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黎明編
18 飛行艇を作る-組み立て編2-
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何はともあれ、これでミルルも魔法を使えるようになった。
ただ、ニーナほどの魔力は出せなかった。神力がないから仕方ない。
「ううう。私ってダメな子」
ミルルが残念そうに言った。
ダメじゃないんだけど、説明する訳にもいかない。
「大丈夫、そのうち強くなるかもしれないし」とニーナがフォローする。
「でも、普通はこんなもんだって、おばあちゃん言ってた。ニーナさん達が普通じゃないって」
「うん、そうなんだけど」
「あ、もしかして、ニーナさんと一緒に居たら魔力が強くなるかな?」
「えっと、私の場合は師匠に……」
いや、そんな謎めいた言い方してこっち見ないでほしい。出来ることと出来ないことはあるからな!
「リュウジに教えて貰えば魔力強くなる?」
何か勘付いたのか、ミルルが言う。
「いや、そんなことはない。ニーナがたまたまだと思う」
「リュウジ~、私も弟子にして!」
「ええと、子供はダメです」
「私、成人したよ?」とミルル。そう言えばそうだった。
「成人したての子供はダメです」
もう、酒でいいんじゃね?
とにかく、飛行艇が完成した。
完成した飛行艇には小さな車輪も付いていて、車のように走ることも可能だ。ただ、あまり得意ではない。アクセルはともかく、ハンドルは無くてジョイスティックのような操縦桿だからだ。
一応前輪はスティックの傾きに合わせて向きを変えられるので問題ないのだが、ちょっと使いずらい。
* * *
いよいよ完成した飛行艇の試運転だ。
俺たちは飛空艇に乗り込み、路地から出て大通りをゆっくりと街の門に向かった。
飛空艇は本来二人乗りなのだが、後ろの荷台にミルルが自分の座席を用意して座っている。窓には防風ガラスが貼ってあるので外もよく見えた。
大通りに入ると、「変なものが動いてる~っ」と子供達が寄ってくるのでなかなか進めない。
「ミルルちゃん、変わった荷車に乗ってるねぇ?」
サンルーフから顔を出しているミルルを見て、知り合いの親父が声をかけてきた。
「へへっ。凄いでしょ、これ新作の魔道具なんだ~っ」
「へぇ、もうそんな凄いもん作れるようになったんだ!」
「まぁ、さすがマドラーおばあさんの孫ねぇ」
おばさんたちも感心している。意外とマドラーばあちゃんって有名人なのかも?
そんな風にしてたら、大通りを抜けて門を出るまでかなり時間がかかってしまった。まぁ、見慣れればもっと早く移動できるだろう。といっても、街中では速くても荷馬車の速度になってしまうのだが。
* * *
門を出て街道まで移動すると、さすがに速度を出せるようになった。
「わぁ~っ、速い、速い~」
「ほんと、馬車より速いわね!」
ミルルとニーナはそう言うが、あんまり速くない。
地上にいるときは、あまり傾きを出せないし摩擦が大きいから浮遊装置では早く進めないのだ。補助で付けた進行方向の加速装置だけで動いている。
「まぁ、道がガタガタだし、これが限界だな」
「うん、ちょっとお尻、痛い~」
「わたし、クッション用意するね」
「ニーナさん大好き~っ」
「はは、じゃ~、そろそろ飛ぶぞ」
「はい」
「お、おっけ~」
そう言うと、ミルルが後ろから手を回してしがみ付いてきた。
「おい、ミルル、俺につかまったら運転できないよ」
「だって、飛ぶんでしょ? 飛べる人に掴まらないと何かあったらヤバいじゃん」
「なるほどな。けど、お前の作ったものを信じろ」
「う、うん、分かった」
そう言ったものの、ミルルは俺から離れない。
怖くて手が外れないようだ。俺とニーナは飛べるけど、ミルルは無理だから仕方ない。
「まぁいい。じゃ、いくぞ」
アクセルを踏み込み、ゆっくり上昇した。
「きゃ~っ、すぎょい、リュウジ、すぎょい」
ミルル、震えてる割には喜んでる。ジェットコースターとか絶叫系で遊んでるような感じかも?
「とりあえず、少し上昇したら停止する」
「了解。上昇してホバリングだよね?」
駆動系をやったミルルとはその辺の話もしてるので分かっている。
「このまま、前後左右に操縦桿を倒せば、その方向に進む」
「すごーい、速~い」
「す、凄いですししょ~っ。こんな速く飛べるなんて、私じゃ無理です」とニーナ。
まだ低空なので、なおさら速さが分かり易いようだ。
「じゃ、ターボだ!」
俺は加速装置のレバーを思いっきり倒す。
加速装置は前後のスティックの動きを補助する形で加速が加わるようになっている。ただ、補助と言ってもGが実感として分かるほど強力だ。
「きゃ~っ、すごーい。速い速い」
「し、ししょ~ぅ、やばいです~っ」
さらに、急回転したり、急上昇、急降下とかやってみせた。
「どうだ、凄いだろ~っ」
「す、凄いけど……ううう」
「ししょ~っ、下して下して。ミルルちょっと待ってね」
あ、ヤバかったか? 俺は飛行艇を街道脇に下した。
「もう、ししょ~ったら、女の子なんだから、あまり無理しないでくださいよ~っ」
もどしそうなのか? ミルルは草むらに走っていった。
「わ、悪かった」
俺がしょんぼりとしていたら、戻ってきたミルルが言った。
「リュウジっ、さっきのもう一回! もう一回やって!」って、気に入ったんかい!
