8 / 49
7
しおりを挟む
「天使クンを傷付けられたくなけりゃ、抵抗するのはお勧めしねえぜ」
男の一人が愉快そうにスマホを振ってみせる。私が変な動きをすれば、先輩たちに連絡するつもりだろう。
誰も通りかかりそうにない空き教室の中、今更ながら私は後悔していた。ちょっと絡まれるぐらいに思って萌たちには何も言わずに来ちゃったけど、戻って来なかった時は先生を呼ぶよう頼めばよかった。いや、その前にヒロシ先輩の浮気の証拠を録音でもしておけばよかったんだ。いつも私はこうだ、考えなしに動いて……
「抵抗しなければ、彼は解放してもらえるの? 牧神先輩とは何の関係もないのよ!」
「そんな事、俺らが知った事か。お前が大人しく遊んでくれりゃいいんだよ。なぁ、牧神?」
不良の言葉と、扉が開いて入ってきた人物に目を見開く。呼びかけようとした口には、ハンカチが突っ込まれた。
(ヒロシ先輩……!)
「美酉、お前が悪いんだよ。俺の言い分も聞かずに一方的に別れるだなんて……女の方から言ってきたのは初めてなんだよ。みんな、大抵は捨てないでくれって縋ってきたからな。
なあ、俺だって相当我慢したんだぜ。普通なら付き合えば速攻がっつくところなのに、お前のペースを守って付き合ってやっただろ? そりゃ、ちょっとはよそで遊んだかもしんねぇけど、学校で他に彼女いねぇのは本当なんだぜ」
自分勝手な言い分をペラペラ語り出すヒロシ……牧神に反吐が出る。最低だ……こんな奴だと知ってたら、最初から付き合おうなんて思わなかった。もうこの野郎の事で泣かないと決めたのに、悔しさで涙が出る。
そんな私の姿に、またも都合のいい解釈をしたようだ。
「俺の優しさが分かったか? けど、今更遅い。お前の方から俺と別れようなんて二度と考えないよう、お仕置きして分からせないといけないな。……おい、ちゃんと彼女だけ撮れよ」
私は机の上に寝かせられ、両手を不良たちに押さえ付けられている。一人はニヤニヤしながらスマホを構えていた……まさか!
「牧神、お前も悪い奴だな! あの女たちがお前の本性知ったら幻滅するぜ」
「金払ったんだから、黙ってろよ。後でお前たちにもおこぼれやるって言っただろ?」
「かわいそうになぁ? ビッチの汚名を着せられた挙句、初めてを数人がかりで奪われる映像をネットに流されるなんて、人生終わりだぜ」
下衆な笑い声に、目の前が真っ暗になる。どうやらあの先輩たちは、不良に襲わせようと画策したらしいけど、牧神はさらにそれを利用して、私を逃がさないための脅迫材料にするつもりなのだ。
こいつら、人間のクズだ! 噛み付いてやりたいのに、夜羽がどうなるのかを思うと、それすらできない。
(くやしい……すごくこわいけど、それ以上にくやしいよ。ごめん、巻き込んで……夜羽)
口を塞がれているため、声にならない嗚咽を漏らす私の足に、牧神の手がかかった瞬間。
『な、何だお前……ぐぁっ!!』
ドカッ!
扉の外で、見張りらしき男の怒声と争う音。
そして何事かと教室内の全員が注目する中、扉が開かれた。
男の一人が愉快そうにスマホを振ってみせる。私が変な動きをすれば、先輩たちに連絡するつもりだろう。
誰も通りかかりそうにない空き教室の中、今更ながら私は後悔していた。ちょっと絡まれるぐらいに思って萌たちには何も言わずに来ちゃったけど、戻って来なかった時は先生を呼ぶよう頼めばよかった。いや、その前にヒロシ先輩の浮気の証拠を録音でもしておけばよかったんだ。いつも私はこうだ、考えなしに動いて……
「抵抗しなければ、彼は解放してもらえるの? 牧神先輩とは何の関係もないのよ!」
「そんな事、俺らが知った事か。お前が大人しく遊んでくれりゃいいんだよ。なぁ、牧神?」
不良の言葉と、扉が開いて入ってきた人物に目を見開く。呼びかけようとした口には、ハンカチが突っ込まれた。
(ヒロシ先輩……!)
