異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

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神聖アリス教国建国編

58 建国宣言、そうだ迎えに行こう! 東方諸国連合、アイデス王国

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 東方諸国連合を目指して飛行船でたどり着いた場所は戦場だった。

 聖アリステリアス王国から東方の諸国を訪れるには、キリ山脈を越える危険な道を通る必要がある。それ以外では、今回の飛行船で来たようなルートを海路で辿るしかない。
 このため、聖アリステリアス王国とこの地方との交流は殆どない。さらに、戦争中ということは友好関係を構築する時期とは言い難いだろう。ここは、素直に諦めてパスするのが賢いやり方だろう。
 ただ、聖アリステリアス王国から東方に交易路を確保したい場合に、中継点となるこの場所が抗争中なのは都合が悪い。出来れば平和的に解決して欲しいものだ。
 まぁ、だからといってこっちの都合を押し付ける訳にもいかないのだが、事情だけでも聴いておくか?
 とりあえず、決着が付いたら話を聞けるかも知れないと、しばらく停滞して観察していたが睨み合ってるだけで埒が明かない。やる気がないなら、とっとと帰ればいいのにと思う。まぁ、きっかけがないのかも。
 そこで、ちょっと手荒だが強硬手段に打って出ることにした。

「あ~、いま戦争しようとしているバカどもに告げる。即刻中止し、我々の言うことを聞け。我々に逆らう民族は、東に見える岩山と同じ運命をたどるであろう」

 拡声器で上空からそう言った後、こちらの話を理解して東の山を見たタイミングで東の岩山をチュドーンと砕いた。
 岩山は、ど派手に粉々となり平地になった。

「な、なんだあれは」ある兵士。
「怪しい船だと思ったら。神の光を使うのか」また別の兵士。
「それってラピュ〇?」なんで知ってるんだよ。
「雲がないぞ」お前もか。

 すみません、これは俺の妄想です。
 まぁ、神の光ってのは、その通りなんだが。
 毎回やることが同じなので、そろそろ変えようかとは思ってる。こうなったら、神魔動エンジンから神魔動粒子を集めて前面ハッチから打ち出す方式にしようか? 対閃光防御とか、面倒なことになるのでやめとこう。てか、神魔動粒子なんてないし。てか、全滅するし。

 俺は、さらに戦場の真上に進み出て呼びかけた。

「話し合いをする気があれば戦いを放棄して代表をこちらへ送れ。話し合いをする気がない国は即刻消滅させる。期限は正午。この飛行船が降下し終わるまでとする」 

 結構、悪辣なこと言ってる。
 もしかすると、これ魔王登場シーンかも? ま、本気じゃないので魔王もどきの登場シーンだ。女神様が沢山乗ってる船に魔王がいちゃまずいよな。

「代表、送ってくるかのぉ?」とヒュペリオン王。
「まぁ、国の元首は、ここにはいないだろうけど将軍なら話は出来るだろう」
「そうじゃの」

  *  *  *

 しかし、実際に出てきた代表者はどちらも国王だった。
 アイデス王国ノミナス国王と、東方諸国連合の代表ナミア王国ワレスト国王だ。
 軍は出て来ていたが、どちらもハッタリだったのかも知れない。そう言うときは、仲裁する国を立ててからやれよ。

 両者の話を聞き戦争の原因が判明した。

 アイデス王国の言い分はこうだ。
「東方諸国連合は、密かに毒物を我が第一王子に飲ませ暗殺を謀った」

 東方諸国連合の言い分はこうだ
「暗殺を謀ったのはアイデス王国である。東方三国の子息達は皆アイデス王国の刺客により床に臥せっている。毒薬の解毒剤を即刻渡すよう要求する」

 どっちも本物の刺客なら既に死んでると思うんだが。ずいぶん優しい刺客らしい。

 まぁ、どちらも戦争に打って出る理由としては一応納得がいく。
 また、どちらの国の子息達も重体ではあるが一命は取り留めているようだ。

「わかりました。ではまず、それぞれの言い分が正しいか検証してみましょう。話はそれからということで」
「いいでしょう」と、アイデス王国ノミナス国王。
「了解した」と、ナミア王国ワレスト国王。

  *  *  *

 まず、アイデス王国へ行った。
 首都はネムルス、こちらも湾港都市だ。オキ神国とは海路で交流があるが地理的に近いため特に珍しい貿易品も無く取引量は少ないようだ。このため、主な産業は漁業ということだった。

