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神界派閥抗争編
69 魔法共生菌、無害化計画
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特効薬を開発後、ニーナとセシルは産休に入った。
神魔研究所の特効薬研究班はポーリンや他の使徒達だけで研究を続けている。
一方、神魔基礎研究班もミルルが抜けてポセリナたち使徒によって運営されていたが、神魔力融合現象の発見後は『魔法共生菌による神界リセット無効化の信ぴょう性について』というレポートを纏めたのが最後で本来の基礎研究に戻っていた。
彼らが纏めたレポートは悪魔の証明こそ出来ないが『魔法共生菌が神界リセットをキャンセルした証拠はない』という意見書の一部として採用された。
「おや、リュウジさん珍しいですね」
俺が神魔基礎研究班に顔を出すと、いち早く見つけたポセリナが声を掛けて来た。
「ポセリナさん、ご無沙汰してます。忙しいですか?」
「ほほっ、単調な日々の繰り返しですよ」つまり、順調と言うことかな?
「それより、リュウジさんがわざわざ来たところを見ると、何か面白いことを思いついたんですか?」
「えっ? いや、面白いかどうかはわかりませんが。魔法共生菌が研究しやすくなるかも知れません」
「ほぉ。では、お茶を用意しましょう」
ポセリナが真面目に話を聞くときは、いつもお茶を用意してくれる。
* * *
ポセリナの淹れてくれるお茶は美味しい。
使徒は中性的と言っても皆同じというわけではない。男女差の中央値的な使徒もいれば、ポセリナのように体系は女性的で言動は中性的という使徒もいるのだ。
ポセリナの場合は性格も女性的かも? これって、自分で決めるんだろうか? それとも時間がたてばみんな同じになるんだろうか?
「美味しい」俺は、一口飲んで思わず言った。
「ありがとう」と言って、ポセリナも満足そうに笑って一口飲んだ。
「それで、研究しやすくなるというのは?」
「はい。今、魔法共生菌を厳重に管理しているのは、人間に感染して生気を吸う危険性があるからですよね?」
「はい。そうですね」
「より具体的に言うと人間にダメージを与える機能が無くなれば、つまり普通の共生菌のようになれば厳重に管理しなくても済みます。堂々と研究できるわけです」
「はい」
「あるいは、人間に感染さえしなければいいわけです」
「そうですね」
「これは、私がいた世界の話ですが、そういう生物の性質を変化させる研究をしていました。遺伝子を操作することで」
「なるほど。遺伝子ですか」
話はすんなり理解して貰えたようだ。つまり、知っているらしい。
「なんとか、魔法共生菌の遺伝子を操作出来ないでしょうか? 人間に悪影響を与える部分か、あるいは人間を選ぶ部分を人為的に作り変えることが出来れば、問題は解決すると思うんです。この世界で遺伝子操作が可能であればですが」
しばらく考えこむポセリナ。もしかして専門外だった? それとも無謀な思い付きだったか?
「ふむ。遺伝子操作ですか」
「やはり、難しいでしょうか?」
「そうですね」ポセリナさん、さらにしばらく考えてから言った。
「遺伝子操作そのものは、ここでも可能です」
「本当ですか!」
「ただ、その危険な遺伝子がどれなのかを確定する作業は時間が掛かるかも知れませんね。一か所とは限りませんしね」ポセリナは難しい顔で言った。
「やはり、そうですか」
「それと。その遺伝子を無効にしても同じように生きていけるかどうかですね」ポセリナは遠くを見るような目で言った。
「なるほど、人間の代わりが必要になる?」確かに、生きる環境は必要だろう。
「ええ、無駄に能力を獲得しているハズはないですから」
「なるほど。生命として生きる環境が必要な訳ですね」
「そうです。それと、今いる菌を駆逐できないと意味がありません」
「確かに、それもありますね。ん~、やっぱ素人考えではうまくいかないか」
「いえ、そうとも限りませんよ。少なくともやってみる価値はあるでしょう」ちょっと明るい表情になって言うポセリナ。
「ウリス様に成功する確率を調整して貰おうかな」
「可能ならば……ね」
にっこり笑って応えたポセリナだったが、その後ブツブツと独り言を始めた。ん? これは自分の世界に入ってしまったかも? この人、こうなるとちょっと戻って来ないんだよなぁ。
俺は、その美しくも凛々しい容姿に見惚れつつも、期待を込めて待っていた。
「はっ。すみまん。ボクまた自分の世界に」
「いえ、大丈夫です」
「ちょっと、思い付いたことなどありますので、いろいろ試してみます。ヒントをありがとうございました」
「はい。ではまた伺います。お茶、ごちそうさまでした」
「はい。それではまた」
ポセリナは、心はもうここにない風だった。頭をフル回転させてるんだろうか。うまく行ってほしい。
* * *
研究室を出ようとしたら、ポセリナの同僚の使徒ピルーセに呼び止められた。
「リュウジさん、ちょっといいですか?」
「はい、なんでしょう?」
「実は、私も神魔動アシスト自転車を使ってみたいんです」
「え? 使徒さんって転移でどこにでも行けるでしょ?」
「はい。でも街で買い物もしてみたくて。すみません」
なるほど、目立っちゃうからな。
「あ、全然オッケーですよ。そうか、そんなこともあるんだ。じゃ、何台かあったほうがいいのかな?」
「ああ、良かった。二台あれば十分かと」
「そうですか。でも、それを見て乗りたくなる方も出るでしょうから、三台用意しましょう」
「いいんですか? よろしくお願いします」
「はい、待っててくださいね」
ちょっと小柄なピルーセさんを見てると、なんとなく後輩みたいな気持ちになっちゃうんだよね。たぶん俺の何倍も生きてるんだろうけど。
研究所に来てくれてる使徒には、地上界に降りて不自由もあるだろうから少しでも楽しみがあるなら融通してあげたいと思っている。
そういえば、神様と言っても何でも知ってるわけじゃないって言ってたもんなぁ。使徒ならなおさらだ。地上界に来たら地上界を楽しんでほしい。
うん、これからはもっと希望を聞くことにしよう。俺が作ったものを使ってくれるのは、もちろん嬉しいし。
そういえば、中性的な使徒さんに、年齢とか聞いても失礼にならないかも知れないな? こんど聞いてみるか? いや、止めとこう。たぶん、やばい結果しかない気がする。
神魔研究所の特効薬研究班はポーリンや他の使徒達だけで研究を続けている。
一方、神魔基礎研究班もミルルが抜けてポセリナたち使徒によって運営されていたが、神魔力融合現象の発見後は『魔法共生菌による神界リセット無効化の信ぴょう性について』というレポートを纏めたのが最後で本来の基礎研究に戻っていた。
彼らが纏めたレポートは悪魔の証明こそ出来ないが『魔法共生菌が神界リセットをキャンセルした証拠はない』という意見書の一部として採用された。
「おや、リュウジさん珍しいですね」
俺が神魔基礎研究班に顔を出すと、いち早く見つけたポセリナが声を掛けて来た。
「ポセリナさん、ご無沙汰してます。忙しいですか?」
「ほほっ、単調な日々の繰り返しですよ」つまり、順調と言うことかな?
「それより、リュウジさんがわざわざ来たところを見ると、何か面白いことを思いついたんですか?」
「えっ? いや、面白いかどうかはわかりませんが。魔法共生菌が研究しやすくなるかも知れません」
「ほぉ。では、お茶を用意しましょう」
ポセリナが真面目に話を聞くときは、いつもお茶を用意してくれる。
* * *
ポセリナの淹れてくれるお茶は美味しい。
使徒は中性的と言っても皆同じというわけではない。男女差の中央値的な使徒もいれば、ポセリナのように体系は女性的で言動は中性的という使徒もいるのだ。
ポセリナの場合は性格も女性的かも? これって、自分で決めるんだろうか? それとも時間がたてばみんな同じになるんだろうか?
