異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

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神聖アリス教国建国編

55 建国宣言、そうだ迎えに行こう! 砂の王国カセーム2

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 俺たちは、しばらく飛行船の中から様子を窺っていたが何も動きがないので次の目的地へ移動しようかという話になった。

 あれだけ言って目を覚まさないようなら時間を使う価値がないというわけだ。

「衰退中の国に、多くを望んではいかん」とヒュペリオン王が言う。
「まぁ、一応褒美を出すとは言ってるんだけど」
「いや、おびき出す為だけだろう。あの数の兵は拘束する気しかありえん」と、ヒュペリオン王は言い放った。
「確かに」

 思いっきりバレてるし。

 翌朝には出立することになった。

  *  *  *

 早めの夕食を済ませた俺は、俺専用の飛空デッキに上り砂漠の夕陽を見ていた。
 普通ならここは暑いのだろうが使徒になってから体の周囲は快適空間に保たれるようになったので平気だ。陽射しが当たるところが少し暑く感じる程度の変化しかない。

「夕陽を見ているのか?」そう言ってリリーも上がって来た。
「ああ、折角砂漠に来たんだから見ておこうと思ってな」
「わらわも、一緒していいか?」

「あんまり、うろうろするなよ」俺は飛空デッキのベンチを空けてやった。
「ふふ。動く階段があるから大丈夫じゃよ」リリーも使徒なので、体の周囲は快適空間になっているので心配はない。

「ほう、砂漠の夕陽は真っ赤なのじゃな」
「ああ、ちょっと独特だよな」
「お主といると、色んなものが見れるのぉ」リリーは感慨深げに言った。

 俺は夕陽が完全に沈んでもそのまま眺めていた。
 いつの間にかリリーは寝息をたてて俺に寄りかかってきた。何か夢でも見ているのか小さくつぶやいている。
 この娘はどんな夢を見るんだろうか? 舞踏会の夢でも見るんだろうか?

 面白がって鼻先をくすぐったら、さすがに起きた。
 俺がいたずらしたのが分かったのか、ちょっと睨まれた。この子は色んな表情が楽しい。

「まだ、戻らんのか? もう真っ暗闇じゃぞ」
「もう少し待って。ほら、ベンチに横になって」そう言って手探りでリリーを誘う。
「こうか?」
「上を見ると。だんだん見えてくる。ほら」

「なんじゃ? 星なぞ珍しくもないじゃろ? いつも同じじゃ」
「うん? そんなことないよ。少しずつだから見逃しちゃうけど、変わってるんだよ」

「そうなのか? お主は何でも知っておるのじゃな?」
「そんなことないよ」

 もうすっかり暗闇になり、星がはっきりと見えるようになった。
 こんな星空、子供の頃に見たことがあるような気もするが、大人になってから見ると銀河の中に浮いているというのがわかる。いや、そういう知識があるからそう見えるのかも知れないが。

「なぁ、主様」
「なんだね、姫様」

「お主は、あの星のどこかから来たのじゃろ?」
「……そうだな」

「帰ろうとは思わぬのか?」
「そうだな。最初は、そんな時もあったな」特に、サバンナでは。

「今は?」
「今は、こうしているほうがいい」
「そうか」

 すると、リリーは俺の手を握ってきて言った。

「もし、リュウジが行くなら、わらわも行くぞ」
「……わかった」俺は、強く握り返して言った。

  *  *  *

 朝になってもパタンの街に変化は無かった。
 俺は次の目的地、都市国家シュゼールを目指し飛行船を上昇させた。シュゼールまでは壱千キロ。途中にロズ山脈があるので回避するが、まぁ2時間は掛からないだろう。
 飛行計画を調整していたらパタンの街の門から土煙を上げて騎馬が数騎出て来た。

ー 何かしら?

 アリスに教えられて気が付いた。

「誰か出てきたみたいだな」
「ふむ。あの数では、悪意は無さそうじゃの」と王様も安心して見ている。
「ちょっと、止まってやるか。さすがに追い付かない」
「やさしいのじゃのぉ?」リリーから突っ込まれた。
「まぁ、意思を示されたらね」
「うむ」

 飛行艇の下までやってきたので、俺はゆっくり下降させた。
 見ると、騎馬を降りて跪いている。武器も持っていないようなので、出て話を聞いてみることにした。

「私はカセームの第二王子、ピステル・カセームと申します。この度の非礼、深く謝罪致します」

「第二王子様がどうしてここへ?」
「はい、先ほどまで貴国へ謝罪し友諠を結ぶべきと王を始め国の重鎮たちを説得しておりましたが、聞き入れられませんでした。この上は力に頼ることになるでしょう」

 この王子、物騒なことを言い出した。

「ほう。それで助力が欲しいと?」
「いえ、国の大事は自らの力で成さねば意味がありません。貴国には今しばらくお待ちいただきたいと、お願いにまいりました」

 こんな王子もいるんだな。乳母が良かったのか?

「なるほど、了解しました」

 それで、ふと思いついた。

「では、個人的な友好の印として、あなたにはこの指輪を渡して置きます」

 そう言って俺は、持っていた指輪を差し出した。王子は、その指輪を大事そうに受け取って帰って行った。

「あれは、神化リングじゃろ? 意味ないのではないか?」とリリー。
「うん、使えない。ただ、魔石が数個入ってるからトラッキングするのに便利なんだよね」
「気になるのじゃな」
「まぁ、ちょっとな。じゃ、行くか」

 俺たちは、シュゼールに向けて出発した。
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