異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

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南方諸国編

133 南方諸国へ-帰還-

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 翌日、俺達はアマデ島を離れる前に飛行艇で島の遊覧飛行をしてみることにした。

 何故って、このアマデ島はかなりデカいからだ。
 東西に千キロメートル、南北に六百キロメートルもある。島というより大陸に近い。
 しかも真ん中にデンと富士山のような高い山のアマデ山が聳えている。アマデはもともと、この山の名前なのだそうだ。もう、ビデオを撮りまくりたい衝動が抑えられないという訳だ。
 ついでにアマデのギル首長に解説してもらえば確実な情報源として記録に残せるということもある。
 普通に島の外周を飛ぶだけでも最低三時間はかかる計算だ。降りて解説してもらうとなれば予定も立たないので中央大陸への帰還は更に一日延すことにした。

  *  *  *

「なんと、この小神殿の快適なこと。恐れ入りました」

 ギル首長の一日は、今日も驚きから始まった。

 アマデ山の北側は熱帯に近く、南側は亜熱帯になっている。
 このため、山の北と南では生活様式が大きく違っているようだ。首都ラスはその中間に位置している。ただ、アマデ島の特色はそれだけではない。

 首都ラスを発進した俺達は、まずアマデ島の南側に向かった。
 百キロほど南下すると大きな河を渡る。

「アマデの涙です」

 眼下の大河を眺めながらギル首長が教えてくれた。何でそんな名前なんだろう?

「面白い名前ですね。何か謂れがあるのですか?」

「しょっぱいんです」
「え? もしかして、岩塩が溶けだしてるのですか?」
「はい。ですので海の魚が混じっています。おかげで、その周りの土地が御覧のように荒野となってしまっています」塩害かな?

 海の魚が獲れるのはいいのか? 貝とかも獲れるよなきっと。

「まさに、細い海ですな!」とミモザ王。

 そんな言い伝えでもあるのかな?

  *  *  *

 更に百キロほど飛ぶと島の南端に到達した。
 アマデ島の南の海岸は絶壁だった。

「うわ~、マスター、こわ~い」

 絶壁を眺めながら壁沿いに海上を東へ飛ぶと、その景色を見てミリィが怯えた。

「ミリィはこういう景色って見たことないんだよな?」
「うん、妖精の森から出たことないからね!」

 そうだったな。
 とはいえ、何時まで経っても絶壁で面白味がない。

「ね~、また海の中に潜りたい!」

 ミリィもさすがに飽きたのか、そんなことを言い出した。

「おお、噂の海中探検ですか!」

 ギル首長、期待してるようだ。まぁ、宴会で話に聞いただけじゃなくて映像も見たからな。

「よし、潜ろう!」

 俺は、運転席のミゼールに指示を出した。

 断崖絶壁ではあるが岩場だし、人がいる島の海なので潜ると魚影が濃かった。
 絶壁から距離を取って海の中をゆっくりと進むと、ミリィは相変わらず展望窓を飛び回って魚を追いかけている。

「えっ? 何あれっ!」そのうち、美鈴が何か見つけた。

 見ると、海中に人工の構造物のようなものが見えた。

「何かの遺跡でしょうか?」俺はギル首長を見る。

「さぁ? 私は、聞いていませんね。南側の海は波も荒いためにあまり寄り付かないんです」

 なるほど、人が来ないのなら遺跡があっても見つかることもないか。
 俺達はとりあえず、遺跡と思われる辺りをぐるっと回って映像に記録した。
 明らかに街の跡と思われる構造物がかなり広い範囲に広がっている。これほどの規模のものが、なぜ沈んだのかは分からないという。

「海の中というのは、我々の知らないものが眠っているのですね!」とギル首長。
「まさしく、未知の世界じゃな」とヒュペリオン王。
「そうですね。私もちょっと自分の国の海を探検したくなりました」とピステル。

 確かにカセームの海にも似ているかも知れない。

「昔は、人間も海に住んでたの?」

 これはミリィの素直な感想。遺跡が海の中だからな。

「そんな器用な人はいない。ああ、でも、生物は元は海から来たからあながちウソでもないな」
「えっ? 婿殿そうなのか?」ちょっと、ぎょっとした顔のヒュペリオン王。
「リュウジ殿それは本当か?」とナエル王。
「何故俺は泳げないんだろう?」とピステル。それは関係ないぞ。
「まことでしょうか?」とミモザ王。
「信じられん!」とギル首長。