「美味しい」俺は、一口飲んで思わず言った。
「ありがとう」と言って、ポセリナも満足そうに笑って一口飲んだ。
「それで、研究しやすくなるというのは?」
「はい。今、魔法共生菌を厳重に管理しているのは、人間に感染して生気を吸う危険性があるからですよね?」
「はい。そうですね」
「より具体的に言うと人間にダメージを与える機能が無くなれば、つまり普通の共生菌のようになれば厳重に管理しなくても済みます。堂々と研究できるわけです」
「はい」
「あるいは、人間に感染さえしなければいいわけです」
「そうですね」
「これは、私がいた世界の話ですが、そういう生物の性質を変化させる研究をしていました。遺伝子を操作することで」
「なるほど。遺伝子ですか」
話はすんなり理解して貰えたようだ。つまり、知っているらしい。
「なんとか、魔法共生菌の遺伝子を操作出来ないでしょうか? 人間に悪影響を与える部分か、あるいは人間を選ぶ部分を人為的に作り変えることが出来れば、問題は解決すると思うんです。この世界で遺伝子操作が可能であればですが」
しばらく考えこむポセリナ。もしかして専門外だった? それとも無謀な思い付きだったか?
「ふむ。遺伝子操作ですか」
「やはり、難しいでしょうか?」
「そうですね」ポセリナさん、さらにしばらく考えてから言った。
「遺伝子操作そのものは、ここでも可能です」
「本当ですか!」
「ただ、その危険な遺伝子がどれなのかを確定する作業は時間が掛かるかも知れませんね。一か所とは限りませんしね」ポセリナは難しい顔で言った。
「やはり、そうですか」
「それと。その遺伝子を無効にしても同じように生きていけるかどうかですね」ポセリナは遠くを見るような目で言った。
「なるほど、人間の代わりが必要になる?」確かに、生きる環境は必要だろう。
「ええ、無駄に能力を獲得しているハズはないですから」
「なるほど。生命として生きる環境が必要な訳ですね」
「そうです。それと、今いる菌を駆逐できないと意味がありません」
「確かに、それもありますね。ん~、やっぱ素人考えではうまくいかないか」
「いえ、そうとも限りませんよ。少なくともやってみる価値はあるでしょう」ちょっと明るい表情になって言うポセリナ。
「ウリス様に成功する確率を調整して貰おうかな」
「可能ならば……ね」
にっこり笑って応えたポセリナだったが、その後ブツブツと独り言を始めた。ん? これは自分の世界に入ってしまったかも? この人、こうなるとちょっと戻って来ないんだよなぁ。
俺は、その美しくも凛々しい容姿に見惚れつつも、期待を込めて待っていた。
「はっ。すみまん。ボクまた自分の世界に」
「いえ、大丈夫です」
「ちょっと、思い付いたことなどありますので、いろいろ試してみます。ヒントをありがとうございました」
「はい。ではまた伺います。お茶、ごちそうさまでした」
「はい。それではまた」
ポセリナは、心はもうここにない風だった。頭をフル回転させてるんだろうか。うまく行ってほしい。
* * *
研究室を出ようとしたら、ポセリナの同僚の使徒ピルーセに呼び止められた。
「リュウジさん、ちょっといいですか?」
「はい、なんでしょう?」
「実は、私も神魔動アシスト自転車を使ってみたいんです」
「え? 使徒さんって転移でどこにでも行けるでしょ?」
「はい。でも街で買い物もしてみたくて。すみません」
なるほど、目立っちゃうからな。
「あ、全然オッケーですよ。そうか、そんなこともあるんだ。じゃ、何台かあったほうがいいのかな?」
「ああ、良かった。二台あれば十分かと」
「そうですか。でも、それを見て乗りたくなる方も出るでしょうから、三台用意しましょう」
「いいんですか? よろしくお願いします」
「はい、待っててくださいね」
ちょっと小柄なピルーセさんを見てると、なんとなく後輩みたいな気持ちになっちゃうんだよね。たぶん俺の何倍も生きてるんだろうけど。
研究所に来てくれてる使徒には、地上界に降りて不自由もあるだろうから少しでも楽しみがあるなら融通してあげたいと思っている。
そういえば、神様と言っても何でも知ってるわけじゃないって言ってたもんなぁ。使徒ならなおさらだ。地上界に来たら地上界を楽しんでほしい。
うん、これからはもっと希望を聞くことにしよう。俺が作ったものを使ってくれるのは、もちろん嬉しいし。
そういえば、中性的な使徒さんに、年齢とか聞いても失礼にならないかも知れないな? こんど聞いてみるか? いや、止めとこう。たぶん、やばい結果しかない気がする。
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