上 下
17 / 189
黎明編

17 飛行艇を作る-組み立て編1-

しおりを挟む
 各自が作業を分担するようになってからは早かった。

 見る見る形になって行った。
 まず、機体は俺が作った。汎用ではなく俺専用の機体ということで無理な機動に耐えられる頑丈なものにした。
 ミルル担当の浮遊装置はまだ完成していないが、重量バランスを考慮して取付位置を決定している。重心を間違えなければ何とかなるだろう。
 操縦は昔のプロペラ機のような操縦桿を使う方式にしたので、意外と操作は簡単だ。ちなみに加速装置を使ったターボも付いている。アクセルは床にペダルを付けた。

 殆ど俺の作業だが、見学していたニーナとミルルを呼んだ。

「ちょっと、二人で操縦席に乗ってみてくれないか?」
「はーい」
「了解!」
「重量バランスをとる」

「うん? なんで降りてんだよ」
「いま体重測ろうとしたでしょ」とニーナ。なんでだよ。
「やだ~っ」とミルル。
「いや、だから二人一緒だしいいじゃないか」

「二人が乗り切るまで目をつむっててね」とニーナ。
「なんで、そんなに気にするんだよ」
「気にするわよ」
「気にするよ~っ」

 乙女ごころは大事だよな。すみません。

「いいわよ」
「おっけ~っ」いや、その言い方は……あ、俺を真似したのか。おっけ~。

  *  *  *

 機体の次に出来たのがミルルの浮遊装置だ。

 構造は単純だが、ほとんどが浮遊魔法に変換する部品の集合体になった。
 部品自体は以前からあるものなので整然と並べるだけだ。ただ、こんなに大量に作ったのは初めてらしく、ちょっと飽きたらしい。

「リュウジ~っ、これなんかつまんな~いっ」とミルルの泣きが入った。

 俺はミルルと作業を分担して、いわゆる流れ作業を導入してみた。これだと見やすからな。ただ、単純作業の繰り返しになるのがミルル的に面白くないようだ。
 このままだと質が落ちる可能性もあるし、ちょっと暇つぶしでもしておくか。


「じゃ、浮遊装置の気持ちを理解してみよう」

「浮遊装置の気持ち~?」
「そう、ちょっと空を飛んでみないか?」
「みるみるみるる」

「お前が、ギャグ言うようになったか」頼もしい。

「じゃ、俺におんぶして」
「おんぶ?」って、知らないのか?
「あ、前でもいいか。一応安全の為に腰に紐を結んでおくな」
「あ、うん」

 そして、俺達は工房の庭から青く晴れ上がった空へ飛び上がった。
 もちろん、紐で吊り上げているわけではない。ミルルの体全体を神力で浮かせているので普通に飛ぶのと同じになる。
 つまり浮遊装置の気持ちになれるわけだ。

「すっご~いっ、リュウジ~。飛ぶってこんな気持ちだったんだ~っ」
「どうだ、気持ちい~だろ~っ」
「うん、でもちょっと怖いから抱えてて~」

「そっか、こうしてれば大丈夫か?」

 俺はミルルを後ろから抱きしめる形になった。

「うん、だいじょ~ぶ~。気持ちい~っ」

 浮遊装置の組み立てが終わった時には、その機能美に惹かれていたようだけど出来上がるまでは分からない。だから、たまにはこんな息抜きも必要だよな。工房で作業しっぱなしは良くない。
 そんな訳で、俺達はしばらく空の散歩を楽しんだのだった。

  *  *  *

 ニーナの口噛み……もといエナジーモジュールもなんとか出来た。

 魔法共生菌は口から取り出すことが出来た。
 これで魔法共生菌が魔力の源だと証明できたわけだ。

 構造は魔法共生菌の培養液を入れた球体と、そこに魔力を取り出すための網の目状の魔動回路を張り巡らせたものになった。この魔力の取り出し方は魔石とあまり変わらない。
 魔動回路が魔力を引き出すと少し発光するので、内臓を連想してちょっとグロい。

 ただ、出来ることは出来たがパワーが足りなかった。
 単純に魔法共生菌とエサとなる酵母菌、さらに酵母菌のエサとなる栄養素の3つの要素が複雑に絡み合っているようだ。
 だからと言って容器を大きくしても重すぎて飛べなくなる。ギリギリのサイズでなんとかしたい。

 だが、この出力不足の問題はエナジーモジュールの構造を二重にして酵母菌領域と魔法共生菌領域に分離することであっさり解決した。どうも、このほうが効率よくアルコールを作れるかららしい。
 アルコール度数が上がると、何故が効率も上がった。理由は不明だ。あたかも神力を食ってる時のようにパワーが出た。アルコールが神力の代わりになったのか?

 ちなにみ、ここでミルルが魔法覚醒した。
 ニーナと違って、あっさり覚醒してしまった。何故簡単に覚醒してしまったのかは、謎だ。

「うぃ~っ、リュウジぃ~っ、なんかいい気持ち~っ」
「うっ、酒臭っ。お前、酒飲んだろ? どっから持ってきた?」
「へ? ちと発酵層の調子を調べてたら、いい香りがしてきて、ちょっと味見を」

 謎は簡単に解決しました。
 子供がニーナの口噛み酒飲んでんじゃね~っ!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

そんなにホイホイ転生させんじゃねえ!転生者達のチートスキルを奪う旅〜好き勝手する転生者に四苦八苦する私〜

Open
ファンタジー
就活浪人生に片足を突っ込みかけている大学生、本田望結のもとに怪しげなスカウトメールが届く。やけになっていた望結は指定された教会に行ってみると・・・ 神様の世界でも異世界転生が流行っていて沢山問題が発生しているから解決するために異世界に行って転生者の体の一部を回収してこい?しかも給料も発生する? 月給30万円、昇給あり。衣食住、必要経費は全負担、残業代は別途支給。etc...etc... 新卒の私にとって魅力的な待遇に即決したけど・・・ とにかくやりたい放題の転生者。 何度も聞いた「俺なんかやっちゃいました?」       「俺は静かに暮らしたいのに・・・」       「まさか・・・手加減でもしているのか・・・?」       「これぐらい出来て普通じゃないのか・・・」 そんな転生者を担ぎ上げる異世界の住民達。 そして転生者に秒で惚れていく異世界の女性達によって形成されるハーレムの数々。 もういい加減にしてくれ!!! 小説家になろうでも掲載しております

処理中です...