異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

文字の大きさ
上 下
13 / 189
黎明編

13 ミルルの魔道具作り

しおりを挟む
 マドラーばあちゃんの魔道具店に行ってから、魔道具についていろいろ考えるようになって時々通っている。
 飛行艇の設計もやっているのだが、今日はその事ではなくて孫娘のミルルの魔道具を見て思い付いた生活必需品を作って貰おうと思ってやって来た。

「ちわ~」
「あ、リュウジさんこんにちは」

 元気よく、ミルルが迎えてくれた。もう、常連客のようだ。

「おや、いい所に来たね」

 珍しくマドラーばあちゃんも店頭にいた。

「えっ? なんですか?」

「いやね。この間あんたが言ってた温風扇。あれ作ってみたら大人気なんだよ」

 勢い込んでマドラーばあちゃんが言う。どうしたんだ?

「温風扇? ああ、ドライヤーですね~っ。出来たんですか! それ俺も欲しいなぁ」
「ああ、いくらでも持ってきな。あれから、この店の一年分くらい売上げて驚いたよ」

 マドラーばあちゃんは、そう言うと奥から革袋を持ってきた。

「これはあんたの取り分だ。取っときな」

 渡された革袋は重かった。

「俺の取り分なんていいですよ」
「何言ってんだい、取ってくれないと次頼めないじゃないか。ちゃんと確認しとくれ?」

「なるほど。分かりました。有り難くいただきます」

 革袋を覗くと、結構な金額があるようだ。

「多過ぎませんか?」
「ちゃんとミルルが計算したから大丈夫。それだけ、売れたってこった」

「凄いな。ついでに、俺の思い付いた小さい魔道具も作ってくれると嬉しい」

 調子に乗って思い付いた生活必需品の話をする俺。

「おや、また面白そうなもの思い付いたのかい?」
「ええ。この間見せてもらったミルルの魔道具で思い付いたんだけど」
「おや、そうかい。じゃ、奥で聞こうじゃないか。ミルル、店閉めるよ」

「いや、閉めなくっても」さすがに、それは悪い。
「もう、今日の分はほとんど売っちまったし、かまやしないよ」

 マドラーばあちゃんは、俺が戸惑ってる間にさっさと店を閉めてしまった。

  *  *  *

 工房に入ると、ミルルが温風扇を作っている最中らしく中央のテーブルに部品が並べられていた。

「大繁盛ですね」
「ああ、こんなことは初めてだよ。あんたのお陰さ」

「いや、売れるもの作ったミルルのお手柄ですよ」
「そりゃ、もちろんミルルの仕事さ。でも、そういう物が欲しいと言ったのはあんただからね」

 マドラーばあちゃんはテーブルの端を片付けてから、椅子を薦めてくれた。

「まぁ、あれは用途が分かれば作れるから」

「温風扇に強弱ボタンが欲しいとか、冷風だけ欲しいとか、使ってみるまでは考え付かないことを初めから出来たのが人気の秘密だよ」とマドラーばあちゃん。さすがに鋭いな。

「まぁ、そうですね」
「リュウジさん、お茶をどうぞ~」ミルルがお茶を用意してくれた。
「おお、すまん。うん、旨い。」
「ミルルのお茶は最高さね。」マドラーばあちゃん、相変わらずだ。

「で、今日はどんな魔道具を思い付いたんだい?」

 マドラーばあちゃんもお茶を一口飲んで言った。

「ああ、ミルルの魔動フォークと魔動ナイフを見て思い付いた物なんです」
「あぁ、あれはあんまり売れなかったんだ~」ミルルは残念そうに言った。

「うん、それを別の用途に使おうと思って。魔動ナイフだけど、髭剃りに使えるんじゃないかな」
「あれをヒゲを剃るのに使うの? ちょっと危ないかも?」とミルル。
「うん、そのままだと危ない。だからナイフの刃の部分は潰してギザギザの間に入ったヒゲだけを魔法でカットしてほしいんだ。肌をなぞっただけなら傷つけないような奴」

「金属の刃の部分は使わないの?」とミルル。
「うん、ミルルの魔動ナイフって、ギザギザの間に食い込んだものは魔法で切ってるだろ?」
「うん、そうだね」
「ギザギザを髭だけが入る隙間にして、魔法で髭を剃りたいんだ。そうすればいつまでもよく切れる魔動髭剃りの出来上がりってわけだ」
「あ~、なるほど~」ミルル、ちゃんと理解してくれたようだ。

「あんた、よくそんなこと思い付くね」

 横で聞いていたマドラーばあちゃんが感心したように言った。いや、バリカンとか似たものいろいろあったし。正直ミルルの発想が凄いと思う。

「あれは、魔法で切ってるミルルのアイデアが凄いと思いますよ」
「そうかね。まぁ、あたしもミルルは大したものだと思ったけど、あんたも分かるかい」
「ええ、特に真鍮など弱い金属を使って硬い髪をカットするにはあの方法が最高でしょう」
「そうかい、そうかい」

 マドラーおばあちゃんご満悦の様子。

「こまかい調整とか必要だろうけど」

 髭剃りは、使い勝手を良くするのが難しいからな。

「分かった。今の話だけでも作れると思う。やってみるね~」とミルル。有り難い。
「うん、頼む。あ、実際に試すときは危ないから動物の毛皮とかで試したほうがいい」
「そだね~っ。あ、悩んだら相談しに行っていい?」

 もう、頭の中では作り始めてるようだ。

「うん、もちろんいいよ」

「たぶん、髭剃る人の意見は聞かないと分からないからね」

 流石に、ミルルには想像できないからな。

「髭も、本物を見ないと分からないかもね?」
「ああ、それそれ。硬さとかね~。ちょっと触らせて貰うかも~」

 触ってどうするんだろ? 感触か? まぁ、髭の硬さは人それぞれだからな。実際作っても、何度も試行錯誤は必要だろう。

「おお、いいよ。じゃ、また後で」
「うん、後でまた~」

 それから俺は新製品のドライヤーを貰ってほくほくの体で帰ったのだった。これで、また一つ便利になった。

  *  *  *

「ミルル、あいつとは仲良くしときな」見送ったマドラーばあちゃんは言った。
「うん、わかった~っ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...