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南方諸国編
129 南方諸国へ-「セルー島」-首都ラース
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セルー島の代表マセル王との会談で俺達の本来の訪問理由については簡単に承認された。
神様が来て言うことなのでそのまま従ってしまうのもあるが、魔法共生菌については被害が出ていないのでいまいち関心が薄いようだ。無害化魔法共生菌散布については俺の肩に乗ったミリィが妖精族に安全なことを証明しているし、神様が勧める予防措置なら文句などないといったところか。
この日は既に遅くなっていたのでパノラマ映像を使ったセレモニーは明日とし、今夜は歓迎の宴のみとなった。
美鈴たちには神魔動ストリングレコーダーで積極的に録画してくれと頼んでおいた。もちろん飛行船でも録画している。
「言われなくても、もう撮ってるよ」美鈴は楽しそうに録画していた。
エリス様が一番楽しそうだった。こんなに楽しそうなエリス様もあまり見ない。
* * *
「ラームの栽培を試されるのですか。それは素晴らしい。成功をお祈り致します。私どもでは何度も試しましたが終ぞ上手くいきませんでした」
夕方、宴席でマセル王が俺達の話を聞いて言った。
「そんなに難しいのですか。単純にはいかないのかな? ダメならミリィを連れていけないな」
「今のところ大丈夫だよ」ミリィが元気よく言う。セルー島BOXの様子は見ていたらしい。
「どんなふうに栽培したのでしょう?」
「はい、私どもセルー王国は果実の栽培が盛んな国です。国中が果樹園のようなものですので、その中のいくつかの農園で試しました」
「妖精族と協力して試したのですか?」
「いえいえ、滅相もありません。妖精様は妖精の森から出ることはありませんから、私どもは種や苗木を貰って栽培したので御座います」なるほど。
「土はどうでしょう?」
「土ですか? はて、しばしお待ちを」といって、横の者に「担当のものを」と指示した。
少しして、果樹園の専門家と思われる男がやって来た。
「ラームの栽培を手掛けたそうですが」
「はい。出来る限りのことはしたのですが、上手くいきませんでした」
農園の技術者らしいオヤジだが残念そうに言った。
「土はどうしました?」
「土は、同じ島なので特に取り寄せてはいません」
「そうですか」
それだけ難しいとなると普通の原因ではないんだろう。まぁ、土もまとめて一緒に移し替えたので大丈夫とは思うが。特別な成分を含む可能性もあるかもしれない。
「実際に植えたものはどうなったのでしょう?」
「はい、種から育てる場合は、一応芽を出すのですが、その後発育しません」
「発育しない。なぜだろう?」
「分かりません。苗の場合は、数日で萎れてしまいます」
「病気などではないのですね?」
「はい。そのような病気は覚えがありません」
「なるほど。あとで土を貰ってもいいですか?」
「はい。同じ土を用意しておきます」
「ありがとう。とても参考になりました」
「いえ、お役に立てず、申し訳ございません」
男は、すまなそうに言って帰って行った。
「こんな状況でして、私も諦めました」マセル王が残念そうに言った。
「なるほど。あとで研究してみましょう。何か分かったらご連絡します」
「おお、よろしくお願いします」
宴のテーブルの上には南国のフルーツが山盛りに積まれていた。どれも、旨いものばかりで交易が始まるのが楽しみだ。
* * *
翌日、パノラマスクリーンを首都ラースの上空に表示して大陸連絡評議会加盟セレモニーを行った。
ここでも七人の侍女隊は大人気だった。もっとも、病気の心配は無かったので祭りのような楽しいイベントという感じだ。遠くの国からの来た珍しい客人を歓迎してくれているのが良くわかった。
街の住民の服装も明るいものが多く、ここはリゾートとしても有望なんじゃないかと思う。
その後、果樹園の土を貰ってラームの種を蒔いてみた。
ミリィがやる気を出していたので、これは任せることにした。飛行船はラームだらけになりそうだ。
それと、ミリィは一日に十個ほど食べていたラームをあまり食べなくなった。五個くらいでおなか一杯って顔をするようになったのだ。これは魔王化リングのせいかも知れない。魔力をあまり使わなくなったからな。
ちなみに、今回の使節団派遣では頻繁に嫁達と連絡しているのだが、当然ミリィを紹介した。
「これはミリィ。妖精族で俺の従者になった。従者だからな。間違えるなよ。間違っても嫁じゃないからな!」
「え~? なに、その可愛いくてちっちゃいアリスちゃん! どうしたの? どこで貰ったの?」全然俺の話を聞いてないし。
「ちっちゃいアリスちゃん」アリスが微妙な顔をしている。
「いや、ぬいぐるみじゃないないし。ほら」
