異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

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神界派閥抗争編

74 魔法ドリンク出来ました!

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 何はともあれ、椎名美鈴という強い味方が出来た。

 魔法も使えるしな。現状、俺の戦力は嫁全員が出産間際で最低レベルまで落ちてるのだから有り難い。
 あと頼れるのは侍女隊しかいないが、普通の人間としても未熟だし多くは期待できない。ここは、近衛兵とか考えるべきなのかな? でも相手が神界じゃ意味ないしなぁ。それこそ反神界とか言われてしまう。まぁ、一応衛兵はいるのだが。

 当面、美鈴には俺と行動を共にして貰うことにして、モートン神父にも許可を貰った。「シスターミスズだけでよろしいのでしょうか?」とか言われた。うん? どゆこと?

「みんな、マスターの役に立ちたいのよ」美鈴が教えてくれた。
「そうなのか? あ、アリスがらみか?」
「それもあるけど、あなた自分がどれだけこの街の人に感謝されているか分かってないでしょ?」

「いや、そりゃ分かってるよ。だけど礼は貰ってるし、やりたいことやってるだけだし」

「そういうのを、分かってないって言うの」
「んんん。あっ、使徒の力使ってるの言ってないからな。その分の認識の違いはあるな」
「確かに、そうね」

「ま、これからは、なるべく美鈴にやって貰おう。ヒロイン美鈴でいいだろ」
「ふふ。いいわよ」

 そんな話をしながら俺達は王城内研究所となった神魔研究所に向かった。
 使徒ポセリナから、ちょっと寄ってほしいと連絡があったのだ。途中で侍女隊も合流した。

  *  *  *

「こんにちは~っ。ポセリナさんいますか?」
「あ、リュウジさん。皆さんもこんにちは。ちょっと待ってくださいね。ポセリナさ~んっ」

 近くにいた使徒ピルーセが呼んでくれた。
 遠くのテーブルで真剣な表情で作業していたポセリナだが、こっちを見るなり満面の笑みを浮かべて走ってきた。いや、研究室で走っちゃだめでしょ!

「リュウジさん! やりましたよ!」ポセリナが弾んだ声で言う。
「ほんとですか!」遂に無害化出来たか?

「魔法ドリンク出来ました!」なに~っ?

「ま、魔法ドリンクってなんです???」何それ、聞いてないんだけど? 栄養ドリンクじゃないよね?

「ポセリナさん、何作ってるんですか?」俺はさすがに戸惑って聞いた。
「違うでしょ~っ、ポセリナさん。すみません、リュウジさん魔法共生菌の無害化が出来ました」横から訂正するピルーセ。

「えっ? そうですよね? ああ、良かった。俺、なんか変なことお願いしたかと思った」
「え~っ、間違ってませんよピルーセさん。もちろん、無害化も出来ました」不満そうな顔でポセリナがピルーセに抗議する。

「無害化も出来たんだ」そっち大事なんだけど?
「はい。完全に無害化しました。人間の生気を吸い出す遺伝子をダミーと入れ替えたので、もう悪さはしません。当然、人間に共生しません。人間を共生する相手とみなさないという感じです」人間から栄養を取れないなら共生は無理だからな。

「なるほど」
「菌としては、現状の魔法共生菌よりも強いので自然界では勝ち抜いてくれます。ですので、徐々に今の危険な菌は減っていくでしょう。ただ、人間に感染しているものを駆逐するには抗生物質を使う必要があります」

 そりゃ、人間に感染しないんだから駆逐も出来ない理屈だな。

「そうかっ! やりましたね! それだったら、無害化した菌をばら撒くだけでいいんですね?」
「そうです! ばら撒いておけば自然界で徐々に淘汰されるはずです」
「素晴らしい! これで何とかなるかな~」

 これと特効薬でなんとかなりそうだ。
 無害化菌ばかりになれば、第二の特効薬を探さなくても済むし、万々歳だ!

「そして、その無害な魔法共生菌の一部を修正すると、短期間だけ人間と共生するものが出来ます」

「えっ? ああ、はい。短期間だけ? 何に使うんですか?」
「人間に無害なまま、短期間だけ魔法が使えるようになります」
「あぁなるほど。無害なままですか?」
「はい、自分の生命力だけを使って魔力を生み出すので害はありませんし、一日くらい使えます」

「なるほど」
「と言っても、普通の魔法。つまり、ちょっと水を出す程度です」

「つまり、期間限定の普通の魔法使いになると」
「はい。ですが、誰でも魔法使いになれます」ポセリナは、ちょっと自慢げに言った。

「えっ?」
「つまり、いままでの魔法共生菌は共生するための条件が厳しかったんです。幼児と特殊な人だけでした。それを、普通の人でも一日限定だけど共生出来るようになります」

「ああ、なるほど。『誰でも魔法が使えるドリンク』というわけですね」

 生活魔法が使えるだけでも大きな意味がある。
 場合によっては産業革命のような効果があるかも知れない。あるいは、魔法社会と呼ぶような文化が成立するかも知れない。

「はい。ですが、ちょっとだけパワーアップも出来ます。お酒をのむと魔力が強くなるんです。これ、リュウジさんから貰った株だけの突然変異みたいですけど」

「ああ、エナジーモジュールで使った菌か」

 どうも、ニーナの口噛み酒の菌が特殊らしい。あいつ、何気に特別な人間なのか?

「そうです。だから、魔法ドリンク飲んでお酒を飲めば、ちょっとしたパワーの魔法使いになれます。使徒の三割くらいかな?」
「えっ? 使徒の三割? 凄いじゃないですか。それ、初めからアルコールを入れて置いちゃだめですか?」
「それだと、先にアルコールを消費してしまうのでダメですね」

 あ~、お酒でパワーアップね。のんべな菌かよ。

「なるほど。追加で酒ですか。まぁでも、必要な時に酒を飲めばいいんですよね。それは使えそうですね。ドリンクは瓶の状態で保存できるんですか?」
「はい、瓶でなら一週間程度は保存できるでしょう」とポセリナ。

 もう、そこまで試してるんだ。

「飲んで一日魔法使いか。効果としては十分かな。ワン・デイ・マジシャンズとか言って」なんでか、キャッチコピーを考えてる俺。

「おおお、それ是非使ってみたい」

 横からミゼールが食いついた。魔法に食いついたんだよな? 酒じゃないよな?

「それがあれば、我ら侍女隊も戦力になれるでしょう」なるほど。確かにそうだ。

「これは、凄いですよ! 大発明ですね。ポセリナさん!」

 思わず俺も大きな声を出してしまった。

「そうでしょう? そうなんです!」とポセリナ。

 自信はあったが周りの評価が低かったようだ。特にピルーセの評価が。

「もう、ポセリナさんったら朝からこの調子で」とピルーセ。

 え~っ、そりゃポセリナが可哀相だよ。

「いや、これは素晴らしいよ。ドリンク飲んでヒーローって、中二病的には最高だ!」
「ちゅうに?」とピルーセ。さすがに知らないらしい。
「いや、忘れてくれ」

「それで、この魔法ドリンクは完全に安全なんですか?」俺は、念のために聞いておく。
「はい、それは確実です。一旦無害化したものに期間限定の共生能力を持たせたものなので」ポセリナの自信作ということか!

 小さな強壮剤程度の小瓶で魔法使いか! これはいける!
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