異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

文字の大きさ
上 下
186 / 189
タイムリープ編(完結編)

186 預言者ウリス

しおりを挟む
 それから、俺とエリス様の奇妙な生活が始まった。

 エリス様は朝から晩まで絵を描いていた。
 何処かへ出かけて写生することもあれば、一日中アトリエで描き続けることもあった。
 出かけるときは当然俺は荷物持ちだ。ただ、アトリエで描き続けているときは暇である。仕方ないので、千里眼で街の様子を伺ったりして暇をつぶしていた。

  *  *  *

 そんなある日、よく当たる占い師がいると街で話題になっていた。興味を持った俺は転移して覗いてみた。

 それは女占い師だった。
 その人は、朝市の外れで占っていた。占い師を取り巻く人だかりにまぎれて様子を伺っていると、こちらを見てにっと笑った。

「おい、そこの少年!」

 占い師は、突然俺を指差して声を掛けて来た。またか。俺って、声を掛けやすいタイプなのか?

「お前なのだ。我の言葉が聞こえぬわけではあるまい?」だめだ。ごまかせそうもない。

「俺ですか?」おずおずと言った。
「そうだ。ちょっと来るのだ」
「お金なら持ってないけど。占いも要りません」
「構わん。我は、占い師ではないのだ。預言者なのだ」

 なんか怪しいこと言い出した。

「はぁ」
「いいから来い。お主に、女難の相が出ているのだ」はい、今まさに。てか、占い師じゃん。気になって声を掛けたのか?

「いや、今の事ではないぞ?」心も読めるんですか?
「逃げなくてよいのだ」

 思わず後ずさっていたらしい。

「何時の話です?」
「そうだな。我にも分からぬ。すぐ先かもしれぬし、ずっと先かも知れぬ。だが、今ではないのである」

 あくまで「女難」は自分ではないと言い張る預言者。
 これ、怪しすぎる。当たったか外れたか分かんないじゃん! 今なら絶対当たってるのに。

「お主は将来、おなご七人くらいに囲まれるな」

 おお。具体的な話になった。まぁ、そうだね。

「ああ、たぶんその倍くらいいきます」
「なんじゃと? お主、この世界では稀に見ぬ豪傑なのである」

「いえ、来世以降の話です」
「わっははは。なるほど、そうか。面白いことを言うやつなのである。我は……」
「ウリス様ですよね?」
「おお、お主、我を知っているのか。なかなか、目ざとい少年なのだ。名を何という?」
「リュウジです」
「なに? 竜神だと?」

 また、それですか。

「いえ、リュウジです」
「おお、か弱い女を、びっくりさせるでない」どの辺が、か弱かったんですか?

「なにか?」妙に感も鋭い。

「ならば、人聞きが悪いから、そうだな……リュウと呼ぼう」人聞きが悪いとか失礼な!
って、やっぱりリュウかい。

「いいですけど。竜神って、何者です?」
「お前、竜神を知らんのか! 何処に住んでおるのだ?」
「えっと、郊外の森ですけど」
「ああ、あの魔女と一緒なのか。ならば仕方ないな。今、竜神が復活すると話題なのだ」

 エリス様、酷い事言われてますよ。ウリス様こそ魔女っぽいんだけど。

「復活するんですか?」
「そういう話なのだ。なんとか復活を避けるために我ら預言者が王に助言をしているのである」

 王様に? この人、意外と偉い人なのか?
 あれ? もしかして? 竜神って本当に俺の事じゃないよな? 未来からタイムリープして来ただけなんで復活じゃないんだけど? もしかして、あれを復活だと言っている? それとも召喚のことか? これは、知らないってことで押し通すに限るな。

「まぁ、気を付けるのだ。あの女に食われぬようにな!」
「はい。大丈夫です」

 毎日同じベッドで寝てますけど食われてません。ただの抱き枕です。

 なんだ、この世界。俺の妄想か? 本当にタイムリープして来たのか? そういえば、寝るとき周りは女神様だらけだったよな?

 ん? なんで女神様だらけだったんだっけ?

  *  *  *

 戻ってみると、珍しくエリス様は綺麗な服装に着替えて俺を待っていた。

「リュウ? 何処へ行っていた?」
「すみません。ちょっと湖の方へ」

 さらにその先の街まで。

「そ、そうか。あの湖は水が冷たいから気を付けるようにな」
「はい」
「では、これから出かけるから、ついてこい」
「はい。どちらへ?」
「宮廷だ。これを着ろ」

 なんだか、よく分からないが俺用の服が用意されていた。
 とは言っても単に白いシャツと黒のパンツだが。

  *  *  *

 街の門をくぐると、街の中心へとまっすぐ伸びる大通りを進んだ。
 つまり、ここは王都であり中央には王城があると言うことらしい。

 中央付近まで来たら巨大で豪華な王城が見えてきた。近くまで来たら馬車を回して王城横の小さな門へと向かった。

「エリス様、ようこそおいでくださいました」

 門でエリスが一声掛けると、門番はこれが日常であるかのように流ちょうに挨拶した。

「よく来てるんですか?」
「そうだな。宮廷絵師だからな」

 宮廷絵師って、そんなに頻繁に肖像画を描くんだろうか? 妃が沢山いる? 子だくさん? そう考えると、どことなく親しみが湧くな。

「本日は、第三王女の肖像を描く予定だ。十五の成人の記念にな」

 なるほど、この世界は十五で成人か。肖像画は王女様の成長記録というわけだ。

  *  *  *

 馬車を預けて、俺たちは長い回廊を歩いていた。

「おお。久しぶりなのである。森の魔女よ」

 前から来た女が声を掛けて来た。

「ふん。魔女に魔女呼ばわりされるとはな。一回りして普通の人間と言うことだな」

 見ると、ウリス様だった。ちょうど宮廷から出て来たところらしい。

「また、無駄な見合い用の肖像画を描くのであるか?」なるほど。見合いの肖像画を何枚も書くのか。

「憂鬱な未来を売り物にするよりよかろう?」

 ダメだ、二人とも険悪過ぎる。が、ふと見ると二人とも笑っている。険悪ではないのか?

「それは、新しい助手か?」

 俺とは既に会っているので含んだ笑いだ。

「ああ。使えるか、まだ分からないがな」
「ほう。それは楽しみなのである」

「お主は助手は取らぬのか?」
「我に助手は無理なのだ」
「必要なら、貸してやっても良いぞ」なに? おいおい。
「ほう。覚えておくのだ」

 あれ? 意外と仲がいいのか?

「付き合いは長いんですか?」

 ウリス様を見送ってから聞いてみた。

「うん? 今の預言者ウリスか? そうだな。腐れ縁だな」

 やっぱりそうなんだ。

 そんな風にして、俺達は宮廷の奥、第三王女の部屋の前まで来た。

「宮廷絵師エリス。参上いたしました」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

処理中です...