俺が肩の上のミリィの頬をつつくと、可笑しそうに笑った。
「あ、本物だ」
「本物だよ。だから、妖精族だって」ミリィは俺の肩からちょっと浮いて見せた。
「え~っ。飛んでるじゃん。妖精だぁ!」とニーナ。
「いや、お前だって飛べるじゃん。お前、妖精かよ」
「妖精よっ」そうですか。ごめんなさい。
「おいっ」
「ふふふっ。でもそれ、羽っぽいんだけど?」ニーナは覗き込むようにして言った。
「ああ、これ拘束フィールドの変形らしいよ。防御フィールドかと思ったけど空気をつかんでるから拘束フィールドだな。こうすれば弱い魔力でも飛べるらしい」
「ああ、なるほど。高速で空気をつかんでるんだ。賢いね」
「まぁ、魔王化リングを渡したので、もう普通に飛べるんだけどな」
「へぇ~。ってことは、魔法共生菌なの?」
「そういうこと。もう無害化魔法共生菌に置き換わってるけど、元々ここで妖精族と共生していたらしい」
「ええっ! ほんと? じゃぁ、大元にたどり着いたってこと?」
「あ、そういえばそうだな。魔法共生菌の発生源にたどり着いたわけか」
「大成功じゃん!」
「多分な。ただ、ここの魔法共生菌は無害なんだ」
「どういうこと?」
「普通の人間とは共生しない。妖精族限定なんだよ」
「じゃ、人間に感染するようになったのはそこじゃないってことね?」
「そうなるな」
大元にはたどり着いたが、悪性になった大元は通り過ぎてしまったと言うべきか。
* * *
「ところで、ミリィのその服って誰が作ってるんだ?」
俺は、寝る支度をしつつ、一緒に付いて来たミリィに聞いてみた。
「これは、ラームの実の皮からワタシたちが作ってる」
ミリィはラームの鉢の様子を見ながら答えた。
「ほう。器用なもんだな。でも、気候が変わると渇いてカピカピにならないか?」
「かぴかぴ?」
「うん、固くなったりしそう」
「そうよね!」横で聞いてた美鈴が食いついた。
「じゃ~、私が作ってあげるよ。これでもフィギュア用の洋服とか得意だったのよ」と美鈴。ほぉ。
「ほんとに? 嬉しい!」とミリィ。まぁ、フィギュアの洋服でいいのか?
「凄い特技があるんだ」
「任してよ」
「で、なんでお前は俺のベッドにいるんだ?」
「アリスさんもいるし、ミリィもいるからいいでしょ?」
俺より先に入って、ベッドから答える美鈴。
「いや、あ~、まぁいいか。みんな似たようなもんか」
「一緒くたにしないでよ」と美鈴。そんなこと言われても、区別が難しいのだ。
「そうよ」とアリス。
「なになに?」ミリィには分からないよな?
「いいから寝ろっ」
俺たちは、セルー島を飛び立って隣の島モザを目指した。
神様が来て言うことなのでそのまま従ってしまうのもあるが、魔法共生菌については被害が出ていないのでいまいち関心が薄いようだ。無害化魔法共生菌散布については俺の肩に乗ったミリィが妖精族に安全なことを証明しているし、神様が勧める予防措置なら文句などないといったところか。
この日は既に遅くなっていたのでパノラマ映像を使ったセレモニーは明日とし、今夜は歓迎の宴のみとなった。
美鈴たちには神魔動ストリングレコーダーで積極的に録画してくれと頼んでおいた。もちろん飛行船でも録画している。
「言われなくても、もう撮ってるよ」美鈴は楽しそうに録画していた。
エリス様が一番楽しそうだった。こんなに楽しそうなエリス様もあまり見ない。
* * *
「ラームの栽培を試されるのですか。それは素晴らしい。成功をお祈り致します。私どもでは何度も試しましたが終ぞ上手くいきませんでした」
夕方、宴席でマセル王が俺達の話を聞いて言った。
「そんなに難しいのですか。単純にはいかないのかな? ダメならミリィを連れていけないな」
「今のところ大丈夫だよ」ミリィが元気よく言う。セルー島BOXの様子は見ていたらしい。
「どんなふうに栽培したのでしょう?」
「はい、私どもセルー王国は果実の栽培が盛んな国です。国中が果樹園のようなものですので、その中のいくつかの農園で試しました」
「妖精族と協力して試したのですか?」
「いえいえ、滅相もありません。妖精様は妖精の森から出ることはありませんから、私どもは種や苗木を貰って栽培したので御座います」なるほど。
「土はどうでしょう?」
「土ですか? はて、しばしお待ちを」といって、横の者に「担当のものを」と指示した。
少しして、果樹園の専門家と思われる男がやって来た。
「ラームの栽培を手掛けたそうですが」
「はい。出来る限りのことはしたのですが、上手くいきませんでした」
農園の技術者らしいオヤジだが残念そうに言った。
「土はどうしました?」
「土は、同じ島なので特に取り寄せてはいません」
「そうですか」
それだけ難しいとなると普通の原因ではないんだろう。まぁ、土もまとめて一緒に移し替えたので大丈夫とは思うが。特別な成分を含む可能性もあるかもしれない。
