異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

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南北大陸編

85 他の大陸?女神隊集合2

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 それにしても話が早い。
 神様が集合しているからな。あっという間に無害化魔法共生菌の散布方法が決まった。凄いなこのメンバー。

「なんか私、みんながリュウジをとんでもないとか言うの分かった気がする」

 一連の流れを聞いていた椎名美鈴が、そんなことを言った。

「いや、これはそうでもないだろ? 俺より女神様が凄いしな。ここは、女神様に驚く場面だ」
「うん、もちろん女神様は凄い。神様だもん。でも、あんたも凄い。特に発想が」

 ま、俺も神様だけどな。忘れてそう。俺もだけど。

「いや、お前が言うな。あんなとんでもないメッセージ誘導を編み出しておいてそれはない」
「いいえ、そんなことはない。あんたの発想は、ちょっと普通じゃないってことよ」

「ちょっとまて、今の『普通じゃない』について詳しく」
「どこに食いついてんのよ」
「いや、その解説をすると、まんまお前の解説になるような気がする」
「あら、それは気のせいね」

 なんか、無限ループに入った気がする。

 そんな俺と美鈴を横で見て、こそっと話す人たちがいた。

「ねぇ、この二人、どっちも普通じゃないと思うんだけど」とニーナ。
「ええ、この異世界人は普通じゃないとわたしくも思いますわ。ねぇ母様」とセレーネ。
「えっ? 私? ええっと、私そろそろ神界に戻らないと……」と使徒テイア。
「母上、わらわたちを見捨てていくのか? 一人はわらわたちの夫なのじゃ。他人事では済まぬのじゃ」とリリー。
「確かに、そうね。おかげで、わたし地上界に戻れたんだけど」とテイア。
「そういえば、そうじゃの。あ奴のお陰じゃ。普通じゃないお陰じゃが」とリリー。
「そ、それは、ノーコメントで通すしかありませんわ」とテイア。
「母様の言う通りですわ。こういうことは、うっかり忘れて気にしないのが大人の女のあるべき姿ですわ」とセレーネ。
「そうですね姉さま。うっかりさん、素晴らしいですわ」とアルテミス。
「わらわは、うっかり突っ込んでしまいそうで怖いのじゃ」とリリー。

 三人とも、だいぶ元気になったようで何より。

  *  *  *

「あとは、別大陸に行く準備が必要だな」

 俺は、気を取り直して話を進めることにした。

「別大陸って。リュウジ、また長い間、出かけるの?」

 ニーナがちょっと寂しそうに言った。
 元気になって来たとは言え、まだ付いて来れないもんな。

「う~んっ。いや、すぐじゃないけど。なるべく早く帰って来るし。あっ」

 そこで、またちょっといいこと思い付いた。

「また来た!」とニーナ。
「うふふ」とアリス。
「ほほ~」美鈴。
「待ってたのじゃ」とリリー。

「いやいや、お前ら期待しすぎっ」
「そうなんですか?」と女神オリス。

 えっ? いやいや、何言ってるんですいか。女神様がびっくりするようなこと簡単に思い付く訳ないじゃないですか。

「いや、今ある高速神魔動飛行船だけど、高速とか名ばかりで大して速くなかったから、もう少し早くしようかなと思っただけだ」

「ニーナさん、あんなこと言ってるけど、どう思う?」とアリス。
「遅いなんて、とんでもないと思います。もう世界が縮んじゃったような気さえしてます」とニーナ。
「そうなのじゃ、わらわは先日最高速度出された時、気絶しそうになったのじゃ」
「いや、リリー喜んでたじゃん」
「嬉しくて気絶しそうだっただけじゃ」
「そっちかよ。紛らわしいこと言うな」

「また、やばいの作りそうな気がする~っ」とミルル。

 ミルルが心配するほどではないと思う。というか、目をキラキラさせて思いっきり期待してるよな、それ。

「私、それに乗れるかしら? 乗ることあるかしら?」とセレーネ。

 感じ方は人それぞれか。ん? それもちょっと考えてみるかな?

「へ? 何言ってんのお前ら。時速七百キロなんて遅い遅い。次は、音速越えるつもりだから!」

「「「「「「「「きゃ~~~~~っ」」」」」」」」

「今の聞いた? 私、聞いたのに言ってる意味よく分かんないんだけど?」

 ニーナ、理解不能の模様。

「なんか、音よりも早くって意味じゃないの? そんなこと出来るの?」

 ミルルは分かって驚いてるようだ。

「弾よりも速く、力は……」

 リリーはタブレットの動画を思い出してる模様。

「音速越えるって、その飛行船から叫んでも飛行船のほうが早く着くってことですよね?」

 あ、アルテミスは好きそう、ってか嬉しそう。

「きゃ~、逃げて~って言っても無駄なのね」セレーネ、なんで逃げるのかな?
「姉さま、後ろの人に期待しちゃダメってことですね?」とアルテミス。
「叫んだあと叫びを追い抜いて、自分の叫びをもう一度聞いてまた逃げるのじゃ」とリリー。
「お前らのほうが面白いんだが」

  *  *  *

 こちらは、神魔科学・神魔道具チーム。
 執務室で俺と女神カリス、女神キリスで超音速神魔動飛行船について話しているところだ。

「リュウジさん、どうやって音速越えるのか詳しく!」

 神魔科学の女神カリスが食いついた。
 もちろん神様なので実現方法は山ほど知っているだろう。俺が、どういうつもりなのかを聞きたいだけだと思う。

「私も、大変興味がありますね」

 神魔道具の女神キリスも同様だ。

「真空中を飛ばします」と俺は端的に言った。

「し、真空中ですか?」と、ちょっと怪しむ女神カリス。
「真空中なら、空気の摩擦抵抗がないからいくらでも早く飛ばせます」
「はい。確かに」と女神カリス。
「真空中ですか」と女神キリス。

「ただし、真空を作るのは大変です。で、良くあるのはチューブの中を真空にしてその中を走る乗り物です」
「良くありますか?」

 と不思議そうな女神カリス。あまり無いみたいだ。

「見たことないですが」と女神キリス。やっぱりか。
「いや、想像の話です」
「なるほど」と女神カリス。
「そうでしょうね」と女神キリス。

「で、長いチューブを真空には出来なくても、機体の周りだけなら出来るかも知れません。少なくとも、可能性は大きくなります」
「なるほど」
「そうですね」

「そこで思い付いたのが防御フィールドです。あのフィールドがあると外部から中に入って来れません」
「はい」
「もちろんです」

「そうすると、このフィールドを二重にすれば、その間を真空に出来るんじゃないかと思ったんですけど。どうでしょう?」

「おおおおっ」と女神カリス。
「なんとっ!」と女神キリス。
「キリスさんどうですか?」
「そうですね。真空にするならフィールドの密度や強度が必要ですが、出来なくもないと思います」

 それから少しの間、良く分からない会話が続いた。どうも、防御フィールドとしてはイリーガルな使い方らしい。

「いけそうですか?」

 期待を込めて俺は聞いた。

「やって、みますか?」と言って、女神キリスを見る女神カリス。
「やりましょう」きっぱり答える女神キリス。

 夢の超音速エンジンだ。
 本当に出来るんだ! 俺も信じてなかったけど!
 しかも、神様に発注しちゃうのか。あ、俺も神だから問題無し。クレームは受け付けません。
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