異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

文字の大きさ
上 下
45 / 189
神聖アリス教国建国編

45 神化リング誕生

しおりを挟む
 温水プールで話した後、聖アリステリアス王国の別荘に戻って女神様や使徒とお茶することにした。
 発見した『神力と魔力でエネルギーが生まれる』という現象、つまり『神魔力融合現象』の神界への影響について話し合うためだ。ちょっと慎重に動く必要がありそうだからだ。

 聖アリステリアス王国の別荘は、街や海岸が一望できる高台にあった。
 庭も綺麗に手入れされていて、南国らしい花々が咲いていた。そんな庭の東屋に女神様と使徒が集まっていた。のどかなお茶風景だが、考えてみるとG7サミットどころではないメンバーである。

「でも、こうなると、これは単に地上の大事件というだけでは無くなって来たわね」

 アリスがいつになく神妙な顔で言った。

「そうね。神界でも、そのエネルギー革命を起こせるわね」

 イリス様も真剣な表情。こういう、たまにしか見せない表情もいい。

「はい。むしろ神界こそエネルギー革命の恩恵を受けます。少しの魔石があれば神力が使い放題になりますから」
「ええ、そうね。神力の源として信仰を集めている以上、無駄には出来ませんから」とイリス様。

 その貴重な力を、何十倍にも増すのだから影響は計り知れない。他の女神様や使徒も大きく頷いている。

「担当神の地上界への原則不干渉主義も、エネルギー不足が元という話があるくらいです。これは神界を大きく揺るがす事になるでしょう」とイリス様。

 なるほど、地上界への不干渉は担当神だけの制約なのか。それ以外の神様は、それなりに地上界へ干渉するということか。

「あ、そうそう。それと、もう一つ」

 そういうと、女神様たち全員の視線が集中した。ちょっと痛いくらい。

「実質この世界が、神界への膨大なエネルギーの供給源になりそうってこともありますね」

 俺は、さらに重要なポイントを指摘した。神石の供給もそうだが、神魔力融合現象を使えるのは現時点でこの世界しかないからだ。

「「「「「「「あ~~~っ!!!」」」」」」」

 集まった神様たちと、その使徒たちは呆然自失。

「アリス!!! お主の使徒、とんでもないのである」とウリス様。
「わ、わたし知らないわよ」と焦るアリス。
「おいっ」それは無いだろ。

「た、確かに。これは、神界始まって以来の大事件でしょうね」とイリス様。
「もしかして、欲しかったあれが手に入るのか?」とポセリナ。
「ああ、私のマイホームが……」とポーリン。

 どうも、使徒の二人は神界独特のギャグを言ったらしい。期待して俺を見るが、笑うポイントが分からない。ごめん。

 そういえば、これって俺を召喚したアリスの手柄なんじゃないかな? ふとそう思った。

「そうだわっ! そうよ。私の手柄よね! 私、上級神になっちゃうかも」

 俺の考えを読んだアリスが言った。

「気の早い奴がいるのである」とウリス様。
「うん。リュウジの手柄だし、それほどでもない」とエリス様。
「でも、確かにアリスも偉いわね」とイリス様。
「お姉さま~っ。ありがと~っ」いや、それ俺が先に気付いたんだけど? いいけど。

 とりあえず、ここに来ている使徒や神様は、神界の上位神様に報告したようだ。

  *  *  *

 その後、俺は一人王城の工作室へ戻った。
 魔石で神格化を抑えられると分かったので、魔石を埋め込んだ指輪を作るためだ。これがあれば神格化を遅らせることが出来るし、より安全な出産になる筈だ。
 使徒化していなかったセレーネ達も神力が太くなり始めていたので必要だろう。

 この指輪は、普通の装飾用とは逆に指輪の内側に石が埋め込んである。つまり魔石が体に密着する。特殊な回路も組み込んであり、外見上は金の指輪だが常に魔石の効果が期待できる訳だ。

