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幻の大陸アトラ編
146 幻の大陸アトラ探検-海底の楽園2-
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二階の通路に水は全くなかった。
天井には魔力による照明と思われる明かりがついている。ただ、ちょっと暗い。
「ここの空気、呼吸できるかしら?」美鈴が聞いて来た。
「真空膜フィールドを切るなよ。呼吸できるとしても、ここは四気圧以上ある筈だ。鼓膜をやられるぞ」
「こ、こわーい。あ、でも使徒だから平気じゃない?」と呑気なことをいう美鈴。
「あ? いや、治癒は出来ても怪我はするだろ。ミリィも気を付けろ。切るなよ?」
「了解、マスター」
調べてみたら一応空気の成分は正常だが、あまりいいとも言えなかった。湿度が高いせいだ。
「この水深で正常な空気を維持しているということは、確かに誰かいるハズね」
空気を分析した女神シリスが中を伺いながら小声で言った。
俺達は、真空膜フィールドを展開したまま階段から通路へ出た。
そして、通路の最初のドアを空けてみて驚いた。
そこには人が何人も倒れていたからだ。いや、人ではない。妖精族だ。
「マスター!」驚いて飛びだすミリィ。
「ちょっと待て。治癒する」
俺は、すぐに状態をスキャンした。病気ではない。衰弱しているだけだ。
「栄養が足りないんだわ」美鈴も分析して言う。
「ラームを……」気づいた妖精族がか細い声で言った。
「そうか! ラームジュースだ!」
「はい、マスター」
ミリィは、常にラームジュースを携行している。俺のベルトに。
俺はベルトから小さいラームジュースの瓶を外すと妖精族に少しだけ飲ませた。
こういう時は、急に栄養を補給するとショックで死んでしまうことがあるという話を思い出したからだ。
「ジュースは少しだけだ。後は水にしておけ。栄養はゆっくり与えるんだ」
「はい、マスター」
ミリィもラームジュースを持って他の妖精族の元へ飛んだ。
「分かったわ」と美鈴。
「了解!」と女神シリス。
それから飛行船に連絡してラームジュースを持って来させ、施設内にいる妖精族に栄養補給して回った。
この施設は人間サイズで作られたようだが、妖精族は一階を何層にも仕切って使っていた。おかげで、ミリィが大忙しだ。狭くて人間では入っていけないからだ。
水は海水から神力や魔力でいくらでも生成できるのでラームジュースだけあれば助けられるのだが、狭い所へ飛んでいけるのはミリィしかいない。
それでも、ミリィは普通の妖精族じゃない。魔王化リングを付けてるからな。素早く飛び回っていた。
* * *
「たすかりました。ありがとうございます」
一通りの栄養補給を終えたところで、この施設の長らしい妖精族の一人が言った。
「まだ、休養と栄養が必要だろう。動けるようになったら俺達の船に案内しよう」
「ですが、ラームのキを。ラームのキをなんとかしないと」
「ラームの木か。どうしたんだ?」
「はい、テンジョウからウミのミズがもれてきて、カレはじめたのです。まだいくらかすくえるキもあるかと。これがないと、ワタシたちはイキていけません」
「大丈夫だ、ラームの木は沢山ある。さっき飲んだラームジュースもそれだ。俺の国で今、ラームを沢山作ってる」
「ですが、ラームのキはワタシたちのイノチです……」
「分かった、俺が何とかするから休め」
「ああ、ありがとうございます。ほんとうに、ありがとうございます」
すぐに最上階へ行ってみた。
普通の温室のようだが植えてあるのは殆どがラームの木だった。
見ると、確かに天井の透明パネルの隙間から海水が漏れている。何度も補修を繰り返した跡があるが限界のようだ。既にかなりの数の木が枯れていた。
俺は海水を止め神力で塩分を取り除き綺麗な水を与えた。
これで、いつでも運べるが、何本残ってくれるかは微妙だ。
その後、妖精族にはしばらく休んでもらい二度目の栄養補給をしてから飛行船に連れていくことにした。
妖精族はおよそ五百名ほどいた。
飛行船に受け入れることはできるが、ちょっと問題があった。気圧が違うのでゆっくり減圧する必要があるのだ。早すぎると血液に溶け込んだガスが気泡になって血流を止めてしまう。いわゆる潜水病だ。
「飛行艇を下してくれ、これを減圧用に使う。それと無害化魔法共生菌も入れておいてくれ」
飛行艇を減圧チャンバー代わりに使うことにした。
飛行艇の気圧を高めておいて、そこに妖精族を連れた俺が転移する。それからゆっくり減圧すれば問題ない。
念のため無害化魔法共生菌の散布もここで出来るし丁度いいだろう。
* * *
「よし、俺に掴まれ」
体が小さいので俺に掴まっていれば一気に転移できるはずだ。
「リュウジが、妖精族だらけになってる」
ミリィが俺の肩に乗ってるので真似したつもりなのか、俺の体のあちこちにつかまって来た。
「あ~、しがみ付かなくていいからな。くっ付いてればいい」
「これ、ちょっと撮っとこう。妖精の鈴生り」
美鈴が面白がってる。俺はラームの木か!