 ああ、そうか。進化論とかこの世界にないもんな。

「ああ、まぁ、本当に遠い昔。何億年も前の話です」
「ま、マスター長生き~っ!」とミリィ。
「そんなわけないだろ」

 まぁ、これからは可能かも知れないのだが。
 ちょっと悩むというか恐ろしいところだ。

「ほんとうですか? 神様なのでそのくらい生きているのかと思いました」とミモザ王。

 ああ、確かにそういう話はしてないもんな。そう思われるか。最近まで人間でしたとか話すの面倒だな。

「ま、そういう学問があるんですよ」

 適当に誤魔化すことにした。キリがないからな。

 それにしても、誰も知らない遺跡が海中に存在するって変だと思う。
 伝説くらい残っていてもおかしくないのだが。

  *  *  *

 アマデ島の東端に到達したところで飛行艇はまた上空へと上昇させた。
 そこには南側とは全く違う肥沃な土地が広がっていた。

「こちらには塩の河が無く普通に作物が育ちます」

 見ると、確かに緑の濃い土地が広がっていた。
 緩い湾になっているせいか海岸は白浜で綺麗だった。それでも一応は外海なので波は高めだがリゾートとして使えるかも知れない。

「綺麗な浜辺だね~っ? ちょっと寄って行かない?」美鈴が言い出した。
「あ? 海水浴か?」
「そう!」

「海水浴とは、なんでしょうか?」

 不思議そうなミモザ王。ギル首長も同じだ。

「ああ、浜辺で水遊びをすることです」
「面白いのですか?」

 ああ、確かに、南国の海沿いの人達にしてみれば日常かも。子供が遊ぶくらいか。

「海のない内陸に住む人間にとっては楽しいのですよ。逆に、海辺の人は山登りで遊ぶのが楽しいでしょう?」

「ああ、なるほど」

 一応は納得しているようだが、もしかすると大人が遊ぶこと自体が珍しいのかも知れない。

 俺は飛行艇を浜辺に下ろして、何故か積んであるパラソルなどの遊び道具を披露してみた。ルセ島のリゾートセットだ。
 水着はそれぞれの出身によって違うものをつけている。って、みんないつの間に用意してるんだ?

「なるほど、リゾートではこうやって遊ぶのですね」とミモザ王。

 パラソルを開いてシートを敷き浜辺で遊ぶ美鈴やアリス達を見て、南国の王様たちは感心頻り。交易が始まったらモザ島もリゾート化の可能性があるから他人ごとではない。
 泳げなくて見てるだけの王様達には冷たい飲み物を出してあげた。

「そうか、こういう仕事もありえるのか」ギル首長も理解した様子だ。

 意外と気に入っている? さすがに、人が多くて神界リゾートには出来そうもないけど普通のリゾートならいけると思う。

「きゃ~、マスターしょっぱ~いっ」

 あ、ミリィ、初めての海かぁ。そりゃ、楽しいかもな。っていうか、水着どうした?

「ふっふっふ。どうよ。私に抜かりはないわよ」と美鈴。なんだそれ。
「美鈴、お前がミリィの水着作ったの?」
「そうよ。上手いでしょ!」
「うん。でも、スク水はないだろ?」
「テヘッペロ」
「おいっ」

 美鈴を始め、侍女隊、アリス達、ミリィは海水浴というか文字通り飛び回って、空中を飛んだり海中に飛び込んだりして大はしゃぎだ。
 「飛行艇ごっこ」らしい。
 あぁ、シュノーケルとか作ったほうがいいかな? まぁ、うちのメンバーは神力でフィールド作って空気を溜めるからいらないんだろうけど。ミリィも真似してなんとかフィールド張ってる。
 でも、これが普通のリゾートの遊び方と思われるとちょっと違うが。

 ただ、海側は華やかだが、砂浜の男たちがうざいので、俺は海側に混ざることにした。

「あ、リュウジ殿、俺も仲間に入れてくれ」とピステルも抜けてきた。
「兄様、早く来るの~」とクレオ。
「良かったらなテル君、妹がいて」
「うん。感謝してる」
「兄様もっ、はやく~っ」とシュリ。
「お、おう。じゃ、失礼して」そうか、ナエル王にもシュリがいたか。

 浜辺で残ってるの、王様と首長なんだけど。ま、こっちは神様と使徒だから文句言えないか。
 ちなみにピステルとナエル王は飛べないので、いまいち仲間に入れていない。

 俺達は一日アマデ島を満喫した。
 今の状態でも結構見れるし遊べた。そんなことを言ったら、ギル首長も満更でもない様子。これは未来のリゾートとして期待出来るかも。

  *  *  *

 これで、大陸連絡評議会の使節団のミッションは全て完了した。
 後は帰るだけだ。いろいろ提供した物もあるが得たものも大きい。もう他に大陸はないよな? いきなり海中からせり出して来たりしないよな?

ー 心配しすぎ、リュウジなんかトラウマになってる? この星にはもう大陸はないわよ。
ー この星……
ー 大丈夫、私の担当はここだけだから。っていうか、この星しか救わないでしょ?
ー そうなんだが、どうも最近ドツボにはまる俺的な展開が多いんだよな。
ー ああ、そうね。人間やめたかと思ったら使徒になるし、さらに神になって、そのあと更に上位神だもんね。
ー もう、なんで勝手に話進むんだろ? もうちょっとゆっくり進んでもいいと思わないか?
ー 普通は、そうなんだけどね。ま、これも運命なんでしょ?
ー ウリス様のせいか!

 ま、それはともかく、やっとこれで落ち着いた生活が出来るようになるってものだ。
 たぶん。
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