「美酉、お前が悪いんだよ。俺の言い分も聞かずに一方的に別れるだなんて……女の方から言ってきたのは初めてなんだよ。みんな、大抵は捨てないでくれって縋ってきたからな。
なあ、俺だって相当我慢したんだぜ。普通なら付き合えば速攻がっつくところなのに、お前のペースを守って付き合ってやっただろ? そりゃ、ちょっとはよそで遊んだかもしんねぇけど、学校で他に彼女いねぇのは本当なんだぜ」
自分勝手な言い分をペラペラ語り出すヒロシ……牧神に反吐が出る。最低だ……こんな奴だと知ってたら、最初から付き合おうなんて思わなかった。もうこの野郎の事で泣かないと決めたのに、悔しさで涙が出る。
そんな私の姿に、またも都合のいい解釈をしたようだ。
「俺の優しさが分かったか? けど、今更遅い。お前の方から俺と別れようなんて二度と考えないよう、お仕置きして分からせないといけないな。……おい、ちゃんと彼女だけ撮れよ」
私は机の上に寝かせられ、両手を不良たちに押さえ付けられている。一人はニヤニヤしながらスマホを構えていた……まさか!
「牧神、お前も悪い奴だな! あの女たちがお前の本性知ったら幻滅するぜ」
「金払ったんだから、黙ってろよ。後でお前たちにもおこぼれやるって言っただろ?」
「かわいそうになぁ? ビッチの汚名を着せられた挙句、初めてを数人がかりで奪われる映像をネットに流されるなんて、人生終わりだぜ」
下衆な笑い声に、目の前が真っ暗になる。どうやらあの先輩たちは、不良に襲わせようと画策したらしいけど、牧神はさらにそれを利用して、私を逃がさないための脅迫材料にするつもりなのだ。
こいつら、人間のクズだ! 噛み付いてやりたいのに、夜羽がどうなるのかを思うと、それすらできない。
(くやしい……すごくこわいけど、それ以上にくやしいよ。ごめん、巻き込んで……夜羽)
口を塞がれているため、声にならない嗚咽を漏らす私の足に、牧神の手がかかった瞬間。
『な、何だお前……ぐぁっ!!』
ドカッ!
扉の外で、見張りらしき男の怒声と争う音。
そして何事かと教室内の全員が注目する中、扉が開かれた。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
従妹と親密な婚約者に、私は厳しく対処します。
みみぢあん
恋愛
ミレイユの婚約者、オルドリッジ子爵家の長男クレマンは、子供の頃から仲の良い妹のような従妹パトリシアを優先する。 婚約者のミレイユよりもクレマンが従妹を優先するため、学園内でクレマンと従妹の浮気疑惑がうわさになる。
――だが、クレマンが従妹を優先するのは、人には言えない複雑な事情があるからだ。
それを知ったミレイユは婚約破棄するべきか?、婚約を継続するべきか?、悩み続けてミレイユが出した結論は……
※ざまぁ系のお話ではありません。ご注意を😓 まぎらわしくてすみません。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
元婚約者様の勘違い
希猫 ゆうみ
恋愛
ある日突然、婚約者の伯爵令息アーノルドから「浮気者」と罵られた伯爵令嬢カイラ。
そのまま罵詈雑言を浴びせられ婚約破棄されてしまう。
しかしアーノルドは酷い勘違いをしているのだ。
アーノルドが見たというホッブス伯爵とキスしていたのは別人。
カイラの双子の妹で数年前親戚である伯爵家の養子となったハリエットだった。
「知らない方がいらっしゃるなんて驚きよ」
「そんな変な男は忘れましょう」
一件落着かに思えたが元婚約者アーノルドは更なる言掛りをつけてくる。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる