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南北大陸編
90 建国祭と舞踏会
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年が明けて、もうすぐ神聖アリス教国も建国一周年となる。
国はますます繁栄し、同時に周辺国の食糧生産や鉱工業生産も増大して中央大陸全体の生活レベルが大幅に向上した。
ある程度上昇したら安定するかと思うが、同時に人口も急激に増大したため更に生産拡大を図っている。
ただ、神聖アリス教国内の農地は限られているので食糧については貿易量も増大していた。
俺が各国の状況を聞いていて一番びっくりしたのは『蛮族アブラビ』だ。
今ではあの人工降雨山を城郭都市として活用し、『アブラビ王国』となって定住しているらしい。
住居は神魔動掘削機で作ったとのこと。
穴居人風だが、ちょっと一緒に作ってみたい気もする。自分の部屋を掘り出すとか、たぶん楽しい。まぁ、掘削機があればだが。
産業が畜産主体なのは変わらなようだが、牧草以外に野菜の栽培もしているようで、トウモロコシのような穀物がアブラビから輸入されていた。
砂の王国カセームも大きく発展した。
黒岩山の結晶石が神魔動モジュールの大量生産により飛ぶように売れている上に、近くの鉱山から鉄鉱石なども産出するようになったからだ。
これらは舗装された街道を使って神聖アリス教国まで送られて来て、帰りは神聖アリス教国や聖アリステリアス王国の食料品などを山積みして帰っている。
食料品は安いので他に工業製品なども仕入れて帰るようだが、それでも富は蓄積されているようだ。
特に海水から真水を作る魔道具を導入してからは、現地の食糧生産も増加していると言う。生鮮食料品は現地で作るしかないからな。
シュゼールは湖から引いた水路が順調に活用され食糧生産が安定した。こちらも、小さなベビーブームとなっている模様。
東方諸国連合を初め、キリ山脈を越えた諸国も聖アリステリアス王国への街道が整備されたので貿易が一気に増大し、戦国時代から完全に抜け出したようだ。
奪い合うより作るほうが儲かる。そうなると周りは宝の山なのだと気づく。踏み荒らしたりするのはバカ者のやることだという訳だ。
まぁ、そう単純な話でもないのだが。大陸連絡評議会の存在も大きいのかも知れない。
そしてもうすぐ高速神魔動飛行船の定期便航路が出来上がる。そうなると、さらに人と物の行き来が盛んとなり、さらに発展が加速するだろう。
* * *
「突然だけど、建国祭には舞踏会を開こうと思う」
出産から8か月以上が過ぎ、母子ともに健康な嫁達を前に俺はぶち上げた。
「ぶ、舞踏会? なんか、リュウジの口から出るとは思えない言葉を聞いちゃったんだけど」ちょっと呆れ顔のニーナ。
「まぁ、気持ちはわかる。実は俺の趣味じゃないし、実際踊れない」
俺は正直に言った。
「そうよね。別に期待してないからいいけど」とニーナ。ちょっとムカつく。
「いや、うる覚えだけどワルツは踊ったことあるぞ」と言ってみた。
「ふうん」さすがに、ニーナ半信半疑。
「練習だけだけど」
「いが~いっ。そんな場面無かったでしょ?」
椎名美鈴が突っ込んできた。そういや、こいつ地球の事情を知ってたな。あまり突っ込まれると困る。
「だから、練習だけだって。簡単なステップの紹介程度だけど?」
「ああ、確かにやることはあったかもね。でも、その程度じゃ踊れないでしょ?」
なんだろう。そこまで踊りと無縁なキャラなのか俺?
