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「それで、今回あなたたちは何のために押しかけてきたの?」
夜羽が口を利かないので、仕方なく私が訊ねる。
「そうなんすよ、実は俺らがその茂久市六に入ってからは、番は虻さんになってたんすけど」
「最近、1年の穴倉ってやつが虻さんをのして、新しい番に収まっちまったんすよね」
中空も裏番も卒業して、今や茂久市六はトップの座を巡って争いが起き、派閥もできているんだとか。そんな中、新入生にやたら喧嘩の強い男が入ってきた。
「年下なんだ?」
「すっげー生意気っすよ! あいつ、よりによって花火さんに手ぇ出して、どこまで怖いもの知らずなんだって話で」
「いや……誰?」
「えっ、木前田先輩って稲妻さんの彼女じゃあ……」
今まで貝のように口を噤んでいた夜羽がようやく反応する。置いてきぼりの私が説明を求めると、さっき聞いた裏番が『稲妻龍人』で、その彼女が『木前田花火』って名前らしい。
「いやもうとっくに別れてますけど、龍さんは今でも気にかけてますから。虻さんと付き合う事になった時も取り持ってくれましたし」
「ふーん……その花火って人、不良のトップなら誰でもいいんじゃない?」
人間関係はよく分からないけど、裏番が元カノと後輩の仲を後押しするほど大事に思ってるなら、無理やり物にされるような事は許さないはずだ。新しく穴倉って人と付き合ってるのも、彼女自身の意思なのだろう。
「そ、そりゃねえよ! 虻さんは龍さんから託されて、そりゃもう大切に扱ってたんだぜ!? それがあんな、ぽっと出のガキに……」
「誰に託されたとかじゃなくて、その虻さん? が花火さんを好きかどうかじゃない? 女の子は物じゃないんだから、ちゃんと自分を見てくれない人とは付き合いたくないわよ。……と言っても、トップの彼女ってステータスで見てるのは、お互い様だと思うけど」
その穴倉って人も、花火さんも、お互いを自分に箔をつけるためのアクセサリーとしか見ていない。虻さんがリベンジできれば、花火さんはあっさり彼を捨てるだろう。だけど……それで元鞘に戻れるとは思えない。
ふと、三人が頬を赤らめて私を見ているのに気付いた。何か変な事言った?
「いやぁ、さすが夜羽さんの彼女……女心って全然分かんねぇから参考になるわ」
「俺も、彼女いねぇからな……花火さんを始め、茂久市六の女子は怖い女ばっかだし」
「いや、彼女じゃないし」
「ふえぇ」
赤井君たちが勝手に盛り上がるのを速攻で切り捨てると、夜羽が情けない声を上げた。幼馴染みだからね? ほっとけないからこうして付き合ってあげてるけど!
「言っとくけど、行かせないわよ。どうせ虻さんの敵討ちでも頼むつもりなんでしょ? 夜羽は茂久市六じゃないんだから、あんたらで解決しなさいよ」
「そんな殺生な! あいつに勝てるのは龍さんに認められた夜羽さんだけです!」
「頼んますよ姐さん!」
「誰が姐さんよ! 私も夜羽もヤンキーじゃないんだから巻き込まないで! 帰るよ、夜羽」
立ち上がって促すが、夜羽は俯いて動こうとしない。訝しげに覗き込むと、プルプル震えながらも考え込んでいるようだった。
「夜羽?」
「ミトちゃん……僕、茂久市に行こうと思う」
夜羽が口を利かないので、仕方なく私が訊ねる。
「そうなんすよ、実は俺らがその茂久市六に入ってからは、番は虻さんになってたんすけど」
「最近、1年の穴倉ってやつが虻さんをのして、新しい番に収まっちまったんすよね」
中空も裏番も卒業して、今や茂久市六はトップの座を巡って争いが起き、派閥もできているんだとか。そんな中、新入生にやたら喧嘩の強い男が入ってきた。
「年下なんだ?」
「すっげー生意気っすよ! あいつ、よりによって花火さんに手ぇ出して、どこまで怖いもの知らずなんだって話で」
「いや……誰?」
「えっ、木前田先輩って稲妻さんの彼女じゃあ……」
今まで貝のように口を噤んでいた夜羽がようやく反応する。置いてきぼりの私が説明を求めると、さっき聞いた裏番が『稲妻龍人』で、その彼女が『木前田花火』って名前らしい。
「いやもうとっくに別れてますけど、龍さんは今でも気にかけてますから。虻さんと付き合う事になった時も取り持ってくれましたし」
「ふーん……その花火って人、不良のトップなら誰でもいいんじゃない?」
人間関係はよく分からないけど、裏番が元カノと後輩の仲を後押しするほど大事に思ってるなら、無理やり物にされるような事は許さないはずだ。新しく穴倉って人と付き合ってるのも、彼女自身の意思なのだろう。
「そ、そりゃねえよ! 虻さんは龍さんから託されて、そりゃもう大切に扱ってたんだぜ!? それがあんな、ぽっと出のガキに……」
「誰に託されたとかじゃなくて、その虻さん? が花火さんを好きかどうかじゃない? 女の子は物じゃないんだから、ちゃんと自分を見てくれない人とは付き合いたくないわよ。……と言っても、トップの彼女ってステータスで見てるのは、お互い様だと思うけど」
その穴倉って人も、花火さんも、お互いを自分に箔をつけるためのアクセサリーとしか見ていない。虻さんがリベンジできれば、花火さんはあっさり彼を捨てるだろう。だけど……それで元鞘に戻れるとは思えない。
ふと、三人が頬を赤らめて私を見ているのに気付いた。何か変な事言った?
「いやぁ、さすが夜羽さんの彼女……女心って全然分かんねぇから参考になるわ」
「俺も、彼女いねぇからな……花火さんを始め、茂久市六の女子は怖い女ばっかだし」
「いや、彼女じゃないし」
「ふえぇ」
赤井君たちが勝手に盛り上がるのを速攻で切り捨てると、夜羽が情けない声を上げた。幼馴染みだからね? ほっとけないからこうして付き合ってあげてるけど!
「言っとくけど、行かせないわよ。どうせ虻さんの敵討ちでも頼むつもりなんでしょ? 夜羽は茂久市六じゃないんだから、あんたらで解決しなさいよ」
「そんな殺生な! あいつに勝てるのは龍さんに認められた夜羽さんだけです!」
「頼んますよ姐さん!」
「誰が姐さんよ! 私も夜羽もヤンキーじゃないんだから巻き込まないで! 帰るよ、夜羽」
立ち上がって促すが、夜羽は俯いて動こうとしない。訝しげに覗き込むと、プルプル震えながらも考え込んでいるようだった。
「夜羽?」
「ミトちゃん……僕、茂久市に行こうと思う」
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