ただ、ニーナほどの魔力は出せなかった。神力がないから仕方ない。
「ううう。私ってダメな子」
ミルルが残念そうに言った。
ダメじゃないんだけど、説明する訳にもいかない。
「大丈夫、そのうち強くなるかもしれないし」とニーナがフォローする。
「でも、普通はこんなもんだって、おばあちゃん言ってた。ニーナさん達が普通じゃないって」
「うん、そうなんだけど」
「あ、もしかして、ニーナさんと一緒に居たら魔力が強くなるかな?」
「えっと、私の場合は師匠に……」
いや、そんな謎めいた言い方してこっち見ないでほしい。出来ることと出来ないことはあるからな!
「リュウジに教えて貰えば魔力強くなる?」
何か勘付いたのか、ミルルが言う。
「いや、そんなことはない。ニーナがたまたまだと思う」
「リュウジ~、私も弟子にして!」
「ええと、子供はダメです」
「私、成人したよ?」とミルル。そう言えばそうだった。
「成人したての子供はダメです」
もう、酒でいいんじゃね?
とにかく、飛行艇が完成した。
完成した飛行艇には小さな車輪も付いていて、車のように走ることも可能だ。ただ、あまり得意ではない。アクセルはともかく、ハンドルは無くてジョイスティックのような操縦桿だからだ。
一応前輪はスティックの傾きに合わせて向きを変えられるので問題ないのだが、ちょっと使いずらい。
* * *
いよいよ完成した飛行艇の試運転だ。
俺たちは飛空艇に乗り込み、路地から出て大通りをゆっくりと街の門に向かった。
飛空艇は本来二人乗りなのだが、後ろの荷台にミルルが自分の座席を用意して座っている。窓には防風ガラスが貼ってあるので外もよく見えた。
大通りに入ると、「変なものが動いてる~っ」と子供達が寄ってくるのでなかなか進めない。
「ミルルちゃん、変わった荷車に乗ってるねぇ?」
サンルーフから顔を出しているミルルを見て、知り合いの親父が声をかけてきた。
「へへっ。凄いでしょ、これ新作の魔道具なんだ~っ」
「へぇ、もうそんな凄いもん作れるようになったんだ!」
「まぁ、さすがマドラーおばあさんの孫ねぇ」
おばさんたちも感心している。意外とマドラーばあちゃんって有名人なのかも?
そんな風にしてたら、大通りを抜けて門を出るまでかなり時間がかかってしまった。まぁ、見慣れればもっと早く移動できるだろう。といっても、街中では速くても荷馬車の速度になってしまうのだが。
* * *
門を出て街道まで移動すると、さすがに速度を出せるようになった。
「わぁ~っ、速い、速い~」
「ほんと、馬車より速いわね!」
ミルルとニーナはそう言うが、あんまり速くない。
地上にいるときは、あまり傾きを出せないし摩擦が大きいから浮遊装置では早く進めないのだ。補助で付けた進行方向の加速装置だけで動いている。
「まぁ、道がガタガタだし、これが限界だな」
「うん、ちょっとお尻、痛い~」
「わたし、クッション用意するね」
「ニーナさん大好き~っ」
「はは、じゃ~、そろそろ飛ぶぞ」
「はい」
「お、おっけ~」
そう言うと、ミルルが後ろから手を回してしがみ付いてきた。
「おい、ミルル、俺につかまったら運転できないよ」
「だって、飛ぶんでしょ? 飛べる人に掴まらないと何かあったらヤバいじゃん」
「なるほどな。けど、お前の作ったものを信じろ」
「う、うん、分かった」
そう言ったものの、ミルルは俺から離れない。
怖くて手が外れないようだ。俺とニーナは飛べるけど、ミルルは無理だから仕方ない。
「まぁいい。じゃ、いくぞ」
アクセルを踏み込み、ゆっくり上昇した。
「きゃ~っ、すぎょい、リュウジ、すぎょい」
ミルル、震えてる割には喜んでる。ジェットコースターとか絶叫系で遊んでるような感じかも?
「とりあえず、少し上昇したら停止する」
「了解。上昇してホバリングだよね?」
駆動系をやったミルルとはその辺の話もしてるので分かっている。
「このまま、前後左右に操縦桿を倒せば、その方向に進む」
「すごーい、速~い」
「す、凄いですししょ~っ。こんな速く飛べるなんて、私じゃ無理です」とニーナ。
まだ低空なので、なおさら速さが分かり易いようだ。
「じゃ、ターボだ!」
俺は加速装置のレバーを思いっきり倒す。
加速装置は前後のスティックの動きを補助する形で加速が加わるようになっている。ただ、補助と言ってもGが実感として分かるほど強力だ。
「きゃ~っ、すごーい。速い速い」
「し、ししょ~ぅ、やばいです~っ」
さらに、急回転したり、急上昇、急降下とかやってみせた。
「どうだ、凄いだろ~っ」
「す、凄いけど……ううう」
「ししょ~っ、下して下して。ミルルちょっと待ってね」
あ、ヤバかったか? 俺は飛行艇を街道脇に下した。
「もう、ししょ~ったら、女の子なんだから、あまり無理しないでくださいよ~っ」
もどしそうなのか? ミルルは草むらに走っていった。
「わ、悪かった」
俺がしょんぼりとしていたら、戻ってきたミルルが言った。
「リュウジっ、さっきのもう一回! もう一回やって!」って、気に入ったんかい!
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