ま、それはそうか。うん、ここで見栄を張るつもりはない。それに、この世界のダンスは地球とは違うしな。
「そこで、アルテミス先生の登場ですよ」
「そうなんです。アルテミスはダンスがとっても得意なんです」とセレーネ。
「特技と言ってもいいですわね」
ちょっと自慢気に紹介する。
まぁ、アルテミスとセレーネが会話してるのを聞いて、やろうと思ったんだけど。
ちょうど建国祭のイベントを探してたしね。
「私で良ければ。久しぶりなので、うまく踊れるか心配ですけれど」
いつものようにアルテミスは控えめに言った。
「アルは、よく練習してましたから大丈夫ですわ。誰よりも優雅に踊りますの。舞踏会で見れなかったのは本当に悔しい思い出ですわ」
そう、最後の舞踏会に向け練習していたという話を聞いてしまったのだ。
しかし世界は衰退し、舞踏会は中止になってしまった。それ以降開催されていないという。そんな話を聞いて、控えめなアルテミスがどんなダンスを踊るのか見たくなったのだ。
「ホント? なら是非教えてほしい!」
話を聞いてニーナもやる気になった模様。
「わたしでも踊れるかなぁ?」
ミルルは心配そうだが、踊りたいようだ。
「私も、心配です」いや、セシルはいけるだろう。背丈もそこそこあるし。
「大丈夫じゃ、アル姉さまは丁寧に教えてくれるのじゃ」
「へぇ、リリーもうまいのか?」
「わらわは、舞踏会など出たことはないから踊れんのじゃ。もうそんな時代ではなかったからな」なるほど。
「そうですわね。わたくしも、一度出たことがあるだけですわ。往年の栄華とはかけ離れていたようですが、それでもわたくしには輝かしい思い出になっています」
セレーネは遠い日を思い出すような目で言った。
「また、舞踏会に出れる日が来るとは思いもしませんでしたわ」
「建国祭なら各国を招待出来るし、ライブ配信を使って街ぐるみの舞踏会にしてもいいかもな?」これが俺の大まかな構想だ。
「まぁ、素敵ですね」アルテミスは楽しそうに言う。
「楽しそうだけど、他のみんなは踊れないんじゃない? うちらだけ、アルテミスに教えてもらっても、他のみんなが踊れないんじゃねぇ」
確かにニーナの言う通りだな。
「そうか。ならダンスレッスンもライブ配信しよう! ビデオ会議用の投影装置は配ってあるから、それぞれの国でレッスンすればいいだろ?」
「それ、いいねっ!」とニーナ。
「リュウジにしては上出来よ」おいっ。
ぽっぽっぽっぽっぽっぽっぽっぽっ
女神様たち登場。
「ちょっと、それ私たちも当然参加していいよね?」とアリス。
「女神様がダンス踊るのか?」
「ええ、私たちも踊りたいのよ」
「あ~、いや、だって、誰と踊るんだよ。ペアで来れるのか? 相手は使徒か? 男神か?」
「もう、女神だってバレちゃってもいいんじゃないかなぁ? 女神ですとは言わないけど一緒に踊っても平気でしょ?」
などと言う担当神。不干渉主義者が……あ、騒いでも平気か。第二神だし。
「踊るのはいいけど、会話したりするだろ?」
ちょっと、ボロが出そうで怖いんだが。
「『遠い国出身です』、でいいでしょ?」
「確かに遠い国だが。どちらから? 北ですか南ですか? いえ、上ですとか?」
「リュウジそれ、面白いわね!」
妙にアリスに受けてる。ってか、ほんとに舞踏会で言いそう。
「あ~、舞踏会で言うのは止めてくれよ?」
「きゃ~、なんか楽しくなってきちゃったわ。レッスンスケジュールを決めましょ! アルテミス、よろしくね!」
ニーナが超やる気になってる。こういうの好きだったんだ。
「はい。頑張って一緒に練習しましょう」
アルテミスも嬉しそう。
「私たち女神隊も頑張るわよ!」とアリス。えっ? 女神隊って何?
「ふふ。そうね。わくわくして来たわ」
イリス様も楽しそう。てか、美しい後光マックスです。
「我も踊るのだ」ウリス様がやる気なのは、ちょっと意外。
「私も、楽しみ!」とエリス様。ちょっと、踊ってみたい。
「きゃ~っ、私も初めてなのよ」と女神オリス。
意外とミーハーだった模様。
「ここは、遠心力を利用して……」
女神カリスが怪しいことを言ってる。聞かなかったことにしよう。てか、危険?
「簡単に踊れる神魔道具とか欲しい」と女神キリス。それ、俺も欲しい。
「上手に見える薬ってないかしら」と女神クリス。いや、それ媚薬?
こちらも、ヤバそうなこと言ってるし。作らないでほしい。
「我ら侍女隊もがんばるぞ」とミゼール。
うん、侍女隊も踊るよな。姫様だし。
「で、練習するのはいいけど、圧倒的に男がいないな。俺と、ヒュペリオン王と、バトンしかいない」
「そうねぇ、あとマレスさんと元老院議員全員集めてもらいましょう。議員の息子たちも。それと宰相のウィスリムさん以下建国祭に来る人は参加ね。あ、でもこっちには来れないか。まぁ、全員が同時に踊るわけじゃないし、いいわよね」とニーナ。
「いや、良くないよ。それだと男は休み無しなんだが……」と、一応抗議する俺。
「沢山練習出来ていいじゃない!」
休ませるつもりはないらしい。
「女神の相手は、研究所の使徒を含めれば結構いるんじゃないかな?」とアリス。
「えっ? 研究所の使徒を男役にするの?」
「あ~それは可哀相ね。でも、後は筋肉ムキムキばっかりだからなぁ。まぁ、ちょっと探しておくわね」
とりあえず、建国祭に舞踏会を開く前提でみんなのスケジュールを調整するのだった。あっ、音楽どうしようかな?