 で、この指輪を作ってから気付いたけど、この指輪の効果は神格化を抑えるだけじゃない。この現象の二面性のもう一つ、エネルギー革命も同時に実現出来てしまうのだった。
 つまりこれがあれば、神格化を恐れる必要がないことを意味する。ガンガン能力を使っても、神力は殆ど消費しなくなるからだ。
 また、最大パワーも増大する。要するに、スーパー使徒になる。もう、神様レベルまでに。
 さらにこの指輪、使徒だけじゃなくて神様にも使えるハズだ。そうすると、恐らくスーパー神様になる。これは、ちょっと予定外だった。

「うちの嫁達用に作った魔石入りのリングですが、神界のエネルギー革命を体験出来るので渡しときましょうか? これを使うと、女神様がスーパー女神様になっちゃうと思います」

 俺は、このリゾート島に来ている女神様の前で披露してみた。もちろん、指輪は嫁だけでなく俺も付けている。

「な、なんですって! 今すぐ、使えるの? スーパー女神様に? それって、上級神と変わんないじゃない?」

 アリスが思いっきり食いついて来た。

「はい、これが、変身ペンダント……じゃなくて、変身リング。衣装は自分で変えてくださいね」

「きゃ~っ、私、メイクアップ出来ちゃうの~っ?」アリス興奮し過ぎ。
「いや、既に女神様なので変身済み、みたいなもんですけど。さらにスーパー女神様2みたいになっちゃうと思う」

「ちょ、ちょっと、つけてみて!」

 アリスが手を出してきたので、指にはめてあげた。
 すると、健美パラメータを変えた時みたいに後光マックスへ。ありゃ、後光が十倍くらい広がってるんだけど、ヤバくないかこれ? ついでに、翼のように広がって浮き上がり始めた。

「お~いっ、アリス~っ。戻って来~いっ」
「あ、いっけな~い。てへぺろっ」
「おいっ」
「こ、これ、凄いわよっ。上級神レベルのパワー出してもあまり神力を使わない!」

「まぁ。わたくしも、ひとつ貰おうかしら」とイリス様。
「はい、イリス様なら何個でも」と言って、俺はイリス様の指にはめた。

「だめよ、リュウジ。とりあえず女神に1個よ。下手すると没収されちゃうから。あくまで試験と言えないと」試験と言い張るつもりなんだ。

「どのくらいもつのかしら?」イリス様は指にはまった指輪に触れながら言った。
「それは、埋め込んだ魔石の魔力が尽きるまでなので使い方次第ですね。リング表面に表示されてる数値が百から下がりますので残量は分かります。とはいっても、神力の補助なので、あまり消費しないハズです」

「今、結構神力を使ったけど、確かに百から減ってないわね」アリスが指輪を見て言った。

「お~。とりあえず、使ってみるのだ」と言って、手を差し出すウリス様。
「いたずらに使うのは止めてくださいね」と言いながら、指にはめてあげる。
「分かっているのだ」
「ほんとかなぁ?」
「約束するのだ」
「約束しないとだめなんだ」
「パレてるし」

「あ、これ、終わりそうになったら言ってください。魔力をチャージします」
「そこがまた、凄いわね」とイリス様。
「リュウジ、やっぱりとんでもない子」とか言いつつ、手を差し出すエリス様。

 女神様にリングを渡すとき、手を出されたので指にはめてあげたんだけど、これって気分的にヤバイ。神界の嫁っぽい。

 さすがに「変身リング」はないので「神化リング」と言うことにした。
 神化リングパ〇ー・メークアップ! 変身は自前です。

  *  *  *

 神界はともかく、地上界では神魔フォン開発プロジェクトに加え、魔石製造プロジェクトを立ち上げることになった。
 神魔フォンに必須なバッテリーの域を越えて、膨大なエネルギーの製造プロジェクトが、この国最大の産業として動き出すことになったのである。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...