異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

文字の大きさ
上 下
59 / 189
神聖アリス教国建国編

59 建国宣言、そうだ迎えに行こう! 王都アリス

しおりを挟む
 キリシスの俺たちの街に帰って来た。

 上空から見る街は、既に大都市であるにもかかわらず整然としていた。
 高度を下げるに従い見えてくる美しくのびる街道と街道を足しげく行き交う人々が、その繁栄を物語っていた。

 街の中心には、真っ白に輝く王城が建っていた。赤い屋根が葺かれて染みるように輝いている。
 自分で作っていた物なのだが、ちょっと見ない間に大きく変わっていて驚きを隠せない。成長した子供を親が見たら、こんな感覚になんだろうか?

 飛行船はゆっくりと降下し王城近くに新設された飛行船発着場に向かった。
 接近するにしたがって王城は単純な白ではなくキラキラと輝いていることがわかる。

「ほう。素晴らしく美しい城ですな。まるで女神様の居城のようだ」

 展望室から見下ろしていたナディアスのボーフェンが思わずそう言った。
 そう、居たりするんですよ、これが。おまけに、ひとっ風呂浴びてたりするんです。
 あっ、王城の屋上に女神湯作って置けばよかったかなぁ? 上空から降りてくると、お風呂から女神様が手を振ってたら楽しいかも。

ー あら、面白いわね!
ー 嘘です。ごめんなさい。

 屋上はともかく、高空からの見晴らしのいい露天風呂は気持ちいいだろうなとは思う。

ー それ、飛行船に作れば、いいんじゃない?
ー 女神様。それ、とっても大変なんですけど?
ー 希望よ、希望。
ー 確かに、気持ち良さそうなので、出来るようなら作ると思います。

 まぁ、普通に風呂はあるので大きくするだけなんだが。

 発着場の近くまで来ると王城が目の前に迫って来た。思えば、王城に近すぎるかもな。

「見たことのない美しい建材ですな」とナエル王。

 王城新築の為に俺がルセ島の砂から作った石だが、驚くことに「神輝石」と呼ばれる宝石だった。
 産休リゾートの合間をぬって女神ビーチの砂を焼き固めて石材を作ったのだが、この石はダイヤモンドが含まれているのか半透明であまり見たことない美しい石になった。
 気に入ったので王城の建材として大量に使ったのだが、これが宝石だとは思わなかった。

 質素な王城だと思って作っていたのだが、希少な宝石をふんだんに使った物凄く高価で贅沢な城が完成してしまっていた。
 オットーはそれを知っていたのか全く削っていない。どうりで、細かい指示を出して来たわけだ。知らない間に俺も造形に参加していたのだ。俺の仕事を見て「いい石工だ」とか言ってたし。
 ちなみに、ダイヤモンドに匹敵する硬度を持ち、ちょっと砕いて持って帰るなんてことは出来ない。ま、防御フィールドも張るんだけどね。盗まれないようにじゃなくて固くて危ないからだけど。

  *  *  *

 ということで、迎えた王族たちの驚きようは無かった。

「こここ、こんなことがあるのか? 全部神輝石ではないか!」

 アイデス王国のノミナス国王、開いた口が塞がらないといった様子だ。
 今日、ここに泊まるけど大丈夫かな? っていうか、なんか俺が凄く贅沢な王様に見られそうでヤバイんだけど。俺が作って、俺が工事してるんだけど? ま、言い訳するのもアホっぽいので黙ってるけど。

「たまたま鉱脈を掘り当てましてね」

 鉱脈『俺』みたいな? てか、どんだけデカい鉱脈だよ。

「まさに、言葉もありません」とナミア国ワレスト国王。

 まぁ、小さい指輪に付ける石でも高価な宝石ですからね。全部ダイアモンドで出来た城を見たような感じか?