* * *
ダンスのレッスンは会場手配やライブ配信機器の準備など、スケジュール以外にもいろいろと準備することがある。
ニーナだけじゃなくセシル、セレーネ、アルテミスも分担して担当してくれた。
また、この話を聞いた街の人たちも予想以上に参加したいとのことで、街の数か所にある広場でも開催することになった。
さらに各国の首都でも民衆が参加することになり、いつの間にか建国祭のイベントというより大陸全体の一大イベントになってしまった。
残念なことにライブ配信の記録はまだ出来ないので、アルテミスのレッスンはスマホで記録することにした。やはり上手い人は、教えるのも上手いから保存しないと勿体ないからな。
* * *
舞踏会用のホールや会場の手配は何とかなったが、一番の問題はやはり音楽隊だった。
街が発展したとはいえ、領主お抱えの音楽隊などは無くなっていたし大道芸人くらいしか音楽を仕事にする人はいなくなっていた。だが、衰退したとはいえ以前は音楽隊もあったのだから楽器をいじれる人はいる筈だ。
ということで急遽経験者を募集してみたら思った以上に集まった。
楽器もきちんと手入れして細々とだが音楽を続けていたそうだ。そりゃ、簡単には捨てられないよな。これからは劇場音楽も含めて出番も増えるだろうから復活させて置くほうがいいだろう。
金属が少なかった事もあり、弦楽器と木管楽器が主体の柔らかい音色の編成となった。
それからドレスなどの衣装も重要だ。
アルテミスに指摘されて気が付いたのだが。ダンスを前提としたドレスや靴が必要とのこと。ドレスが花のように開くから華やかなのだとか。神様は自前で用意できそうだからいいとして。一般人用にはレンタルするか?
建国祭まで残すところ2か月。ちょっと忙しくなってきた。
国はますます繁栄し、同時に周辺国の食糧生産や鉱工業生産も増大して中央大陸全体の生活レベルが大幅に向上した。
ある程度上昇したら安定するかと思うが、同時に人口も急激に増大したため更に生産拡大を図っている。
ただ、神聖アリス教国内の農地は限られているので食糧については貿易量も増大していた。
俺が各国の状況を聞いていて一番びっくりしたのは『蛮族アブラビ』だ。
今ではあの人工降雨山を城郭都市として活用し、『アブラビ王国』となって定住しているらしい。
住居は神魔動掘削機で作ったとのこと。
穴居人風だが、ちょっと一緒に作ってみたい気もする。自分の部屋を掘り出すとか、たぶん楽しい。まぁ、掘削機があればだが。
産業が畜産主体なのは変わらなようだが、牧草以外に野菜の栽培もしているようで、トウモロコシのような穀物がアブラビから輸入されていた。
砂の王国カセームも大きく発展した。
黒岩山の結晶石が神魔動モジュールの大量生産により飛ぶように売れている上に、近くの鉱山から鉄鉱石なども産出するようになったからだ。
これらは舗装された街道を使って神聖アリス教国まで送られて来て、帰りは神聖アリス教国や聖アリステリアス王国の食料品などを山積みして帰っている。
食料品は安いので他に工業製品なども仕入れて帰るようだが、それでも富は蓄積されているようだ。
特に海水から真水を作る魔道具を導入してからは、現地の食糧生産も増加していると言う。生鮮食料品は現地で作るしかないからな。
シュゼールは湖から引いた水路が順調に活用され食糧生産が安定した。こちらも、小さなベビーブームとなっている模様。
東方諸国連合を初め、キリ山脈を越えた諸国も聖アリステリアス王国への街道が整備されたので貿易が一気に増大し、戦国時代から完全に抜け出したようだ。
奪い合うより作るほうが儲かる。そうなると周りは宝の山なのだと気づく。踏み荒らしたりするのはバカ者のやることだという訳だ。
まぁ、そう単純な話でもないのだが。大陸連絡評議会の存在も大きいのかも知れない。
そしてもうすぐ高速神魔動飛行船の定期便航路が出来上がる。そうなると、さらに人と物の行き来が盛んとなり、さらに発展が加速するだろう。
* * *
「突然だけど、建国祭には舞踏会を開こうと思う」
出産から8か月以上が過ぎ、母子ともに健康な嫁達を前に俺はぶち上げた。
「ぶ、舞踏会? なんか、リュウジの口から出るとは思えない言葉を聞いちゃったんだけど」ちょっと呆れ顔のニーナ。
「まぁ、気持ちはわかる。実は俺の趣味じゃないし、実際踊れない」
俺は正直に言った。
「そうよね。別に期待してないからいいけど」とニーナ。ちょっとムカつく。
「いや、うる覚えだけどワルツは踊ったことあるぞ」と言ってみた。
「ふうん」さすがに、ニーナ半信半疑。
「練習だけだけど」
「いが~いっ。そんな場面無かったでしょ?」
椎名美鈴が突っ込んできた。そういや、こいつ地球の事情を知ってたな。あまり突っ込まれると困る。
「だから、練習だけだって。簡単なステップの紹介程度だけど?」
「ああ、確かにやることはあったかもね。でも、その程度じゃ踊れないでしょ?」
なんだろう。そこまで踊りと無縁なキャラなのか俺?
