156 / 189
未来視編
156 南北大陸の危機
しおりを挟む
後宮西宮の増築などで忙しくしていたら、さらに追い打ちをかけるような情報が飛び込んできた。
しかも二つ。
「リュウジ、ストーン神国復興隊から連絡が入ってるわよ!」
神界グループ内の連絡が全部俺に上がると俺が何もできなくなるので、アリスが神界グループの渉外担当という事になった。
「なんだ、その復興隊って?」
「三従者隊に対抗してるんじゃない?」
「なんじゃそりゃ。対抗するなら、女神隊だろ?」
「さぁ?」
「いいけど。でも、復興事業はケリスとコリスに任せたって言ったろ~? もう、あいつ等に任せたんだから俺は知らないぞ~っ」
「あら、そうなの? ふぅん。じゃ、そう言っとくわね」
何か含むような言い方だな。
「リュウジ様、大陸連絡評議会からも緊急連絡が入りました」
これはセレーネだ。彼女は神聖アリス教国や大陸連絡評議会の渉外担当をしている。
「ああセレーネ、大陸連絡評議会も主要メンバーから外れてアドバイザーになったんだからそんなに……って、緊急?」
「はい。緊急連絡だそうです。急ぎ、緊急評議会に参加して頂きたいとのこと」
「そうか。緊急じゃしょうがないな。なんの話だろ?」
「詳しくは聞いていません」
「わかった。出てみる」
俺はアトラ大陸の海底探検が終わった後、大陸連絡評議会からも退こうとした。
世界の滅亡は免れたし、色々やり過ぎてるからな。でも、せめてアドバイザーで残ってくれと懇願されて残っている。
まぁ、半分辞めたようなものだ。評議会の発起人ではあるが基本は国の主権を握っている者同士が協議する場だからな。
* * *
臨時の大陸連絡評議会に出席するため、執務室で会議専用神力フォンを接続した。
最近は、マルチスクリーンになって各国代表が一面に映し出され、誰が出席しているのか一目瞭然で分かるようにアップグレードしてある。
「アドバイザーのリュウジ、参加します」ログオン時のメロディに続けて言った。
「おお、リュウジ殿。お待ちしておりました」
現在の評議会代表、ナエル・シュゼール王が応じた。
「どうかしましたか?」
俺は、とりあえず事情を聞くことにした。
「ヒスビス王、すみませんがもう一度報告を」
パルス王国のヒスビス王も評議会副代表に選ばれている。
「分かりました。実は本日、南北大陸に大津波が押し寄せまして、大陸東岸の各国から緊急支援要請が届いています」
ヒスビス王のパルス王国は南北大陸中央の西岸にある。
そんな位置関係もあって、南北大陸ではまとめ役のような立ち位置になっていた。今回の話は東岸の出来事なのでパルス王国には直接的被害は出ていないようだが、友好国のモニ国が被災しているので他人事ではないようだ。
声に、緊張感が漂っている。
「大津波? 大地震でもあったのか?」
「おお、さすがリュウジ殿。やはり関係あるのですね」
ヒスビス王は身を乗り出して言った。
「大津波の少し前に大きな地震がありました。幸い地震による被害は大きくはありませんでしたが、その後の津波で沿岸の家屋が多く流されたとのことです」
なるほど。そういうことか。
「何処が被害が大きいか分かりますか?」
「ナステル王国が最も大きな被害を受けたようです。かの地は陸の孤島ですので支援も困難が予想されます。大陸中央のステル王国南岸にも被害が出ています」
「モニ国はどうでしょう?」
同じ大陸中央なので津波が来ている筈だ。
「はい、モニ国にも津波は押し寄せましたが、城壁で守られていたために事なきを得たようです」
なるほど。都市国家ならではだな。以前訪れた時のしっかりした城壁を思い出した。それでも、城壁外の農地などには被害が出ている筈だ。
「支援はどうなってる?」
「各国から支援物資提供の申し出を受けています」
「そうか。ありがたいな。まずは現地で救助活動をする救助隊をどう編成するかと、支援物資をどう運ぶかだな。支援される側も、受け入れ態勢が必要だ」
「おおなるほど。救助隊ですか」
「確かに受け入れる側の体制も必要ですな」とナエル王。
彼らの反応を見るに、国家間の支援というものに慣れていないようだ。それはそうか。最近まで、やっと生きながらえていた国々だしな。
「緊急に支援が必要な人たちと、ゆっくり支援すべき人たちがいます」
俺は、地球での記憶を探りながら言った。
「ゆっくりした支援は国主体で後から決めて貰えばいいが、まずは被災地での被害者救出を優先すべきでしょう」
俺は専門家じゃないからこの程度の事しか言えないが。
「緊急に支援の必要な人たちですか?」
「ええ、災害時にまず必要な仕事です。瓦礫の中から被害者を助け出したり、けが人の治療をする人たちです。今回は津波で流された人たちを救出するのが急務です」
「おお、なるほど。衛兵や治癒師も足りないでしょうな」とナエル王。
「そうですね」
まずは、大陸連絡評議会が緊急救助隊を組織して支援することになった。
「その緊急救助隊、これを機に大陸間救助体制を築くべきでしょうな?」
支援内容がほぼ決まったところで、ナエル王が言った。
「それがいいでしょう。少なくとも、支援体制を作っておけば、評議会を開催せずとも救助隊が独自に行動出来ます」
「おお、それは素晴らしい」
国際的な救助隊の概念がないから仕方ないよな。
「なるほど、さすがです。では、リュウジ殿、よろしくお願いします」
