では断り切れないだろうし、サングラス着用時だとノリノリで承諾しそうだ。
「それじゃ、稲妻さんの都合を聞いて連絡します!」
「あ、うん……」
そうして嬉々として帰っていく二人を見送りながら、私は決めた。
△▼△▼△▼△▼
「で、隣市まで尾行ですか……」
電車で茂久市に向かう夜羽から少し離れた席で様子を窺う私に、炎谷さんが呆れた声を出す。あの後、私は彼に相談して夜羽の様子をこっそり見守る事にしたのだ。
夜羽の服のボタンにはGPS機能付きの盗聴器があるので、万が一拉致されてもすぐに対応できるとか……あの時何故か学校内に炎谷さんがいた謎が解けた。
ちなみに夜羽は炎谷さんがついてきてる事は知っているけど、まさか私まで同行しているとは思わないだろう。
「様子を見るだけですからね。美酉さん、絶対に私から離れないでくださいよ」
「分かってますって」
ただし、ヤンキーに勧誘されそうになったら、速攻で夜羽を回収して逃走するつもりだ。
正気か、と言いかけた私を、二人が遮った。
「ほんとっすか、夜羽さん!」
「ヒャッハー、そうこなくちゃ!」
「ちょっと夜羽! あんた無関係なのに首突っ込んで、いらん闘争起こす気じゃないでしょうね!?」
睨み付ける私に、いつもなら竦み上がっていた夜羽が、臆する事なく見つめ返す。何故か、怯んでしまった。
「赤井君たちがわざわざここまで来なきゃいけなかったのって、稲妻さんの卒業が大きいと思うんだ。あの人が地元で睨みを利かせてたおかげで、平穏に過ごせてたんだから。
とりあえず、稲妻さんと話をしたいかなって……」
「夜羽……」
サングラスがない状態の夜羽は超平和主義のヘタレなんだけど、記憶は残ってるせいか、平気で裏番 (現OB)と仲良くできてるのよね。
「それに……中学でいじめられてた時に何度か二人には助けてもらってたし」
「ちょっとそれ、初耳なんだけど!? あんた一人でどうにかできるじゃない!」
「夜羽さんが本気出すと、下手したら相手死にますからね」
「この人、奥ゆかしいから地元じゃ目立ちたくないんすよ。だから俺らが因縁つけて追っ払ってたんす」
奥ゆかしいんじゃなくて臆病の間違いだと思うけど、二人は正しく夜羽の舎弟を務め上げていた。まあ学ランに赤いサングラスで大立ち回りなんかしてちゃ、噂が私の耳に入らない訳ないもんね。
「心配しなくていいよ、鶴戯にも相談するし、穏便に話し合いで解決するから」
「ヤンキーにそんな理屈が通用する訳ないでしょ!?」
心配するなと言われても、不安しかない。恐らく夜羽は頼る気だ……『赤眼のミシェル』に。
隣市だからと甘く見てるんだろうけど、不良って舐められたら終わりみたいなとこあるから、絶対目を付けられる……今となってはボコボコにされるとは思ってないけど、逆に今回みたいにめんどくさい案件が持ち込まれる可能性の方が高い。
(その穴倉って1年を倒して、茂久市六の裏番になれって言われたら、どうすんの? 嫌だよ、そんな事になったら……)
普段の気弱な夜羽では断り切れないだろうし、サングラス着用時だとノリノリで承諾しそうだ。
「それじゃ、稲妻さんの都合を聞いて連絡します!」
「あ、うん……」
そうして嬉々として帰っていく二人を見送りながら、私は決めた。
△▼△▼△▼△▼
「で、隣市まで尾行ですか……」
電車で茂久市に向かう夜羽から少し離れた席で様子を窺う私に、炎谷さんが呆れた声を出す。あの後、私は彼に相談して夜羽の様子をこっそり見守る事にしたのだ。
夜羽の服のボタンにはGPS機能付きの盗聴器があるので、万が一拉致されてもすぐに対応できるとか……あの時何故か学校内に炎谷さんがいた謎が解けた。
ちなみに夜羽は炎谷さんがついてきてる事は知っているけど、まさか私まで同行しているとは思わないだろう。
「様子を見るだけですからね。美酉さん、絶対に私から離れないでくださいよ」
「分かってますって」
ただし、ヤンキーに勧誘されそうになったら、速攻で夜羽を回収して逃走するつもりだ。
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