上 下
115 / 175
南方諸国編

115 無重量レジャーランドを作る

しおりを挟む
 マッハ神魔動飛行船が出来た時、無重量遊園地を作ったら面白そうだなと思ったが、ある日の夕食後に談話室で話題にあげてみた。

「む、婿殿、それは何時作ってくれるのじゃ?」

 ヒュペリオン王が、思いっきり食いついて来た。

「へ? いや、作ったらオモシロイかなと?」
「おもしろい! それ、絶対面白いから、直ぐ作ってほしいのじゃ!」

 そういや王様、いつまで居るんでしょう?

「リュウジ殿、それは是非に実現してもらいたい!」

 ピステルまで食いついて来た。

「まだ居たんかい」

「酷い。大陸連絡評議会があると思って待ってただけなのに」
「分かった。悪かった」でも、終わったよ?

「で、いつ作ってくれるのじゃ?」とヒュペリオン王。
「なんで、そんなに食いつくかなぁ。王様も、ピステルも」

「な、婿殿。婿殿は自分で飛べるから、そんなことを言っておるのじゃ」
「そうだよ。ヒップ王のいう通りだよ」とピステル。

「ひ、ヒップ王とは誰のことじゃ?」
「あ、だめ? ヒュペリオン王を略してヒップ王」

「なんじゃその略し方は! ペリオンとかペリ君じゃろ?」
「じゃ、ペリオン王で」
「とにかく、わしらも飛んでみたいのじゃ!」
「そうだよ。ペリ君のいう通りだよ」ペリオン王どこ行った?

「う、うん。なんとなく分かった」
「婿殿、そこはなんとな~くじゃなくて、ぜひ確約してほしいのじゃ」
「そんなにですかぁ」
「そんなにじゃ」
「そんなにだよ」
「そんなにです」とヒスイ。
「そんなにだよ~」とヒラク。

 南北大陸から付いて来た侍女ヒスイとヒラクまで食い付いて来た。

「そうか、じゃ~作ってみるか」
「おおおおっ。さすが婿殿」
「やったね!」
「すてきっ!」
「やった~」お前ら、遊ぶ気満々だな。侍女はどうした。

 まぁ、この城に出入りする人たちは、俺や嫁達が飛ぶのを見ているだけに一度飛んでみたいと思うのかも知れない。

  *  *  *

 ということで、ミルルとランティス、スペルズ兄弟と話してみた。

「おおおっ、それ待ってました~」

 ランティスまで食い付いて来た。

「へっ?」
「いや、いつかきっとリュウジさんが作ってくれるって信じてました~っ」

 思いっきり前のめりのランティス。

「いや、君達が作るんだけど?」
「あ、そうですね。でも作るとなると大がかりになって大変じゃないですか。資金も必要ですし」

「まぁ、そうだな」
「空を飛ぶってどんな気持ちなんだろうって、ずっと思ってたんですよ」

 ランティスはそんなことを考えてたようだ。

「そうだよね。兄貴と魔道具作りながらも飛んだ経験がないから分からなかったんです」スペルズも同じか。

「ああ、なるほど。魔道具作りにも生かせるか」
「はい、絶対生かせます」とランティス。

「なるほど。まぁ、外周エンジンの空間加速装置があるから、あれで重力を打ち消すだけで出来ちゃうけどな」

「そうですね! 真空膜フィールドはそのままでいいんですか?」とランティス。

「いいだろう。中で騒いでる音が外に漏れないほうがいい。そうすると換気装置は必要だな。空気浄化装置も付けとくか」
「はい。あと、念のためクッションを敷きますか?」

 なんか、いろいろ考えてたっぽいな?

