異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

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未来視編

153 いまどきの王族と魔法学院

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 神聖アリス教国を始め、大陸連絡評議会に属する国はことごとく国の歴史始まって以来の繁栄を遂げていた。
 先陣を切った神聖アリス教国は特に顕著で、当然のように他の国から手本とされた。
 世界各地に展開した聖アリス教会の協力もあり、各国の政治形態は次第に神聖アリス教国の立憲君主制に近い形へと変貌を遂げていた。

 これは、一種の流行りでもあるのだが、王政による強権を発動する必要がないためもあるだろう。
 国をまとめて他国と争う必要がないからだ。
 襲ってくる者が無ければ守護者は必要ない。もちろん国の政策などはあるが、強引に進める必要がないという事もあるだろう。
 また、エネルギー革命のせいもあり奪うより生み出すほうが速くて確実になった。
 しかも続々と心躍るものが生み出され生活レベルも向上し続けているのだから文句を言う奴などいない。
 勿論、何もせず多くを手に入れようとする輩もいるのだが、女神様を始め神界から多数の神が降臨している世界では、国レベルでよこしまな考えを抱くことはほとんどない。
 全てバレてしまうからな。

 ということで、要するに王様たちは暇になった。
 そしてその王様達の強い要請で魔法学院が設立された。もちろん構想は以前からあり、設立を進めていたのだがスケジュールが大幅に前倒しされたのだ。

 そうなると当然の流れとして集まった生徒は若い魔法使いたち……では無かった。
 魔法自体が新しく普及が始まったばかりだからだ。そこにいるのは雑多な年齢の初級魔法使いということになる。なにしろ魔法ドリンクと魔法免許制度が出来たばかりなのだ。

 まだ、魔法を使うものは少なく社会的なポジションも確定していない。
 これから魔法学院を始め、試行錯誤を繰り返していくことになるだろう。若い魔法使いたちが集う学園ものの展開は当分先の話らしい。

 それにしてもだ。なんで学院を作った王様たち本人が入学してるんだろう? そこまで暇なのか?

  *  *  *

「確か、理事だよね? 理事が同級生って他の生徒が可哀相じゃないか?」

 まぁ、年齢が高くても問題はないのだけど。

「そうだよ。リュウ君のいう通りだよ」とピステル。

「お前もな、テル君。あと俺、先生だから。先生に君付けは止めような」
「そうじゃよ、テル君。おまけに、お主も王様で理事じゃ」とヒュペリオン王。

「お、俺は若いからいいんです!」とピステル。
「いやいや、そういうことは『女神の鏡』を見てから言いましょう」とナエル王。

 昨今、ガラスの鏡は「女神の鏡」と言われている。

「そもそも、ピアス妃の出産が近いのに、こんなところにいる場合じゃないのでは?」

「あ~、それを言うなら、ナ~君もね」

 ナエル王の王妃様も最近懐妊したとのこと。まぁ、王族は育児を乳母たち専門職に任せることが多いから、それほど気にしていないようだが。

「な、ナ~君って。私の名は、元々短いんだから省略せずナエル君でいいでしょ」
「いや、それは許されん」とヒュペリオン王。
「そうだよ、ペリ君の言う通りだよ」

 なんだか、どうでもいい会話が延々と続く特待生の教室であった。

 ちなみに、この場合の『特待生』は優秀な生徒たちを集めた教室と言う意味ではない。むしろ、問題児と言う意味である。特別待遇が必要なのだ。
 また、『理事』と言うのは学院の設立資金を供出しているという意味である。各国から資金提供があってこうなったわけだが、どうも自分が入りたいから出資したようだ。『理事』なら断れないだろうということか?

「あ~。とりえず、王族は特待生クラスにしましたからね。というか、なんで王族でクラスが出来ちゃうんだよ!」

 まぁ、この学院で教える内容が今まで世の中に無かったものだから、年長者が入るのはむしろ当然だ。
 しかし、年齢がバラバラなのはいいとして、ちゃんと講義に出るんだろうか? というか、出られるんだろうか?
 これがかなり怪しい。たぶん先生が大変だな。つまり俺が大変だ。

 そんなわけで、魔法学院と言っても地球での話とは事情が全く違う。

「南北大陸からはマッセム・モニ王子も来ましたから、楽しくなりますね!」

 ナエル王がマッセム王子を誘って魔法免許を取ったあと、そのまま魔法学院に入学して来た。二人ともやる気満々である。

「もう、これは天職ではないかと思います」

 天職って……神界は人間の職業なんて気にしてないと思うぞ。

「マッセム王子、魔法免許が取れたからと言って、それは言いすぎですよ」

 ナエル王が年長者として窘める。が、本人もそう思ってるような顔つき。王様って天職じゃないのかよ。

「ははは。よほど魔法が気に入ったようですね」俺、笑うしかない。
「気に入らない人なんていませんよ」
「その情熱を忘れないようにしてください」

 忘れてもいいけど。むしろ忘れて国に帰ってくれたほうが、家臣は喜ぶかも知れない。

「南方諸国からはカユリ・ミゼル首長もいるしの」

 静かだったヒュペリオン王が指摘した。
 彼の入学目的は、自分の孫たちに魔法を自慢したいってことらしい。ちょっと動機が不純である。

「わ、私の場合は、生徒を引率して来ただけです」

 カユリ・ミゼル首長は、南方諸国の首長としては若く、自国の若者を引き連れて魔法免許を取りに来ていた。
 生徒を引き連れて来てもいいけど、引率なら試験が終われば帰るんじゃ? そのまま魔法学院に入学って、初めからそのつもりだよね、この人。若いだけあって好奇心も強そうだし、ちょっと発想が面白いので期待はしている。

「女性では南大陸からスサ・ナステル王女が入学したのが嬉しいわね」とカユリ首長。

 カユリ首長の隣には、南北大陸最南端の水の国ナステルから来た第一王女がいた。
 彼女の場合も魔法免許の取得に来て、そのまま魔法学園に入学することになった。南北大陸へ使節団として訪問した時は確か十三歳だった筈だから、今年十四歳か。

「スサ・ナステルと申します。皆さま、宜しくお願い致します」

 なかなか出来る子らしい。それに、既に王城でH&Hズとも仲良くなっている。ってか、H&Hズと一緒に魔法学院に入学して来た。そういや、H&Hズも王族だったな。まぁ、この三人が一番学生っぽいのだが。

 特待生クラス
  ヒュペリオン王、ピステル王、ナエル王、マッセム王子、カユリ首長、ヒスイ王女、ヒラク王女、スサ・ナステル王女。

 うーん、王族8人かよ。魔法の教師が神と使徒だからいいのか? まずは教師を育成するのが急務だな。王族以外で。
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