異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

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黎明編

23 ミルルの不調

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 ミルルは普通の魔力切れより辛そうだった。
 念のため館に戻ったあと医者に見せたがやはり魔力切れだろうとのことだった。
 自動荷車開発で頑張ったので過労もあるんだろうが、ちょっと心配だ。

「ねぇ師匠、これって魔法共生菌の悪影響なんじゃない?」

 ニーナが心配そうに言った。

「例の生命力吸収か」

 繊細な話題だが、ネルは医者が来たタイミングでメイドの仕事に戻ったので問題ない。

「リュウジ~、わたし死んじゃうの?」

 ミルルはベッドの中から弱弱しく言った。

「そんな訳あるか。ちょっと魔法共生菌に生気を食われてるだけだ」
「やだよ~っ、こわいよ~、リュウジ~」
「大丈夫だ、俺がなんとかする」
「なんとかって、アレしかないよ」とニーナ。

「アレか」
「アレよ」

「あれぇ?」
「しかし、15歳だしなぁ」
「15歳? わらし、昨日16歳になったよっ」
「まじか」
「うん」

「じゃ、ミルル、ニーナと同じで俺の婚約者になるか?」
「リュウジの婚約者? いいの~? うん、なる~」

 ミルルは嬉しそうに言ってくれた。でもなあ。

「病人相手だしなぁ」
「何言ってんのよ。ミルルが嫌がってる訳ないでしょ?」
「そうなのか?」
「うん、嬉し~」
「なんで分かんないかな」

 いや、ふつう分からないけど?

「じゃ、婚約のキスな」
「うん」

 軽くキスしてみた。
 もしかして、これ医療行為なのか? 見ていると俺の神力が細くミルルに伸びていった。ただ、急には太くならないようだ。

「どうだ?」
「なんか、気分がよくらった」

 ちょっと笑って言った。表情も少し明るい。

「じゃ、ちょっと休め。マドラーおばあちゃんには使いを出したから心配いらない」
「うん、あいがとっ」

 ミルルは、すぐに寝息をたて始めた。

「眷属になったの?」

 ニーナはミルルに毛布を掛けてから振り向いて言った。

「いや、まだ繋がっただけだ」
「そう」
「でも、この状態のときニーナは悪化しなかっただろ? 神力で繋がってるからな」

「ああそうね」
「たぶん生命力の代わりに神力を食ってるんだろな」
「そうなの?」

「わからん。とりあえず、今はこのままでもいいかもな。簡単に使徒にするのもどうかと思うし」
「眷属になるには何か条件があるのかしら?」
「さあな」

 そもそも眷属にする方法なんてない筈なのだ。
 どういう理屈で俺の眷属になるのか不明だ。だから全くの手探り状態だ。やれることは、上手くいったニーナと同じにするだけだ。
 ただ、症状が悪化しないのであれば慌てて眷属にする必要はない。

  *  *  *

 翌朝

「トゥルルルルルルー」
「それならオッケーです」
「なんか、ちょっとつまんない」
「何言ってんですか」

「それより、この娘が新しい眷属ね」

 アリスはミルルを見て言った。

「それが、まだ繋がったところです」
「あら、なに遠慮してんの? いつもはぐいぐい行くくせに」

「え~っとっ」
「女神さまぁ~っ」

「ふぁ~っ……ん? リュウジ~、わたし女神様が見える気がする」

 ミルルが目覚めて言った。

「大丈夫だ、俺にも見える」

「わたしリュウジのベッドで寝てたの?」とミルル。
「私もいるから、ダイジョウブ」とニーナ。
「いや、お前のダイジョウブの意味が気になるんだが」

「ニーナさん? あ、わたし結婚したんだ」
「まだしてません」一応言っとこう。
「さっさと、しちゃいなさいよ二人とも。あ、三人とも」とアリス。

「そこ言い出すと、また話がおかしくなるので、ほっといてください」
「そう?」

 アリスは納得いかないようだ。

「あ、アリスさん!」

 ミルル、やっと気が付いた。

「お、頭がはっきりして来たな」
「どうしてここに?」
「実はね私、本当に女神なの」

 アリスは諭すように言った。

「へっ?……リュウジ?」
「うん」
「ニーナ?」
「うん」
「お休みなさい?」

 寝るな!

 起きて、事の成り行きをひと通り説明した。アリスはもう神界へ戻っている。

「なんか、まだわたし信じらんない」とミルル。
「そうよね。普通じゃないもんね」とニーナ。
「えっ? ああ、アリスさんが女神様なのは、そんな気がしてたから驚いてないよ?」

 ミルルはあっさり言った。

「マジか」
「鋭いわね!」

「じゃぁ、俺が使徒だったからか?」それは驚くよな?
「ちが~うっ。リュウジはもともと普通じゃないじゃん」あれ?

「普通じゃないんだ」
「うん、普通じゃないね」ニーナがダメ押しのように言う。
「わたしが、リュウジと婚約したってことだよ~っ」
「そっちか」

「うん、だって、ずっとニーナと一緒の二人見てて、『いいなぁ、わたしも、早くそうなりたいなぁ』って思ってたけど、想像すると相手はリュウジになっちゃうじゃん?」

 そうなのか?

「あ、分かる分かる」わかるんだ。

「朝起きたら隣にいるんだろうなぁ……とか想像する」なるほど。
「うんうん」

「で、今朝起きたら隣にいるんだもん」女神様もいたけどな~っ。

「あ、改めて聞くけど、いいんだな?」ちゃんと元気なときに聞かないとな。

「うん、いいよ。っていうか、ニーナいいの?」とミルル。
「えっ? 私? あ、そうか。なんか、女神様含めてみんなでいたら、こういうの当たり前な感じになっちゃってたかも。そういえば、そうよね」そうなのか?

「まぁ、隠し事できない人が、世界一の美女で、いきなり添い寝してくるからなぁ」

 これが原因なのか? 女神様効果? あり得るな。

「フツーじゃない人と結婚するって、コーユーことなんだね」

  *  *  *

 ミルルが俺と婚約して大きく変化したことと言えば、それは魔力だ。
 ミルルと俺は細いけど神力で繋がったので魔法は強力になった。

「す、凄い。これがわたし~? わたしってば、出来る女だったんだ~!」

 初めて自力で空を飛んだミルルはご機嫌だ。

「ふふ、ミルルかわいい~」

 ニーナは、隣でミルルのサポートをしている。

 魔法共生菌を駆逐したいのであまり魔法を肯定するような事はしたくないのだが、眷属として神力を使う時にも使えるので練習している。
 今は三人で飛翔訓練中だ。

「自分で飛ぶのってこんなに気持ちよかったんだ~。飛行艇とは全然違うね?」

「そりゃそうだ。自分の体が浮遊装置みたいなもんだからな。引っ張られるんじゃなくて、引っ張るんだ」
「あ、なるほど~。カーブするときも全然平気だね~」

「そうそう、回転で引っ張られるときの遠心力のかかり方が違うからな。抵抗はあるけど」
「うん、なんか見えない壁がある感じ。面白いね~」とミルル。

「けど、もう魔力切れしそうだから、この辺にしとこう」念のため俺は言った。
「はい」

「ちゃんと眷属になったら魔力切れしなくなるよ。師匠の神力だから」とニーナ。
「そっか~っ。早くちゃんと眷属になって、いっぱいもらお~っ」とミルル。
「いっぱいもらお~っ」とニーナ。

 うん、俺大丈夫かな?
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