 床に臥せった原因は、王宮に行って第一王子を見舞った瞬間すぐに分かった。魔法共生菌だ。独特の衰退の仕方をしている。

「この国の子供で似た症状の子はいませんか?」

 俺の言葉に、ついて来た役人たちは黙っていたが、おもむろに担当医が口を開いた。

「そういえば、最近風邪が流行っているようです。王子ほど酷くはありませんが」
「ですが、それは毎年のこと」これはついて来た役人だ。やはりか。

「ええ、ただ。何年も繰り返すと王子のような症状になります」

 実際は、女神様によって健康体になったばかりなので症状が目立つようになったのだろう。

「なんと、それは本当ですか?」
「はい。われわれは、この病気によく効く特効薬を開発しました。まずは、これを試されてはいかがでしょう?」

「と、特効薬と……。そ、それは、本当か? 嘘であったなら」
「私が嘘を言う理由がありません」
「そ、そうだな。わかった。では、お願いする」

「いいでしょう。ネム」
「はい。こちらに」

 後ろに控えていたネムが、バッグから特効薬の瓶を取り出した。

「病気になっていない人には無害ですので毒味をされても結構です」

 ネムは魔法共生菌特効薬をサンプルとして常に持ち歩いている。
 王様の後ろに控えていた従者が前に出たので少し飲ませてやった。

「甘くてうまい」
「はい、飲みやすいシロップになっています」

 これを聞いて確信したのか、王様は大きくうなずいた。それを合図にシロップ状の液体を王子の口に含ませた。

「この病気は他の子供にも移ります。同じ症状の子供がいたら、薬を飲ませる必要があります。案内してもらえますか?」とネム。
「もちろんです」

 担当医は、力強くうなずいた。

  *  *  *

 薬を処方して俺たちはしばらく待った。
 感染部位の関係もあり、効果はすぐに現れる。
 俺たちは小さめの客室で待っているとほどなく知らせが届いた。

「王様! 王子の熱が下がりました! 苦しさも和らいだ模様です」担当医が報告した。

「な、ほんとうか? 直ぐにいく。客人、しばしお待ち頂きたい」

 そう言うと、ノミナス国王は急ぎ足で息子の下へと向かった。

「もう大丈夫だな」俺は確信して言う。
「はい」ネムも嬉しそうに応えた。

 すると、それを横で聞いていたナミア王国ワレスト国王がおずおずと言った。

「失礼、先ほどの王子の病気は当方の子息達の症状と同じようなのだが、こちらもあなた方の薬で治せるでしょうか?」

「それは、見てみないと分かりません。同じ病なら治せるでしょう」
「真か。ならば、直ぐに来てもらえないだろうか?」

 はやる気持ちは分かるが、少し落ち着くように言った。

  *  *  *

「お待たせしました。あなた方の提供してくれた薬で子供達全員の熱が下がり快方に向いました。大変すばらしい薬をありがとうございます」

 担当医が戻ってきて礼を言った。

「リュウジ殿、あなたの言う通りでした。われわれが間違っていた。深く謝罪する。そして、息子を救ってくれてありがとう。本当にありがとう」

 さすがにノミナス国王、涙を流して喜んでいる。

「いえ。この薬を広めるために私達は世界を回っています。間に合って本当に良かった」
「うむ。その志、さすが女神様を奉る国とお見受けした。ぜひ我が国も貴国に協力させてほしい」
「はい、ありがとうございます。ですが、まだ治さねばならない患者がいます。詳しい話は、後程」
「うむ。そうだな。では行ってやってくれ」
「わかりました」

 俺たちはすぐに東方諸国を周り患者の治療にあたった。
 ぶっちゃけ、魔法共生菌じゃなくても大抵の病気なら神力で治癒することは出来るので戦争を収めることには自信があった。
 結果的には全員魔法共生菌が原因だったが、刺客の可能性はまずないだろう。
 だが、この大陸の東側では思ったより流行しているようだ。

  *  *  *

 翌日には全員顔色も戻り食欲も回復したとのことだった。
 俺たちは、さらに1日置いた後、両方の代表者を飛行船に集めて俺達の訪問理由を説明した。

「なんと、この病は、それほど危険なものだったのですか」とノミナス王。
「ええ、ぜひ我々の防衛体制に参加してください」

「それは、願ってもない事。ぜひ、貴国と友諠を結び共にこの病と闘いたい」
「われわれも同様ですぞ。危うく子息達ばかりか国をも無くすところを救ってもらったのだ。この恩、返し切れるものとも思わないが、力の限り協力させてもらいますぞ」とワレスト王。

「ありがとう御座います。皆で協力して、なんとかこの危機を乗り切りましょう」
「わかりました」とノミナス王。
「よろしく、頼みます」とワレスト王。

  *  *  *

「それにしても、リュウジのやり方は、ちょっと荒っぽ過ぎない?」

 その夜、アリスから突っ込みが入った。

「わらわも、そう思うぞ」とリリー。
「まぁ、そうなんだけど、勝手に仲裁に入って来る奴なんて怪しすぎるだろう? 力を示さないと聞いてくれないと思ってさ」
「そうだけど」
「確かにのぉ」

「ま、睨み合いだったから出来たことだ。たぶん、突っ込み待ちだったんだよ。押すなよ押すなよって奴だ」
「あ、あれね!」
「なのじゃ?」

  *  *  *

 翌日、アイデス王国と東方諸国連合の代表団を乗せてキリシスへの帰路に就いた。
 訪問予定はすべてクリアしたからだ。ただし、途中でちょっと遠回りをする必要ができた。

「ちょっと、追加で乗せたい人がいますので高速で飛ばしますね」

 今までは高速と言っても時速四百キロメートル程度だったが、最高速の時速七百キロメートルを出して南西の地、砂の王国カセームを目指した。
 最高速を出すと、まだちょっと五月蠅い。改良の余地があるなと優雅にワインなど飲みながら食事をしていた俺なのだが、周りのみんなは度肝を抜かれていた。

 そして行った先には、大きな荷物を持ってキリシス地方を目指して旅をするカセームの新王ピステル・カセームの姿があった。
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