「おお、マスター」
ミゼール、お前も撮るのかよ。
とりあえず、妖精族だらけになった俺は飛行艇と飛行船を何度も行き来した。
五百人と言うと多そうだが、体が小さいので大したことはない。温室のラームの木も数十本移し替えた。さすがに五百人分のラームジュースはないしな。
まぁ、足りなければ転移で神聖アリス教国から持ってくるればいいんだが。
俺達はひとまず都市国家モニに戻ることにした。
天井には魔力による照明と思われる明かりがついている。ただ、ちょっと暗い。
「ここの空気、呼吸できるかしら?」美鈴が聞いて来た。
「真空膜フィールドを切るなよ。呼吸できるとしても、ここは四気圧以上ある筈だ。鼓膜をやられるぞ」
「こ、こわーい。あ、でも使徒だから平気じゃない?」と呑気なことをいう美鈴。
「あ? いや、治癒は出来ても怪我はするだろ。ミリィも気を付けろ。切るなよ?」
「了解、マスター」
調べてみたら一応空気の成分は正常だが、あまりいいとも言えなかった。湿度が高いせいだ。
「この水深で正常な空気を維持しているということは、確かに誰かいるハズね」
空気を分析した女神シリスが中を伺いながら小声で言った。
俺達は、真空膜フィールドを展開したまま階段から通路へ出た。
そして、通路の最初のドアを空けてみて驚いた。
そこには人が何人も倒れていたからだ。いや、人ではない。妖精族だ。
「マスター!」驚いて飛びだすミリィ。
「ちょっと待て。治癒する」
俺は、すぐに状態をスキャンした。病気ではない。衰弱しているだけだ。
「栄養が足りないんだわ」美鈴も分析して言う。
「ラームを……」気づいた妖精族がか細い声で言った。
「そうか! ラームジュースだ!」
「はい、マスター」
ミリィは、常にラームジュースを携行している。俺のベルトに。
俺はベルトから小さいラームジュースの瓶を外すと妖精族に少しだけ飲ませた。
こういう時は、急に栄養を補給するとショックで死んでしまうことがあるという話を思い出したからだ。
「ジュースは少しだけだ。後は水にしておけ。栄養はゆっくり与えるんだ」
「はい、マスター」
ミリィもラームジュースを持って他の妖精族の元へ飛んだ。
「分かったわ」と美鈴。
「了解!」と女神シリス。
それから飛行船に連絡してラームジュースを持って来させ、施設内にいる妖精族に栄養補給して回った。
この施設は人間サイズで作られたようだが、妖精族は一階を何層にも仕切って使っていた。おかげで、ミリィが大忙しだ。狭くて人間では入っていけないからだ。
水は海水から神力や魔力でいくらでも生成できるのでラームジュースだけあれば助けられるのだが、狭い所へ飛んでいけるのはミリィしかいない。
それでも、ミリィは普通の妖精族じゃない。魔王化リングを付けてるからな。素早く飛び回っていた。
* * *
「たすかりました。ありがとうございます」
一通りの栄養補給を終えたところで、この施設の長らしい妖精族の一人が言った。
「まだ、休養と栄養が必要だろう。動けるようになったら俺達の船に案内しよう」
「ですが、ラームのキを。ラームのキをなんとかしないと」
「ラームの木か。どうしたんだ?」
「はい、テンジョウからウミのミズがもれてきて、カレはじめたのです。まだいくらかすくえるキもあるかと。これがないと、ワタシたちはイキていけません」
「大丈夫だ、ラームの木は沢山ある。さっき飲んだラームジュースもそれだ。俺の国で今、ラームを沢山作ってる」
「ですが、ラームのキはワタシたちのイノチです……」
「分かった、俺が何とかするから休め」
「ああ、ありがとうございます。ほんとうに、ありがとうございます」
すぐに最上階へ行ってみた。
普通の温室のようだが植えてあるのは殆どがラームの木だった。
見ると、確かに天井の透明パネルの隙間から海水が漏れている。何度も補修を繰り返した跡があるが限界のようだ。既にかなりの数の木が枯れていた。
俺は海水を止め神力で塩分を取り除き綺麗な水を与えた。
これで、いつでも運べるが、何本残ってくれるかは微妙だ。
その後、妖精族にはしばらく休んでもらい二度目の栄養補給をしてから飛行船に連れていくことにした。
妖精族はおよそ五百名ほどいた。
飛行船に受け入れることはできるが、ちょっと問題があった。気圧が違うのでゆっくり減圧する必要があるのだ。早すぎると血液に溶け込んだガスが気泡になって血流を止めてしまう。いわゆる潜水病だ。
「飛行艇を下してくれ、これを減圧用に使う。それと無害化魔法共生菌も入れておいてくれ」
飛行艇を減圧チャンバー代わりに使うことにした。
飛行艇の気圧を高めておいて、そこに妖精族を連れた俺が転移する。それからゆっくり減圧すれば問題ない。
念のため無害化魔法共生菌の散布もここで出来るし丁度いいだろう。
* * *
「よし、俺に掴まれ」
体が小さいので俺に掴まっていれば一気に転移できるはずだ。
「リュウジが、妖精族だらけになってる」
ミリィが俺の肩に乗ってるので真似したつもりなのか、俺の体のあちこちにつかまって来た。
「あ~、しがみ付かなくていいからな。くっ付いてればいい」
「これ、ちょっと撮っとこう。妖精の鈴生り」
美鈴が面白がってる。俺はラームの木か!
「おお、マスター」
ミゼール、お前も撮るのかよ。
とりあえず、妖精族だらけになった俺は飛行艇と飛行船を何度も行き来した。
五百人と言うと多そうだが、体が小さいので大したことはない。温室のラームの木も数十本移し替えた。さすがに五百人分のラームジュースはないしな。
まぁ、足りなければ転移で神聖アリス教国から持ってくるればいいんだが。
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