ま、それはそうか。うん、ここで見栄を張るつもりはない。それに、この世界のダンスは地球とは違うしな。
「そこで、アルテミス先生の登場ですよ」
「そうなんです。アルテミスはダンスがとっても得意なんです」とセレーネ。
「特技と言ってもいいですわね」
ちょっと自慢気に紹介する。
まぁ、アルテミスとセレーネが会話してるのを聞いて、やろうと思ったんだけど。
ちょうど建国祭のイベントを探してたしね。
「私で良ければ。久しぶりなので、うまく踊れるか心配ですけれど」
いつものようにアルテミスは控えめに言った。
「アルは、よく練習してましたから大丈夫ですわ。誰よりも優雅に踊りますの。舞踏会で見れなかったのは本当に悔しい思い出ですわ」
そう、最後の舞踏会に向け練習していたという話を聞いてしまったのだ。
しかし世界は衰退し、舞踏会は中止になってしまった。それ以降開催されていないという。そんな話を聞いて、控えめなアルテミスがどんなダンスを踊るのか見たくなったのだ。
「ホント? なら是非教えてほしい!」
話を聞いてニーナもやる気になった模様。
「わたしでも踊れるかなぁ?」
ミルルは心配そうだが、踊りたいようだ。
「私も、心配です」いや、セシルはいけるだろう。背丈もそこそこあるし。
「大丈夫じゃ、アル姉さまは丁寧に教えてくれるのじゃ」
「へぇ、リリーもうまいのか?」
「わらわは、舞踏会など出たことはないから踊れんのじゃ。もうそんな時代ではなかったからな」なるほど。
「そうですわね。わたくしも、一度出たことがあるだけですわ。往年の栄華とはかけ離れていたようですが、それでもわたくしには輝かしい思い出になっています」
セレーネは遠い日を思い出すような目で言った。
「また、舞踏会に出れる日が来るとは思いもしませんでしたわ」
「建国祭なら各国を招待出来るし、ライブ配信を使って街ぐるみの舞踏会にしてもいいかもな?」これが俺の大まかな構想だ。
「まぁ、素敵ですね」アルテミスは楽しそうに言う。
「楽しそうだけど、他のみんなは踊れないんじゃない? うちらだけ、アルテミスに教えてもらっても、他のみんなが踊れないんじゃねぇ」
確かにニーナの言う通りだな。
「そうか。ならダンスレッスンもライブ配信しよう! ビデオ会議用の投影装置は配ってあるから、それぞれの国でレッスンすればいいだろ?」
「それ、いいねっ!」とニーナ。
「リュウジにしては上出来よ」おいっ。
ぽっぽっぽっぽっぽっぽっぽっぽっ
女神様たち登場。
「ちょっと、それ私たちも当然参加していいよね?」とアリス。
「女神様がダンス踊るのか?」
「ええ、私たちも踊りたいのよ」
「あ~、いや、だって、誰と踊るんだよ。ペアで来れるのか? 相手は使徒か? 男神か?」
「もう、女神だってバレちゃってもいいんじゃないかなぁ? 女神ですとは言わないけど一緒に踊っても平気でしょ?」
などと言う担当神。不干渉主義者が……あ、騒いでも平気か。第二神だし。
「踊るのはいいけど、会話したりするだろ?」
ちょっと、ボロが出そうで怖いんだが。
「『遠い国出身です』、でいいでしょ?」
「確かに遠い国だが。どちらから? 北ですか南ですか? いえ、上ですとか?」
「リュウジそれ、面白いわね!」
妙にアリスに受けてる。ってか、ほんとに舞踏会で言いそう。
「あ~、舞踏会で言うのは止めてくれよ?」
「きゃ~、なんか楽しくなってきちゃったわ。レッスンスケジュールを決めましょ! アルテミス、よろしくね!」
ニーナが超やる気になってる。こういうの好きだったんだ。
「はい。頑張って一緒に練習しましょう」
アルテミスも嬉しそう。
「私たち女神隊も頑張るわよ!」とアリス。えっ? 女神隊って何?