「実際に植えたものはどうなったのでしょう?」
「はい、種から育てる場合は、一応芽を出すのですが、その後発育しません」
「発育しない。なぜだろう?」
「分かりません。苗の場合は、数日で萎れてしまいます」
「病気などではないのですね?」
「はい。そのような病気は覚えがありません」
「なるほど。あとで土を貰ってもいいですか?」
「はい。同じ土を用意しておきます」
「ありがとう。とても参考になりました」
「いえ、お役に立てず、申し訳ございません」
男は、すまなそうに言って帰って行った。
「こんな状況でして、私も諦めました」マセル王が残念そうに言った。
「なるほど。あとで研究してみましょう。何か分かったらご連絡します」
「おお、よろしくお願いします」
宴のテーブルの上には南国のフルーツが山盛りに積まれていた。どれも、旨いものばかりで交易が始まるのが楽しみだ。
* * *
翌日、パノラマスクリーンを首都ラースの上空に表示して大陸連絡評議会加盟セレモニーを行った。
ここでも七人の侍女隊は大人気だった。もっとも、病気の心配は無かったので祭りのような楽しいイベントという感じだ。遠くの国からの来た珍しい客人を歓迎してくれているのが良くわかった。
街の住民の服装も明るいものが多く、ここはリゾートとしても有望なんじゃないかと思う。
その後、果樹園の土を貰ってラームの種を蒔いてみた。
ミリィがやる気を出していたので、これは任せることにした。飛行船はラームだらけになりそうだ。
それと、ミリィは一日に十個ほど食べていたラームをあまり食べなくなった。五個くらいでおなか一杯って顔をするようになったのだ。これは魔王化リングのせいかも知れない。魔力をあまり使わなくなったからな。
ちなみに、今回の使節団派遣では頻繁に嫁達と連絡しているのだが、当然ミリィを紹介した。
「これはミリィ。妖精族で俺の従者になった。従者だからな。間違えるなよ。間違っても嫁じゃないからな!」
「え~? なに、その可愛いくてちっちゃいアリスちゃん! どうしたの? どこで貰ったの?」全然俺の話を聞いてないし。
「ちっちゃいアリスちゃん」アリスが微妙な顔をしている。
「いや、ぬいぐるみじゃないないし。ほら」
俺が肩の上のミリィの頬をつつくと、可笑しそうに笑った。
「あ、本物だ」
「本物だよ。だから、妖精族だって」ミリィは俺の肩からちょっと浮いて見せた。
「え~っ。飛んでるじゃん。妖精だぁ!」とニーナ。
「いや、お前だって飛べるじゃん。お前、妖精かよ」
「妖精よっ」そうですか。ごめんなさい。
「おいっ」
「ふふふっ。でもそれ、羽っぽいんだけど?」ニーナは覗き込むようにして言った。
「ああ、これ拘束フィールドの変形らしいよ。防御フィールドかと思ったけど空気をつかんでるから拘束フィールドだな。こうすれば弱い魔力でも飛べるらしい」
「ああ、なるほど。高速で空気をつかんでるんだ。賢いね」
「まぁ、魔王化リングを渡したので、もう普通に飛べるんだけどな」
「へぇ~。ってことは、魔法共生菌なの?」
「そういうこと。もう無害化魔法共生菌に置き換わってるけど、元々ここで妖精族と共生していたらしい」
「ええっ! ほんと? じゃぁ、大元にたどり着いたってこと?」
「あ、そういえばそうだな。魔法共生菌の発生源にたどり着いたわけか」
「大成功じゃん!」
「多分な。ただ、ここの魔法共生菌は無害なんだ」
「どういうこと?」
「普通の人間とは共生しない。妖精族限定なんだよ」
「じゃ、人間に感染するようになったのはそこじゃないってことね?」
「そうなるな」
大元にはたどり着いたが、悪性になった大元は通り過ぎてしまったと言うべきか。
* * *
「ところで、ミリィのその服って誰が作ってるんだ?」
俺は、寝る支度をしつつ、一緒に付いて来たミリィに聞いてみた。
「これは、ラームの実の皮からワタシたちが作ってる」
ミリィはラームの鉢の様子を見ながら答えた。
「ほう。器用なもんだな。でも、気候が変わると渇いてカピカピにならないか?」
「かぴかぴ?」
「うん、固くなったりしそう」
「そうよね!」横で聞いてた美鈴が食いついた。
「じゃ~、私が作ってあげるよ。これでもフィギュア用の洋服とか得意だったのよ」と美鈴。ほぉ。
「ほんとに? 嬉しい!」とミリィ。まぁ、フィギュアの洋服でいいのか?
「凄い特技があるんだ」
「任してよ」
「で、なんでお前は俺のベッドにいるんだ?」
「アリスさんもいるし、ミリィもいるからいいでしょ?」
俺より先に入って、ベッドから答える美鈴。
「いや、あ~、まぁいいか。みんな似たようなもんか」
「一緒くたにしないでよ」と美鈴。そんなこと言われても、区別が難しいのだ。
「そうよ」とアリス。
「なになに?」ミリィには分からないよな?
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