「うむ。我が女神様の名を冠する国に相応しき城ですな」

 オキ神国のラーセル法王、俺の城を気に入ってくれたようでなにより。というか、宝石に興味がない様子。

「……」

 アブラビのミゼール、さっきから何か言おうとしているのだが言葉が見つからないようだ。というか、指さしたまま固まってる。
 カセームの新王ピステル・カセームも、さっきから一言も発していない。こっちは、なんかニヤニヤしている。何かと思って聞いてみたら。

「砂糖菓子みたいで、美味そうだ」さいですか。食べるなよ。腹壊すぞ。

 王城に着いて、各国代表団をそれぞれの部屋に案内したのだが、そこここで驚きの声や感嘆の声が上がっていた。

 ミゼールは個室で踊りだすし。

「いいのか?」とミゼール。
「何が?」
「こんな、お姫様のような部屋を使って」
「いや、お前お姫様だろ」
「ああ、まぁ、そうなんだが」
「ゆっくり休めよ」
「ありがとう」

 ちなみに、ミゼールの従者たちも大喜びで、しばらくきゃーきゃー言っていた。ゆっくり休めたかどうかは分からない。

 この王城は小さいながらも、その機能は揃っている。
 大ホール、謁見の間、サロン、談話室、執務室、食堂、厨房、浴場などだ。

 謁見の間とか使わないだろうと言ったら、無いと会えない人も出てくるらしい。
 セキュリティを考えた部屋と言うことか。まぁ、俺に手を出す奴も居ないと思う。もっとも、統治しないので儀礼的な使い方しかしないのだが。
 そう言えば、後で気づいたけど「統治しない=儀式だけ残る」ってことなので、ちょっとうんざりしている。ま、作ったばかりだから特別な儀式なんて無いからいいか。
 二階は全て客人の寝室になっている。

 俺たちが住む旧領主館があった場所は、宮廷として新しく建て替えられた。
 ここにホールなどはないが、遊戯室や天文台や工作室など俺の趣味の部屋がある。まぁ、客を呼ばない施設なのでなんでもアリだろう。
 女神湯はエントランスが変更されたがそのままで宮廷の一部になっている。後宮も変更なし。

  *  *  *

 最悪、2月一杯かかるだろうと思っていた建国宣言招待の旅は思ったより早く済んだ。
 このため三月の建国祭まで一週間まるまる暇になった。それで、暇な各国代表を引き連れて、この国を紹介することにした。

 まずは、派手な神魔動乗用車と神魔動飛行艇のデモだ。ちょっとした博物館のような展示場がある。

 まず、前身となる自動荷車や自動乗用車を見せた上で神魔動車を見せた。
 飛行船で既に新しい技術には触れているし、アリステリアスのヒュペリオン王が時々神魔動車を走らせていたので大きな驚きも無かったが、実際に手で触れてみると実感が湧くのか感嘆の声が上がっていた。
 特に、エンジンの構造などを説明すると時々食いついて来る人がいる。たぶんヒュペリオン王の仲間になる人たちと思われる。

 神魔動飛行艇のデモでは、神魔動エンジンの説明よりも実際に乗れる空中散歩デモに関心が集中した。飛行船と違い早さが体感出来るので、大して凄くない機動でも大騒ぎになった。

「ぬぉおおおお」なんでか居るヒュペリオン王。いつの間にかデモに参加してるし。

「いや、飛行艇は、ちょっと怖くてな。自分では運転できなかったのじゃ」

 神魔動車は平気でも神魔動飛行艇は苦手なんだ。
 でも、乗ってみたかったらしい。あまり変わらないんだが。

 意外と肝が据わっているのが砂の王国カセームのピステル国王だ。
 飛行艇の助手席で余裕の笑みだった。クーデターで一皮むけたのかも。
 その後、工場の見学もしたのだが、実機を見た後なので説明を熱心に聞いていた。

 このほか、製鉄所の溶鉱炉や薬品工場、農業機械、織物工場などの見学もしたので、一週間はあっという間に過ぎてしまった。
 王族相手なので過密スケジュールも出来ないしね。ただ、この街が、とてつもない進化を遂げているという認識は持ったようだ。
 宗教を前面に出している新国家が、新技術でも最先端に立っているということに衝撃を受けているようだった。

 まぁ、この二つが相いれないと思う時点でおかしいんだけどね。たぶん。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

処理中です...