「ふふ。そうね。わくわくして来たわ」
イリス様も楽しそう。てか、美しい後光マックスです。
「我も踊るのだ」ウリス様がやる気なのは、ちょっと意外。
「私も、楽しみ!」とエリス様。ちょっと、踊ってみたい。
「きゃ~っ、私も初めてなのよ」と女神オリス。
意外とミーハーだった模様。
「ここは、遠心力を利用して……」
女神カリスが怪しいことを言ってる。聞かなかったことにしよう。てか、危険?
「簡単に踊れる神魔道具とか欲しい」と女神キリス。それ、俺も欲しい。
「上手に見える薬ってないかしら」と女神クリス。いや、それ媚薬?
こちらも、ヤバそうなこと言ってるし。作らないでほしい。
「我ら侍女隊もがんばるぞ」とミゼール。
うん、侍女隊も踊るよな。姫様だし。
「で、練習するのはいいけど、圧倒的に男がいないな。俺と、ヒュペリオン王と、バトンしかいない」
「そうねぇ、あとマレスさんと元老院議員全員集めてもらいましょう。議員の息子たちも。それと宰相のウィスリムさん以下建国祭に来る人は参加ね。あ、でもこっちには来れないか。まぁ、全員が同時に踊るわけじゃないし、いいわよね」とニーナ。
「いや、良くないよ。それだと男は休み無しなんだが……」と、一応抗議する俺。
「沢山練習出来ていいじゃない!」
休ませるつもりはないらしい。
「女神の相手は、研究所の使徒を含めれば結構いるんじゃないかな?」とアリス。
「えっ? 研究所の使徒を男役にするの?」
「あ~それは可哀相ね。でも、後は筋肉ムキムキばっかりだからなぁ。まぁ、ちょっと探しておくわね」
とりあえず、建国祭に舞踏会を開く前提でみんなのスケジュールを調整するのだった。あっ、音楽どうしようかな?
* * *
ダンスのレッスンは会場手配やライブ配信機器の準備など、スケジュール以外にもいろいろと準備することがある。
ニーナだけじゃなくセシル、セレーネ、アルテミスも分担して担当してくれた。
また、この話を聞いた街の人たちも予想以上に参加したいとのことで、街の数か所にある広場でも開催することになった。
さらに各国の首都でも民衆が参加することになり、いつの間にか建国祭のイベントというより大陸全体の一大イベントになってしまった。
残念なことにライブ配信の記録はまだ出来ないので、アルテミスのレッスンはスマホで記録することにした。やはり上手い人は、教えるのも上手いから保存しないと勿体ないからな。
* * *
舞踏会用のホールや会場の手配は何とかなったが、一番の問題はやはり音楽隊だった。
街が発展したとはいえ、領主お抱えの音楽隊などは無くなっていたし大道芸人くらいしか音楽を仕事にする人はいなくなっていた。だが、衰退したとはいえ以前は音楽隊もあったのだから楽器をいじれる人はいる筈だ。
ということで急遽経験者を募集してみたら思った以上に集まった。
楽器もきちんと手入れして細々とだが音楽を続けていたそうだ。そりゃ、簡単には捨てられないよな。これからは劇場音楽も含めて出番も増えるだろうから復活させて置くほうがいいだろう。
金属が少なかった事もあり、弦楽器と木管楽器が主体の柔らかい音色の編成となった。
それからドレスなどの衣装も重要だ。
アルテミスに指摘されて気が付いたのだが。ダンスを前提としたドレスや靴が必要とのこと。ドレスが花のように開くから華やかなのだとか。神様は自前で用意できそうだからいいとして。一般人用にはレンタルするか?
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