天使が来たりてラッパ吹く

白羽鳥(扇つくも)

文字の大きさ
上 下
18 / 49

17

しおりを挟む
『おいチビ。子分を可愛がってくれたのは、てめぇか? 俺が屋久中のアブこと、流虻三ながれあぶぞうと知っててやったんだろうなぁ?』
『ヒューッ! いいぞ虻さん、やっちゃってください!』

 五分後。

『畜生、このままで済ますと思うなよ! 茂久市六もくしろくの鷲さんに連絡しとけ!』
『ええっ、茂久市六もくしろくと言えば、有名なヤン高じゃないっすか……』

 後日。

『お前か? 最近調子乗ってる中坊って奴は。俺は中空鷲尾なかぞらわしおってんだ。いっちょ遊んでもらおうか』

 十分後。

『ぐ……っ、強ぇ……どうやらミシェルの二代目ってのもハッタリじゃねぇみたいだな。これは……俺じゃ荷が重かった……』
『わ、鷲さん!?』

 また後日。

『いい加減つけ回されんのも面倒になってきたから、この際アタマから潰す事にした……あんたが裏番なんだろ? 俺が勝ったらもう手下をうろちょろさせんのやめさせろ』
『中坊がいきなり殴り込んできたかと思えば……おい、お前らこいつに礼儀ってもんを教えてやれ』

 一時間後。

『ハア、ハア……やるな、中坊。あの人の息子だとすれば納得だ……気に入った! お前、茂久市六に入って裏番やれ』
『ぜえ、ぜえ……やなこった! 俺は高校で彼女と平和にいちゃつきたいんだよ。お前ら勝手にやってろよ』
『ハア……ふふふ、全員気絶させながら、よく言うぜ。まあ約束は約束だ、またしつこいバカが出てきたら、連絡くれよ』

『あ、あいつとうとう茂久市六の裏番と引き分けちまったぜ。おい、どうする!?』
『き、決まってるだろ? ……参りました、舎弟にしてください~!!』

  △▼△▼△▼△▼

「……とまあ、勢いのまま隣市一帯まで制圧しちゃったんですよね」
「いやー、かっこよかったよな、夜羽さん」
「へえ、そうなの……茂久市六 (※茂久市立第六高校。県一番の不良校)の裏番とね……そう言えば受験前の大事な時期に、複雑骨折で入院した事あったわよね? 階段から落ちたって聞いてたけど」

 夜羽をちらりと見遣ると、真っ青になって小鹿みたいに震えている。夜羽が中学の時、不良共を蹴散らした事に関しては、炎谷ぬくたにさんから聞いたけど……まさか高校の裏番にまで喧嘩売ってたなんて。

「あの時、どれだけ心配したと思ってんの!? つけ狙われてるなら、言ってくれればよかったのに!」
「ご、ごごごめんなさい! ミトちゃんを巻き込みたくなかったんだよぅ」
「すげぇ、あの夜羽さんが押されてる……さすが『赤眼のミシェル』のスケなだけあるな」
「可愛い顔して、実はゴリラだったりするのか……?」

 おいコラ、私はスケでもゴリラでもない! 普段の夜羽がとんでもないヘタレなだけよ。
 でも困ったわね……なんでこの(自称)舎弟が現れたのか知らないけど、サングラスをかけた夜羽に用があるのは確実だ。もう夜羽には、危ない事してほしくないんだけどな……

しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。 すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。 なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

処理中です...