だよな。
しかも二つ。
「リュウジ、ストーン神国復興隊から連絡が入ってるわよ!」
神界グループ内の連絡が全部俺に上がると俺が何もできなくなるので、アリスが神界グループの渉外担当という事になった。
「なんだ、その復興隊って?」
「三従者隊に対抗してるんじゃない?」
「なんじゃそりゃ。対抗するなら、女神隊だろ?」
「さぁ?」
「いいけど。でも、復興事業はケリスとコリスに任せたって言ったろ~? もう、あいつ等に任せたんだから俺は知らないぞ~っ」
「あら、そうなの? ふぅん。じゃ、そう言っとくわね」
何か含むような言い方だな。
「リュウジ様、大陸連絡評議会からも緊急連絡が入りました」
これはセレーネだ。彼女は神聖アリス教国や大陸連絡評議会の渉外担当をしている。
「ああセレーネ、大陸連絡評議会も主要メンバーから外れてアドバイザーになったんだからそんなに……って、緊急?」
「はい。緊急連絡だそうです。急ぎ、緊急評議会に参加して頂きたいとのこと」
「そうか。緊急じゃしょうがないな。なんの話だろ?」
「詳しくは聞いていません」
「わかった。出てみる」
俺はアトラ大陸の海底探検が終わった後、大陸連絡評議会からも退こうとした。
世界の滅亡は免れたし、色々やり過ぎてるからな。でも、せめてアドバイザーで残ってくれと懇願されて残っている。
まぁ、半分辞めたようなものだ。評議会の発起人ではあるが基本は国の主権を握っている者同士が協議する場だからな。
* * *
臨時の大陸連絡評議会に出席するため、執務室で会議専用神力フォンを接続した。
最近は、マルチスクリーンになって各国代表が一面に映し出され、誰が出席しているのか一目瞭然で分かるようにアップグレードしてある。
「アドバイザーのリュウジ、参加します」ログオン時のメロディに続けて言った。
「おお、リュウジ殿。お待ちしておりました」
現在の評議会代表、ナエル・シュゼール王が応じた。
「どうかしましたか?」
俺は、とりあえず事情を聞くことにした。
「ヒスビス王、すみませんがもう一度報告を」
パルス王国のヒスビス王も評議会副代表に選ばれている。
「分かりました。実は本日、南北大陸に大津波が押し寄せまして、大陸東岸の各国から緊急支援要請が届いています」
ヒスビス王のパルス王国は南北大陸中央の西岸にある。
そんな位置関係もあって、南北大陸ではまとめ役のような立ち位置になっていた。今回の話は東岸の出来事なのでパルス王国には直接的被害は出ていないようだが、友好国のモニ国が被災しているので他人事ではないようだ。
声に、緊張感が漂っている。
「大津波? 大地震でもあったのか?」
「おお、さすがリュウジ殿。やはり関係あるのですね」
ヒスビス王は身を乗り出して言った。
「大津波の少し前に大きな地震がありました。幸い地震による被害は大きくはありませんでしたが、その後の津波で沿岸の家屋が多く流されたとのことです」
なるほど。そういうことか。
「何処が被害が大きいか分かりますか?」
「ナステル王国が最も大きな被害を受けたようです。かの地は陸の孤島ですので支援も困難が予想されます。大陸中央のステル王国南岸にも被害が出ています」
「モニ国はどうでしょう?」
同じ大陸中央なので津波が来ている筈だ。
「はい、モニ国にも津波は押し寄せましたが、城壁で守られていたために事なきを得たようです」
なるほど。都市国家ならではだな。以前訪れた時のしっかりした城壁を思い出した。それでも、城壁外の農地などには被害が出ている筈だ。
「支援はどうなってる?」
「各国から支援物資提供の申し出を受けています」
「そうか。ありがたいな。まずは現地で救助活動をする救助隊をどう編成するかと、支援物資をどう運ぶかだな。支援される側も、受け入れ態勢が必要だ」
「おおなるほど。救助隊ですか」
「確かに受け入れる側の体制も必要ですな」とナエル王。
彼らの反応を見るに、国家間の支援というものに慣れていないようだ。それはそうか。最近まで、やっと生きながらえていた国々だしな。
「緊急に支援が必要な人たちと、ゆっくり支援すべき人たちがいます」
俺は、地球での記憶を探りながら言った。
「ゆっくりした支援は国主体で後から決めて貰えばいいが、まずは被災地での被害者救出を優先すべきでしょう」
俺は専門家じゃないからこの程度の事しか言えないが。
「緊急に支援の必要な人たちですか?」
「ええ、災害時にまず必要な仕事です。瓦礫の中から被害者を助け出したり、けが人の治療をする人たちです。今回は津波で流された人たちを救出するのが急務です」
「おお、なるほど。衛兵や治癒師も足りないでしょうな」とナエル王。
「そうですね」
まずは、大陸連絡評議会が緊急救助隊を組織して支援することになった。
「その緊急救助隊、これを機に大陸間救助体制を築くべきでしょうな?」
支援内容がほぼ決まったところで、ナエル王が言った。
「それがいいでしょう。少なくとも、支援体制を作っておけば、評議会を開催せずとも救助隊が独自に行動出来ます」
「おお、それは素晴らしい」
国際的な救助隊の概念がないから仕方ないよな。
「なるほど、さすがです。では、リュウジ殿、よろしくお願いします」
だよな。
13
お気に入りに追加
582
あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる