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33 夢の転移2
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俺と上条絹による『共感転移』成功で研究室は沸いたが、神海麗華と夢野妖子では成功しなかった。
「残念~っ!」と麗華。
「私もダメかぁ」と妖子。
「やっぱり私たちはこの能力と相性悪いのかなぁ?」
麗華が悔しそうに言った。
いや、そんな訳ないだろう。多重世界で唯一の存在なので共感遷移出来ないのはわかるが、共感転移も出来ないのはおかしい。
「こうなったら、私たち二人で共感して転移してみましょう!」と妖子。
「そうね、やってみましょう!」
そう言って麗華は妖子の手を取った。
「共感トリガー」
「転移トリガー!」
麗華が叫ぶように起動したが、転移しなかった。
「共感の必要はないだろう?」
「そうだけど」と麗華。
「そうでしょうか?」と妖子。
「でも、最初に転移したときは龍一も絹さんと共感してたじゃない?」と麗華。
「ああ、そうだな。あっ? もしかすると」
「もしかすると?」と麗華。
俺は、ちょっと思いついた。
「これからデートしないか?」
「なに言ってんの?」
ちょっと責めるような視線の麗華。まぁ、空気読めっていう顔だ。
「いや、実験だよ実験」
「デートってどこへ?」と麗華。
「もちろん『白い世界』だよ」
俺は絹と最初に転移した時のことを思い出したのだ。
「あ、それ行ってみたかったの!」と麗華。
「じゃ、行くか」といって、俺は麗華の手を取った。
「うん!」
「共感トリガー」俺は麗華を共感状態にした。
「転移トリガー!」続けて転移コマンドを実行した。
俺達はそのまま絹と妖子の目の前から消えた。
もちろん二人も驚いたが、周りで観察していた研究所スタッフはもっと大騒ぎである。
* * *
「ここは!」
麗華は周囲を見回しながら言った。
「よし。うまく行ったな」予定通り!
周りには真っ白い世界が広がっていた。
目的地の『白い世界』をイメージするだけで飛べた。
そして、共感していれば誰かと一緒にこの『白い世界』へ転移できることも分かった。
絹とこの『白い世界』に来たあとは俺も自分で転移できるようになった。ということは、これで麗華も転移できるようになったのかも知れない。
「たぶん、これで転移出来るようになったと思う」
「えっ? ホント? ホントに!」
麗華は何故か感激していた。
「そんなに転移してみたかったのか?」
「えっ? もちろんそうよ」
麗華はそう言った後、俺にしがみ付いて来た。
「これで、あなたがどこへ行っても探しに行けるのね!」麗華は耳元で小さく言った。
「なんだ、そんな事考えてたのか」
「だって。好きな人が目の前で消えるのよ!」
俺はちょっと予想以上の反応で戸惑った。
確かに俺は消える立場だったからな。気づかなかった。
「あ、ごめんなさい。なんか、二人だけだったし取り乱しちゃった」
俺は、ソファを出せることを思い出して麗華に座らせることにした。
「凄い機能ね」
麗華は一瞬びっくりして後ずさったが思い返して言った。
「座っても安全だよ」
そう言って俺は座って見せた。
遅れて麗華も隣に座った。いつものように。
「ごめんなさい。わたし、思った以上に世界で唯一の存在ってことを気にしてたみたい」麗華は言った。
「追いかけられないって?」
「うん、そうね。もともと私達一族の宿命だけど、いつ世界から消されるか分からないって、びくびくしてるでしょ? あまり、気にしないようにはしてるんだけどね」
「うん」
「だから、誰かを好きになるとしたら、私達一族の中からだと決めてたの。だって、いつ別れることになるか分からないでしょ?」
なるほど。麗華から見たらそうだな。
「でも、私は一族じゃないあなたを選んじゃった」
「そうだな」
「だから、絶対バディにならなくちゃって思ったの。強引な誘い方して、ごめんなさい」
ああ、それで詳しい説明しないうちに共感して未来に送ったのか。
「もういいよ。俺もお前を選んだんだし」
「ありがとう。ホントにあなたで良かった」
麗華はそう言うが、そんな麗華のことをわかってなかったのは俺のほうだな。
「俺も、お前で良かったよ」
「ほんとに?」
「ああ」
「よかった!」
「なぁ、神海一族が故郷に帰ったら普通の人間に戻れるよな?」
「ああ、そうね。たぶん、そうかも」
「じゃ、なんとかして見つけないとな!」
「うん!」
俺は麗華を普通の人間にしてやりたいと思った。
普通の人間として生きるのなんて、当たり前の権利だよな?
* * *
「もぅ! 戻らないと思ったら、これだもん!」
いきなり妖子の声がした。振り向くと、絹と妖子が立っていた。
「あら、お邪魔しちゃった?」
これは絹だ。ちょっと目がキツイ。
どうも、俺達の後を追って転移してきたようだ。
つまり、夢野妖子も転移に成功したってわけだ。これも思った通り!
当然、俺はレディたちにソファとテーブルを勧めて、お茶のセットも用意した。
「気が利くのね」と絹。
「美味しいお茶ですね」と妖子。
勿論だ。妖子の紅茶だからな。
「一番のお気に入りの紅茶だよ」
「はい!」
みんなで『妖子の淹れた紅茶』を飲んだ。
もちろん、実際に淹れたのはこの『白い世界』のハズだが。
「和みますね」と妖子。
待っている人たちがいるけどな。
「残念~っ!」と麗華。
「私もダメかぁ」と妖子。
「やっぱり私たちはこの能力と相性悪いのかなぁ?」
麗華が悔しそうに言った。
いや、そんな訳ないだろう。多重世界で唯一の存在なので共感遷移出来ないのはわかるが、共感転移も出来ないのはおかしい。
「こうなったら、私たち二人で共感して転移してみましょう!」と妖子。
「そうね、やってみましょう!」
そう言って麗華は妖子の手を取った。
「共感トリガー」
「転移トリガー!」
麗華が叫ぶように起動したが、転移しなかった。
「共感の必要はないだろう?」
「そうだけど」と麗華。
「そうでしょうか?」と妖子。
「でも、最初に転移したときは龍一も絹さんと共感してたじゃない?」と麗華。
「ああ、そうだな。あっ? もしかすると」
「もしかすると?」と麗華。
俺は、ちょっと思いついた。
「これからデートしないか?」
「なに言ってんの?」
ちょっと責めるような視線の麗華。まぁ、空気読めっていう顔だ。
「いや、実験だよ実験」
「デートってどこへ?」と麗華。
「もちろん『白い世界』だよ」
俺は絹と最初に転移した時のことを思い出したのだ。
「あ、それ行ってみたかったの!」と麗華。
「じゃ、行くか」といって、俺は麗華の手を取った。
「うん!」
「共感トリガー」俺は麗華を共感状態にした。
「転移トリガー!」続けて転移コマンドを実行した。
俺達はそのまま絹と妖子の目の前から消えた。
もちろん二人も驚いたが、周りで観察していた研究所スタッフはもっと大騒ぎである。
* * *
「ここは!」
麗華は周囲を見回しながら言った。
「よし。うまく行ったな」予定通り!
周りには真っ白い世界が広がっていた。
目的地の『白い世界』をイメージするだけで飛べた。
そして、共感していれば誰かと一緒にこの『白い世界』へ転移できることも分かった。
絹とこの『白い世界』に来たあとは俺も自分で転移できるようになった。ということは、これで麗華も転移できるようになったのかも知れない。
「たぶん、これで転移出来るようになったと思う」
「えっ? ホント? ホントに!」
麗華は何故か感激していた。
「そんなに転移してみたかったのか?」
「えっ? もちろんそうよ」
麗華はそう言った後、俺にしがみ付いて来た。
「これで、あなたがどこへ行っても探しに行けるのね!」麗華は耳元で小さく言った。
「なんだ、そんな事考えてたのか」
「だって。好きな人が目の前で消えるのよ!」
俺はちょっと予想以上の反応で戸惑った。
確かに俺は消える立場だったからな。気づかなかった。
「あ、ごめんなさい。なんか、二人だけだったし取り乱しちゃった」
俺は、ソファを出せることを思い出して麗華に座らせることにした。
「凄い機能ね」
麗華は一瞬びっくりして後ずさったが思い返して言った。
「座っても安全だよ」
そう言って俺は座って見せた。
遅れて麗華も隣に座った。いつものように。
「ごめんなさい。わたし、思った以上に世界で唯一の存在ってことを気にしてたみたい」麗華は言った。
「追いかけられないって?」
「うん、そうね。もともと私達一族の宿命だけど、いつ世界から消されるか分からないって、びくびくしてるでしょ? あまり、気にしないようにはしてるんだけどね」
「うん」
「だから、誰かを好きになるとしたら、私達一族の中からだと決めてたの。だって、いつ別れることになるか分からないでしょ?」
なるほど。麗華から見たらそうだな。
「でも、私は一族じゃないあなたを選んじゃった」
「そうだな」
「だから、絶対バディにならなくちゃって思ったの。強引な誘い方して、ごめんなさい」
ああ、それで詳しい説明しないうちに共感して未来に送ったのか。
「もういいよ。俺もお前を選んだんだし」
「ありがとう。ホントにあなたで良かった」
麗華はそう言うが、そんな麗華のことをわかってなかったのは俺のほうだな。
「俺も、お前で良かったよ」
「ほんとに?」
「ああ」
「よかった!」
「なぁ、神海一族が故郷に帰ったら普通の人間に戻れるよな?」
「ああ、そうね。たぶん、そうかも」
「じゃ、なんとかして見つけないとな!」
「うん!」
俺は麗華を普通の人間にしてやりたいと思った。
普通の人間として生きるのなんて、当たり前の権利だよな?
* * *
「もぅ! 戻らないと思ったら、これだもん!」
いきなり妖子の声がした。振り向くと、絹と妖子が立っていた。
「あら、お邪魔しちゃった?」
これは絹だ。ちょっと目がキツイ。
どうも、俺達の後を追って転移してきたようだ。
つまり、夢野妖子も転移に成功したってわけだ。これも思った通り!
当然、俺はレディたちにソファとテーブルを勧めて、お茶のセットも用意した。
「気が利くのね」と絹。
「美味しいお茶ですね」と妖子。
勿論だ。妖子の紅茶だからな。
「一番のお気に入りの紅茶だよ」
「はい!」
みんなで『妖子の淹れた紅茶』を飲んだ。
もちろん、実際に淹れたのはこの『白い世界』のハズだが。
「和みますね」と妖子。
待っている人たちがいるけどな。
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