「うん。それと、無重量で飛べるように、小さい加速器は必要かもね。ベルトに付けて加速は体全体に掛ければ本当に魔法で飛んでるみたいになる」

「ああ、なるほど。魔法体験できますね!」とスペルズ。
「そう。まるで魔法使いになったような飛翔体験。魔石で、弱い加速を掛けよう」

「方向とか、オンオフの制御は?」とスペルズ。
「そうだな。足の向きで方向、オンオフは手かな」

「おお、ホントに飛べるんだ!」

 ランティスは、既に出来上がった時のことを思い描いてる模様。

「やったね兄貴!」
「クッションは、どうするかな?」

「クッションも必要だと思うけど、ベルトに付ける飛翔装置を安全装置にも出来るんじゃない?」これはミルルだ。
「浮遊装置が壊れた時でも安全に着地できるよ」

「そうですね! さすがミルルの姉貴!」とランティス。
「いいですね!」

 うん。これはいけそう。

  *  *  *

 で、プロトタイプが完成して王城前広間でお披露目となった。

 円形のクッションの上に無重量空間が広がる様になってる。
 この上に球体になった真空膜フィールドがあるので飛び出さないし、透明で周りも良く見えるので本当に飛んでるような気になる。
 普通の服装のままで、飛翔ベルトを付ければすぐ遊べるので手軽だ。

「ぬおおおおおおっ」

 ヒュペリオン王が真っ先に飛び出した。歓喜の雄たけび!

「父上、どこにいくのじゃ~っ」

 心配でリリーも来てる。勿論、リリーはベルト無しで飛んでいる。

「こ、これだ~。これを待っていた~っ」

 公務を放り出して来てるもう一人の王様、ピステルも大はしゃぎ。

「兄様~、こっちなの~っ」とクレオ。
「あなた、ちょっと待ってくださいっ」

 珍しく一緒に来てるピアス妃。意外と興味があるようだ。

「ヒラク、私たちも行くわよ!」
「はい、ヒスイさん、ついて行きます!」

 そういえば、この二人の侍女、どちらも頭文字がHなんだよね。H&Hズ?

「Hじゃないけどね!」そうですね。

「だ、だんなさま。わたくし、もう思い残すことはございません」とバトンも飛ぶ。
「バトンまだまだ働いてくれよ~」

「私たちも行きますよ」と侍女長のマリナ。やっぱりか。
「「「「「「はいっ」」」」」」と侍女たち。

「メイド隊もいきましょう!」
「「「「「はいっ」」」」」

 メイド隊って、いつ出来たんだろ~っ。

「セシル、これが飛翔なのね。ああ、私、ついにこの日が来たのね」とネム。どんな日だろう?
「ネム、落ち着いて。まだ、使徒じゃないのよ。使徒の練習よ」

 え? 使徒の練習? いつの間にそゆことに? てか、使徒希望だったのか?

「いいこと? セシル先輩、ネム先輩に続くのよ!」
「「はい」」えっ? シスターまで? てか、ネムはシスターじゃないけど?

「行くわよコリス!」
「待ってたケリス!」

 君たち、なんでいるのかな? っていうか、それ何処かで聞いたことあるよーな?

「お前ら何でいるんだよ!」
「だって、この遊び、神界リゾートにも使えるんじゃないかと思って」

「いや、神様なんだから、自力で飛べばいいじゃん!」

「そこを、あえて神力を使わないからいいんです。飛ぶ練習をしてない神様も多いしね。むしろ、神力使ったら失格で」
「なにそれ。意味不明。てか、神力の練習したら?」
「「え~~~っ」」

 何か期待してたのかも知れないが、切りが無いので無視。
 あと、どうでもいいけどケリス&コリスって微妙にH&Hズとバッティングしてるんだよなぁ。

  *  *  *

 プロトタイプの無重量空間だったが、予想をはるかに上回る人気だった。
 遠くから見ると金魚鉢みたいで微妙だと思ってたけど、外から見た人たちが集まって来てさらに盛況に。
 まぁ、いいか。水草みたいな邪魔もの入れても面白いかもな。三次元スゴロクとか作っても面白そう。

 ただ、やってみて気付いたけど、これ意外と疲れるようで、みんなヘロヘロになるまで飛んでいた。
 思った以上に体力を使う。というか皆体力がない。ってことは、もしかしてこれスポーツとしていけるんじゃね? 安全性さえ確保できれば子供も遊べるし、いいかもな。

 ってことで、正式に無重量レジャーランドとしてオープンすることになった。魔法のある世界の遊園地はこうだよな?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢を期待されたので完璧にやり遂げます!

櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のマリアンヌには第一王子ジャルダンという婚約者がいた。 しかし、ジャルダンは男爵令嬢のロザリーこそが運命の相手だと豪語し、人目も憚らずに学園でイチャイチャしている。 ジャルダンのことなど好きではないマリアンヌにとってはどうでもいいことだったが、怒った父の公爵が婚約破棄の準備を進める中、マリアンヌは自分の噂話の現場に出くわしてしまう。 思わず聞き耳を立てると、最初はジャルダンとロザリーの非常識な振舞いに腹を立てているありきたりな内容は、次第にマリアンヌが悪役令嬢となってロザリーにお灸をすえて欲しいという要望に変わっていき―― 公爵令嬢として周囲の期待に応えることをモットーとして生きてきたマリアンヌは、完璧な悪役令嬢となってロザリーに嫌がらせを行うことを決意する。 人並み外れた脚力と腕力を活かしてヒロインに嫌がらせを行い、自分のアリバイをばっちり作って断罪返しをする悪役令嬢……を期待された公爵令嬢のお話です。 ゆるい短編なので、楽しんでいただけたら嬉しいです。 完結しました。

【完結】記憶を失くした旦那さま

山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。 目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。 彼は愛しているのはリターナだと言った。 そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

乙女ゲームの悪役令嬢になった妹はこの世界で兄と結ばれたい⁉ ~another world of dreams~

二コ・タケナカ
ファンタジー
ある日、佐野朝日(さのあさひ)が嵐の中を帰宅すると、近くに落ちた雷によって異世界へと転移してしまいます。そこは彼女がプレイしていたゲーム『another world of dreams』通称アナドリと瓜二つのパラレルワールドでした。 彼女はゲームの悪役令嬢の姿に。しかも一緒に転移した兄の佐野明星(さのあきと)とは婚約者という設定です。 二人は協力して日本に帰る方法を探します。妹は兄に対する許されない想いを秘めたまま……

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

婚約者が高貴なご令嬢と愛し合ってるようなので、私は身を引きます。…どうして困っているんですか?

越智屋ノマ@甘トカ【書籍】大人気御礼!
恋愛
大切な婚約者に、浮気されてしまった……。 男爵家の私なんかより、伯爵家のピア様の方がきっとお似合いだから。そう思って、素直に身を引いたのだけど。 なんかいろいろ、ゴタゴタしているらしいです。

彼女がいなくなった6年後の話

こん
恋愛
今日は、彼女が死んでから6年目である。 彼女は、しがない男爵令嬢だった。薄い桃色でサラサラの髪、端正な顔にある2つのアーモンド色のキラキラと光る瞳には誰もが惹かれ、それは私も例外では無かった。 彼女の墓の前で、一通り遺書を読んで立ち上がる。 「今日で貴方が死んでから6年が経ったの。遺書に何を書いたか忘れたのかもしれないから、読み上げるわ。悪く思わないで」 何回も読んで覚えてしまった遺書の最後を一息で言う。 「「必ず、貴方に会いに帰るから。1人にしないって約束、私は破らない。」」 突然、私の声と共に知らない誰かの声がした。驚いて声の方を振り向く。そこには、見たことのない男性が立っていた。 ※ガールズラブの要素は殆どありませんが、念の為入れています。最終的には男女です! ※なろう様にも掲載

天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん
ファンタジー
超庶民の前世をもつ、本好き王女アデル。だれもがうらやむ、年のはなれた完璧すぎる美貌の婚約者がいるのだが、中身は腹黒魔王。怖すぎる。このまま、こいつに管理されてしまう人生だけは送りたくない。婚約解消するため、がんばります! 前世もち王女アデルのお気軽な日々(ヤンデレ付き)のお話です。

処理中です...